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江川紹子の「事件ウオッチ」第13回

参考人失神、実況見分せず、調書を“作文” 【美濃加茂市長収賄疑惑】でまたも当局が暴走

文=江川紹子/ジャーナリスト
参考人失神、実況見分せず、調書を“作文” 【美濃加茂市長収賄疑惑】でまたも当局が暴走の画像1 「現金の受け取りは一切ない」として無罪を主張している藤井市長。警察の取り調べで、「早くしゃべらないと美濃加茂市を焼け野原にするぞ」と自白を強要されたことも明かした。(写真は初公判後に記者会見した藤井市長(中央)と弁護団)

 検察は、現厚生労働省事務次官の村木厚子さんを巻き込んだ郵便不正事件から、いったい何を学んだのだろうか? ――最年少市長として知られた岐阜県美濃加茂市藤井浩人市長が、災害対策用の雨水浄水プラントの導入をめぐって現金合計30万円を受け取ったとして、収賄などの疑いで起訴された事件の裁判が9月17日に始まったが、早くも捜査の問題点が見え始めている。

●“犯行現場”の実況見分を怠った検察

 検察側の主張によれば、藤井市長は市会議員だった頃に、業者からの依頼を受けて市にプラント導入を働きかけ、2回にわたって賄賂を受け取ったという。一方、藤井市長は初公判で、現金の授受について「一切ありません」と無罪を主張。さらに、「市にとって有意義な事業であると考え活動をしていたもので、業者に依頼を受けたから動いたのではありません」と述べ、請託の存在も否定した。

 検察側冒頭陳述によると、現金の授受は1回目がファミリーレストラン「ガスト」美濃加茂店で10万円、2回目が名古屋市内の炉端焼き店で20万円となっている。ところが、犯行現場であるはずの、この両店の店内の状況を明らかにする実況見分を捜査期間に行わないまま、検察は藤井市長を起訴した。

 弁護側は、当然、実況見分調書が作成されているものと考え、公判前整理手続の中で証拠開示を求めた。そこで、実況見分が行われていないことが明らかになった後、裁判所の示唆もあり、ガストについては8月25日、炉端焼き店については初公判直前の9月9日になって、ようやく実況見分が行われた。そのため、炉端焼き店の実況見分調書は、公判前整理手続が終了するまでには証拠請求できなかった。本来、公判前整理手続が終わってから、証拠を後出ししてはいけないことになっている。この場合は、弁護側が同意したこともあって、「やむを得ない事由により公判前整理手続で証拠請求できなかった証拠」として採用された。

 両店は、検察側の主張によれば、まさに犯行現場。そこでの言動について、関係者の供述が信用できるのかを確認するうえでも、現場の客観的な状況を確かめ、記録しておくことは、基本中の基本だろう。こんな基本的な証拠を後出ししなければならないとは、実に恥ずかしい話ではないのか。

 実際、贈賄を認めている業者側の供述と現場の状況がそぐわない点も出ている。

●関係者を失神するまで追及した警察

 いずれの会食の場にも、市長と業者の双方を知る男性Tさんが立ち会っていた。Tさんは、現金の授受は「見ていない」と明言している。検察側の冒陳陳述では、その理由について、業者は市長に現金を渡すところをTさんに見られたくなかったため、ガストにおいては「Tさんがドリンクバーに飲み物を取りに行くために席を外した」隙に、金を渡したためだと説明している。炉端焼き店においても、Tさんが席を外した間に渡した、としている。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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