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京セラ、不思議な会社の深層競争力は「アメーバ経営」を支える倫理と論理の両輪

文=長田貴仁/神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー、岡山商科大学経営学部教授
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京セラ、不思議な会社の深層競争力は「アメーバ経営」を支える倫理と論理の両輪の画像1京セラ本社(「Wikipedia」より/Koh-etsu)
「2つの会社はすでに存在価値を失った。われわれは独立したかたちの会社として、新しい存在価値を見いだそうではないか。そのためにも利益を上げなくてはならない」

 こう話すのは、富士通とパナソニックの半導体(システムLSI)事業を統合し10月~12月に発足する新会社の社長に就任する元京セラ社長の西口泰夫氏。生産をせず、企画、研究開発に専念するファブレス会社として生まれ変わる同社には、富士通が500億円、パナソニックが100億円、そして日本政策投資銀行(DBJ)が200億円をそれぞれ出資する予定。数年後の新規株式公開を目指す。売上高は単純合算で年間約1500億円規模になる。

 西口氏は、1972年に大阪教育大学大学院修士課程を修了。75年京セラに入社した。取締役電子部品事業本部長、常務取締役情報通信本部長、代表取締役専務、代表取締役副社長などを歴任し、99年に代表取締役社長に就任。その後、代表取締役会長兼CEO、取締役相談役に。経営者だけにとどまらず、アカデミズムの世界にも挑戦する。2009年9月、同志社大学大学院総合政策科学研究科総合政策科学専攻技術・革新的経営研究コース博士課程(後期課程)を修了し、博士(技術経営)を取得した。同志社大学ビジネススクール客員教授を務め、現在は同志社大学技術・企業国際競争力研究センター(ITEC)シニアフェロー。さらに、株式会社HANDY代表取締役社長、独立行政法人科学技術振興機構特任フェロー、京都府産業支援センター「経営戦略会議」アドバイザー、株式会社SOLE代表取締役、京都産業21・京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクト ディレクター、一般社団法人日本電子デバイス産業協会理事・副会長のほかに、複数社の社外取締役や顧問など多数の肩書を持つ。

 京セラの入社試験で西口氏の面接官だったのは、創業者の稲盛和夫氏。いわば「稲盛チルドレン」の一人である。30数年間、主に新規事業を立ち上げることに注力してきた。まさに、筆者がいうところの「創職系」企業家である。

 以上の経歴から判断する限り、西口氏は極めて理を重んじる経営者に見える。一方、稲盛氏の発言や著書からは、仏教哲学的な倫理観が垣間見られる。特に近年、稲盛氏の経営哲学は誰でもわかる表現で叙述的に表されることが多い。それに基づき、「稲盛イズム」が語られているきらいがある。

 その結果、いくつかの上滑りな見方も独り歩きし、賛否両論が巻き起こる。『生き方』『京セラフィロソフィ』(ともにサンマーク出版)など近著だけでなく、これまで数々の著書が相次いでベストセラーになってきた実績を見ても、日本にとどまらずアジアを中心とする海外にも稲盛ファンが多いことがわかる。一方では、当サイトでも指摘されているようにブラック企業論まで飛び出す不思議な会社である。しかし、表から見ていてはわからない不思議さが京セラの競争力であるという見方もできる。つまり、表層の競争力だけでなく、それを組織にまで落とし込んだ深層の競争力があるとも考えられる。自戒を込めていうと、ジャーナリスト、アナリスト、研究者など、京セラの経営に携わったことがない外部者、少なくとも参与観察していない者が安直に論じられる会社ではない。

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