そんな残業代ゼロ・ルールを「まるでビジネス界のゆとり教育」と批判するのが、国内大手生命保険会社に20年間勤務後、世界50カ国でビジネスを展開するスイス系金融コングロマリットUBSグループの運用部門、UBSグローバル・アセット・マネジメント日本法人代表を務めた経験を持つ岡村進氏だ。
今回は、2月に『外資の社長になって初めて知った「会社に頼らない」仕事力』(明日香出版社)を上梓した岡村氏に、
「残業代ゼロ・ルールに感じる危惧」
「グローバル市場で熾烈な競争を繰り広げる外資の裏の顔」
「世界唯一の尺度であるお金を悪とみる日本の不思議さ」
「世界で通用する“お付き合い”、人脈形成の極意」
などについて聞いた。
●かたちだけの残業代ゼロ・ルール
――安倍政権の成長戦略に残業代ゼロ・ルールが盛り込まれることが決まりましたが、これについて岡村さんはどう思われますか?岡村進氏(以下、岡村) 成果主義の考え方に基づくホワイトカラー・エグゼンプションを“かたちから”導入しようという動きには危惧を覚えます。グローバルビジネスの競争に勝ち抜き、企業利益を上げ、そこで働く個人も潤うために、労使双方に必要なのは、効率的かつ効果的に働こうという意識です。つまり時間を無駄にしない、と。そんな働き方への意識改革が労使ともに必要です。
その意識変革が起きるまでは、残業代をきちんと払った上で残業時間を拡大していくことに固執するべきではないかと思います。裏を返せば、残業代をきちんと払ってでも儲かることならばチャレンジしよう、ということです。
ホワイトカラー・エグゼンプションは「実績を出して早く帰ろう」という社員と、「評価は実績でしかしない。労働時間の長さは、それだけでは一切ポジティブに評価する対象にはしない」というマネジメントの意識があればこそ成り立つもの。それが成り立つ以前にかたちから議論しているのでは、まるで本末転倒です。