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江川紹子の「事件ウオッチ」第17回

【北大生・イスラム国参加計画事件】公安がジャーナリストを強硬に逮捕して情報を奪取か?

文=江川紹子/ジャーナリスト
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 伝えられている北大生の人間像は、「テロリスト」のイメージとは遠いように思えるが、生きがいや人生の目的を探しているうちにオウム真理教に出会い、凶悪事件に関与してしまった人たちの例もある。この北大生について捜査を行い、渡航を阻止するところまでは、警察の行為として、それなりに社会的要請に適うものと言えるかもしれない。

 問題は、その捜査の対象をジャーナリストまで広げていることだ。

 先月6日、北大生を被疑者とする捜査の一環として、北大生にインタビューを行い、さらに同行取材をするはずだったジャーナリストの常岡浩介氏の自宅に家宅捜索が行われた。常岡さんによれば、取材に使うビデオカメラ、パソコン、ハードディスク、携帯電話、タブレット端末、航空券、現金、クレジットカードなど62点が押収された。タブレット端末については、警察からパスワードの問い合わせがあった。イスラム国とは関係のない取材データが入っており、当然のことながら教えることを拒否。すると、「では破壊して調べる」と言われたという。このタブレット端末以外は、後日還付されたが、保存されていたデータ類は、警察がコピーをとっているはずである。

 常岡さんは、これまで3回にわたって「イスラム国」の現地取材を行ってきた。今年9月の取材では、「イスラム国」支配地域の状況をビデオで撮影。日本のテレビ各局で報じられた。10月にも取材に行くはずだったが、この家宅捜索によって、中止せざるをえなくなった。かつて取材したロシアのチェチェン人のつてで、現地司令官と親しくなり、身の安全が保障されるよう段取りをしてあった。この司令官を含め、現地の関係者は、常岡さんにとって大事な取材源。その連絡先が、シリア当局や米軍関係者に知られれば、彼らを身の危険にさらしてしまうこともありうる。常岡さんは、先方にフェイスブックの閉鎖を進言するなど、できる限り取材源を守る努力をした。その結果、常岡さんは取材協力者との連絡手段を、そっくり失ってしまった。

 さらに、この捜索の2週間前、9月21日から24日にかけて、常岡さんのグーグルアカウントに、何者かが侵入した形跡があった。常岡さんは、取材したデータを、グーグルなどのクラウド上に保存していた。それを、そっくりコピーされたり、メールでのやりとりを盗み見られた可能性がある。ただし、このことと捜索の関連は、未だはっきりしない。

 捜索令状は、北大生を被疑者としており、この時点では、常岡さんは参考人だった。ところが、今月13日になって、警察から「被疑者として取り調べたいので出頭するように」との連絡があった。それ以前に、参考人としての事情聴取の要請があったが、常岡さんは拒否している。

「データを押収され、取材源が守れない状況の中では、取り調べに応じるわけにはいかない」

 と常岡さん。この状況は変わらないので、被疑者としての出頭要請にも応じないつもりだ。そのため、常岡さん自身が逮捕される可能性がにわかに高まった。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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