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急拡大するオフィス内無人販売、“非常識な”ビジネスモデルとは?お客が労働力に

文=松井克明/CFP

「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/7月12日号)は『ビジネスモデルのつくり方 イノベーションを起こす方法論』という特集を組んでいる。

「ビジネスモデルとは、『どのように価値を創造し、顧客に届けるかを、論理的かつ構造的に記述したもの』といえる。そして、良質なビジネスモデルはそれ自体がイノベーションとなり、組織自体を変え、ライバルに対し持続的競争優位を実現する。そんなビジネスモデルのつくり方を考えていこう」という内容だ。

 今回、特に必読なのは特集記事『ネスカフェVSオフィスグリコ 無人販売モデルの意外な違い』だ。

 ネスレ日本は通常9800円する同社のコーヒーマシンを無料で設置(無償貸与)し、1杯20円程度の格安でコーヒーを提供するサービス「ネスカフェアンバサダー」を展開している。インスタントコーヒーのネスカフェながらも、技術革新で見た目も香りも本格的だ。

「コーヒーパックの調達や代金回収などは、マシンの設置先の社員などに『アンバサダー(大使)』という“世話役”を買って出てもらうのが特徴。アンバサダーは自身のクレジットカードで材料となるネスカフェを購入。1杯20円程度で提供し、回収した代金で精算する仕組みだ。報酬なしのボランティアにもかかわらず、2012年11月のサービス開始以来、すでにアンバサダーは10万人を超え」「ネスレ日本は、20年までにアンバサダーを100万人にする目標を掲げている」「100万というのはコカ・コーラの自販機数に匹敵する数だ」(同記事より)

●富山の薬売りとヤクルトレディを現代風にアレンジ

 一方で、江崎グリコは1999年以来、菓子の入った「リフレッシュボックス」と呼ぶ箱を設置し、1つ100円で無人販売する「オフィスグリコ」を展開している。

 オフィスに箱を設置してもらい、消費したお菓子分の入金をしてもらう。入金は職場のモラルを信じ、減った分だけ補充するという手法をとったのだ。

「現在、首都圏、近畿地区、愛知県、福岡県の4エリアで11万6000台ものボックスが置かれている。補充や代金回収をするサービススタッフは約700人。1人が1日に30台程度を担当し、1週間(5日間)で150台を管理するという計算だ」「補充の際のルールも徹底。3回の訪問で全ての商品が入れ替わるという独自の管理システムが構築されている」「自社のラインナップで賄いきれない菓子は、他社から仕入れて販売している。むしろ最近は、他社からの売り込みも多いという。また、通常のボックス以外に冷蔵庫や冷凍庫を置き、飲料やアイスの販売も始めている」(同記事より)

 商品の不足分を担当者が巡回・補充するという仕組みは“富山の薬売り”、オフィス内に販売して回るという仕組みは“ヤクルトレディ”のビジネスモデルだ。それをオフィスの空きスペースの有効活用、従業員のリフレッシュという意味合いで、現代風にアレンジしたビジネスモデルというわけだ。

 ネスカフェアンバサダーとオフィスグリコに共通する特徴としては、従来から家庭以外で、特にオフィスで消費されてきた飲食物を扱っている点だ。そのスキマ領域に企業のビジネスが参入したのだ。セキュリティの関係で飛び込み営業することが困難になったオフィスビルなどにも容易に入っていける効果もある。

松井克明/CFP

松井克明/CFP

青森明の星短期大学 子ども福祉未来学科コミュニティ福祉専攻 准教授、行政書士・1級FP技能士/CFP

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