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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第22回

すき家のスト騒動、果たして「失敗」だったのか?露呈した外食業界の3つの限界

文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト
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 すき家は牛丼業界の値下げ戦争を常にリードしてきて、消費者にとってはありがたい存在である。しかし、「値下げ」や「24時間営業」のしわ寄せを受けるのは従業員だ。多忙な時間帯でも「ワンオペ」と呼ばれる一人勤務をこなし、責任感をもって頑張ってくれる従業員に甘えてしまっているとすれば、経営者の罪は重い。

 今回のスト騒ぎは、結果的に大規模なものにはならなかったが、外食企業の経営者はまだ安心できない。「ストは労働組合にさえ入れば、自分でもできるのか」「けっこう話題になるものだな」「いつも苦しい思いをさせられているから、一丁やってやろう」といった考えを抱いた従業員は、すき家勤務者以外にも多いはずだ。

 これから労働力人口が減っていくことは確実である。契約社員やアルバイトでも「いい人材」の獲得競争になることは間違いない。そうなった時に生き残れるのは、「従業員から選ばれ、応援される会社」だけであろう。そのためには普段から、従業員を思いやり、報いる姿勢を貫くことが重要であるはずだ。

●限界2 労働組合の限界

 ストライキとは、労働組合の団体行動権として、憲法28条で保障された労働者の基本的な権利のひとつだ。「経営陣に労組の要求をのませるため、仕事を止める」わけだが、ストを実行するには組合員の意思確認が必要なのである。すき家の場合は「自社の労組に加入して、事業所(店舗)の過半数の賛同を得られたら」ストが可能になる。

 しかし今回のストは、すき家の労働組合「ゼンショーユニオンFPT」によるものではない。従業員が個人で加入している「ちば合同労働組合」によるものだ。むしろゼンショーユニオン側は、ネット上で拡散されたストの告知に対して「組合を介さずストを実行すれば威力業務妨害となる可能性もあります」「どうか、考え直してください」「組合に入る、入らないはともかく、29日の違法ストライキだけはやめましょう」などと警告を発していたのだ。いったい、どちらがすき家の労組なのか、よくわからない展開である。結果的には、ゼンショーユニオンが警告を出した後に、ちば合同労組がすき家に対して正式に団体交渉を申し込んだので、29日のストは違法ではなくなった。

 果たして、このゼンショーユニオンが御用組合なのかどうかはわからないが、少なくとも外野からでもわかるのは、「労働組合がその役割を果たし、まともに仕事をしていれば、ストライキを起こしてまで世の中を騒がせることにはならなかったのではないか?」ということだ。存在意義はどこにあるのだろう。

●限界3 外食市場の限界

 外食業界の市場は縮小しているにもかかわらず、スタッフの数と、一部業態の店舗数は以前よりも増えている。市場規模のピークは1997年の約29兆円、店舗数は91年の85万店がピークで、その後10年でそれぞれ20%近く減少している。しかしその間も、居酒屋業態の店舗数は10%増加、労働者数は386万人から440万人へと14%増加している。小さい市場規模の業界に多くの社員がひしめいているわけだ。

 しかし今後は、労働人口の自然減に加え、「外食業界はブラック」というイメージなどから、外食業界全般が人手不足になっていくことは目に見えている。必然的に、アルバイトの時給相場は上昇していき、めぐりめぐって消費者が支払う価格に転嫁されることになるだろう。「安い」「旨い」「早い」牛丼は姿を消していくかもしれない。

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

労働環境改善による企業価値向上支援、ビジネスと労務関連のこじれたトラブル解決支援、炎上予防とレピュテーション改善支援を手がける。労働問題・パワハラ・クビ・炎上トラブル解決の専門家。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。著書25冊。

Twitter:@nittaryo

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