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ネット企業の実店舗出店、なぜ加速?相乗効果で集客の間口拡大 オイシックスの事例

文=千葉優子/ライター
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ネットで買い物をすることに抵抗がある層は、一定数存在します。ネットではアプローチできないお客様にも間口を広げ、認知度を高めたいという狙いもあります。また、食品の場合は、ネットで買う前のトライアルとして、リアル店舗を利用したい人も多いのです」

 同社は近年、リアル店舗の拡大を進めており、東急グループのスーパーマーケットチェーン、東急ストアの店内でもショップインショップ(=同社専用コーナー)10店舗を展開し、顧客との接点を増やしている。

 また今年1月には、同社初の中型店「Oisix CRAZY for VEGGY アトレ吉祥寺店」をオープンさせた。83坪と過去最大規模の同店のコンセプトは、ずばり「体験型」だ。そこには、従来の「有機野菜は、こだわりの強い人が買うもの」というイメージを払拭し、「ニッチからマスに広げる」という意図がある。

 実際に農場で使われていたトラクターや牛や豚のオブジェを配置することで、子どもでも楽しめる店内を演出。野菜が主役の惣菜が食べられる初展開のデリコーナーや、温度を摂氏3度に保った青菜野菜を収納する「エクストラフレッシュルーム」を置き、直感的に野菜のおいしさや新鮮さを体感してもらう狙いだ。デリでは、単身者のほか、子育てや共働きで忙しい家庭の主婦などが、惣菜を持ち帰るといった利用方法も増えている。

 一般的に、ネット発のリアル店舗はPR目的と捉えられがちだが、「吉祥寺は当社のネット通販の利用者が多いという土地柄もあり、確かにネットとのシナジー効果も見込めます。しかし、リアル店舗はネットとの相乗効果を第一義とせず、事業としての収益拡大を目的としています」と、古府氏は強調する。

●リアル店舗ならではの啓蒙活動

 ユニークな取り組みとして特筆すべきは、店頭で野菜勉強会を実施している点だ。参加者の中にはリピーターも多く、評判も上々なことから、現在週3~4回とハイペースで実施。リンゴという食材一つとっても、品種や産地によって味や色、食感などが異なるため、参加者は味比べを通じて新鮮さを感じるそうだ。

 よく知っているはずの野菜や青果に意外な品種があることや、調理法によって新しい食べ方があることを伝える“啓蒙の場”となっている点にも触れておきたい。

「虫食いがあって見た目が悪いリンゴでも、あえて“ふぞろい”として販売しています。それらを紹介しながら、農薬を使用していない安全の証しであることの理解を深めていただいています」(同)

 野菜勉強会の開催スケジュールは、店頭での掲示のみとなっているが、今後はLINEを活用したネット上の告知などで、リアル店舗への来客を促進していく考えだ。

 また、好調なショップインショップは、さらなる出店を検討中だという。「当社の商品と接していただく機会を増やすことで、ネット通販のご利用をご検討いただく方が増えればうれしいです」と古府氏は語り、リアル店舗を入り口としてネットへと顧客の関心が広がることも期待している。

 ネットとリアルは、必ずしも相反する関係にあるわけではない。時代とともに変わる消費行動に対応すべく、今後も両者の新たな関係を打ち出す企業が増えていくことだろう。
(文=千葉優子/ライター)

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