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景気回復のカギ「夏休み消費」、旅行動向から占う 消費支出は過去最悪、旅行者数は最高…

文=鈴木領一/ビジネス・プロデューサー
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旅行動向

 ここで注目するべきもう一つの指標をみてみよう。それは「旅行動向」である。国内旅行はGDPの変化を先取りするといわれ、国内旅行はGDPに先行して伸び、落ちる時もGDPに先行して落ちる。すなわち、GDPが伸びるかどうかは国内旅行の動向を見れば予測できるのだ。特にこの7~8月は、最も重要な月となる。

 日本国内の旅行者は年間およそ2億人で、その3分の1以上が7月15日から8月31日のいわゆる「夏休み」に旅行をするからだ。

 インターネット調査会社マクロミル社が定点観測している「MACROMILL WEEKLY INDEX」のデータから、「買う予定のもの」>「国内旅行」をみてみよう。7月第一週の数値を前年と比較すると、前年の8.1ポイントから今年は5.6ポイントに大きく落ち込んでいる。これも消費増税による影響と読めるだろう。この落ち込みには、もう一つの理由があると考えられる。「冷夏」の影響だ。

 気象庁はこれまでエルニーニョ現象で今夏は「冷夏」になると予測してきた。しかし、6月25日に、今夏の平均気温は「平年並み」になると予報を見直したのだ。エルニーニョ現象の影響が、フィリピン付近で積乱雲が活発に発生することで相殺されるためだという。

 前述の「景気ウォッチャー調査」でも、景気先行きを悲観的にとらえた理由の多くが「冷夏」の影響だった。夏に気温が1度上昇すると、5000億円消費が増えるといわれるが、「冷夏」から「平年並み」に予報が変化したため、今後の景気予測は幾分楽観的になる可能性がある。マクロミルのデータも今夏の予測が変わったことで、今後、数値の変化が起こることが予測される。冷夏の予測では旅行者が減るからである。

 さて「旅行動向」に戻るが、大手旅行代理店のJTBが7月3日に発表した「2014年夏休みの旅行動向」によれば、14年の夏休みは、旅行者数が前年から15万人増加の7902万人になるという。このうち国内旅行人数7639万人、海外旅行人数263万人となる見込みで、総旅行人数は過去最高、総旅行消費額は3兆5027億円で、過去最高の13年を更新する見込みだ。

 旅行先には大阪が注目されている。あべのハルカスや、7月15日にオープンするユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が話題だからだ。
 
 旅行者が増えた理由は、ベースアップや夏のボーナス増にあるようだが、JTBの予測通り旅行人数が過去最高を記録すれば、今年後半から来年春にかけての景気回復も現実的になるだろう。

 13年4月に実施された日本銀行による異次元の金融緩和は、効果が現れるまで2年かかるといわれたが、その効果が徐々に出始めているのかもしれない。しかし、前述のとおり消費税増税によるマイナスの影響も、これから本格的に出てくる可能性がある。

 日本経済にとって、7月から始まる「夏休み消費」が、今後を占う試金石となるだろう。
(文=鈴木領一/ビジネス・プロデューサー)

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