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ニコンの憂鬱 カメラ市場縮小深刻化で、医療事業参入に巨額投資、市場から厳しい評価

文=福井晋/フリーライター

ニコンの憂鬱 カメラ市場縮小深刻化で、医療事業参入に巨額投資、市場から厳しい評価の画像1「Nikon デジタルカメラ COOLPIX P330」(ニコン)
 ニコンは6月17日、2017年3月期に売上高1兆2000億円(14年3月期実績9805億円)、営業利益1100億円(同629億円)などの数値目標を掲げた新中期経営計画を発表した。主力のカメラ事業の売り上げと営業利益をほぼ現状維持で確保する一方、新規事業の育成や産業機器事業の強化で成長を図るというのが骨子。特に新規事業については、新規参入の医療事業を中心に新中計期間中の3年間に約2000億円を投資し、M&A(合併・買収)を軸に医療事業をゼロベースから立ち上げ、17年3月期に売上高1300億円、営業利益40億円を目指すという大胆な計画。都内で開催した新中計説明会で、牛田一雄社長(説明会時は副社長)は「近い将来、医療事業は売上高2000億円規模に育てたい」と自信を示した。

 医療事業に新規参入する理由として、牛田社長は「医療市場にはまだまだソリューション提供が不十分な分野が多い。そうした分野に当社が得意とする精密・光学技術を活用した当社ならではのオンリーワンソリューションを提供したい。他社の物まねはしない」と強調。その一例として、同社が半導体露光装置で培った微細化技術を遺伝子や蛋白質を解析するバイオチップ(バイオマイクロアレイ)の製造に応用、iPS細胞などの再生医療に活用する考えを示した。

●市場から冷水を浴びせられた新中計

 この意欲的な新中計に株式市場が沸き立つと思いきや、翌日の市場は取引開始と同時にニコン株の売りが殺到、一時は前日比67円安の1592円まで売られた。その後も下げ傾向は止まらず、結局3営業日で4%も株価が下落するなど、市場は冷ややかな反応を見せた。

 証券アナリストは「具体的な数値目標を示したものの、カメラ事業など既存事業の課題解決の具体策を示さなかったことと、同社の実力が未知数の医療事業への不安が、ニコン人気を呼ばなかった」と分析する。

 ニコンが新中計の目玉に掲げた医療事業への新規参入には、どんな問題が隠れているのだろうか。

 カメラ映像機器工業会が今年2月に発表した「2014年カメラ等品目別出荷見通し」によると、13年のデジタルカメラ総出荷台数は前年比36.0%減の6284万台で、14年は同19.6%減の5050万台の見通し。10年の約1億2000万台をピークに年々減少しており、14年はピーク時の42%に縮小する見通しだ。

 デジカメ市場の縮小には、ニコンも苦しめられている。同社14年3月期のコンパクトデジカメの販売台数は前期比35%減の1116万台にとどまった。奮闘していた一眼レフなどレンズ交換式デジカメも同18%減の575万台となり、初のマイナスとなった。

 同社が市場で冷や水を浴びせられた医療事業参入の背景には、こうしたカメラ市場の縮小によるカメラ事業先細りがあるが、それ以上に深刻なのがカメラ関連事業依存度の高さだ。

 約10年前まで売上高に占めるカメラ関連事業の比率は50%台で推移していたが、08年3月期から比率が上昇、13年3月期は74.3%まで占めた。前期(14年3月期)はさすがに69.9%まで比率を下げたが、それでもなお売上高のほぼ70%をカメラ関連事業で稼ぎ出しているかたちだ。

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