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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏(12月2日)

バリスタ大国・日本?知られざる世界 コーヒー豆生産から関与、農業活性化にも寄与

文=高井尚之/経済ジャーナリスト

 14年のWBCはイタリアの観光都市・リミニで開催され、54カ国の代表が出場。予選・準決勝を勝ち抜いたファイナリスト6人が頂点を競い合った。同競技会では15分の制限時間内にエスプレッソ、カプチーノ、シグネチャービバレッジ(創作ドリンク)を各4杯提供。味わいや創造性、技術とともに、英語でのプレゼン能力が点数化されて順位が決まるという(「月刊カフェ&レストラン」<旭屋出版/14年10月号>参照)。
 
「今回の大会では『チームMARUYAMA』を結成し、出場する井崎以外に、統括ディレクター兼バリスタトレーナーの阪本義治、コーチのピート・リカタ(13年の王者)が技術面をサポートするなど総勢5人が現地に赴きました。当社は5年連続の出場で、これまで現リーテール地域ディレクターの女性バリスタ・鈴木樹らが培った経験もあり、大会を勝ち抜くノウハウを学んできました」(丸山氏)

 実は井崎氏は、前年も日本代表としてWBCに挑んだ。結果は13位。12位以上が決勝進出という中で、12位と同得点ながらローカルルールの差で予選敗退した。大会後に丸山氏は、井崎氏をコーヒー豆の生産地・コスタリカに派遣。自らも長期間同行して農園の生産者との交流を支援し、実際に栽培や収穫を体験させたという。こうした地道な活動や支援態勢が、14年の大会におけるパフォーマンスにも表れたのだ。

●夢を持てなかった若者にやる気を与え、素質が開花

 井崎氏の父は福岡県にある「ハニー珈琲」代表の克英氏だ。かつての井崎氏は、人生の目標が持てず16歳で高校を中退し、怠惰な日々を送っていた(その後に大検で資格を取り、法政大学を卒業)。当時の生活を見かねた克英氏が丸山氏に依頼し、阪本氏からバリスタとしての訓練を受けるようになった。

 もともと素質があったのだろう。井崎氏はすぐに頭角を現した。「17歳でバリスタの修業を始めて、約1年で大会に出場するまでになりました。運動神経が良く、動きも俊敏で、出場した大会では、ちょっとした評判になったほどです」と丸山氏は振り返る。

 本人も始めた当初から「バリスタ世界チャンピオンになる」という思いを持ち続けてきた。13年WBCに僅差で予選落ちしてからは捲土重来を期し、コーヒーの抽出からプレゼンの一言一句まで「0.5点」にこだわったという。

 コスタリカで再認識したのは生産者への思いだ。14年の大会はラ・メサ農園の生産者で同年代のエンリケ・ナヴァロ氏と一緒に理想のコーヒー豆をつくり上げ、その豆で大会に臨んだ。「井崎は、野球でいえば剛速球を投げられるが荒れ球の投手で、ツボにはまると本領を発揮するタイプ。本人が『できる限りのことはやった』と納得できるように周囲は支援しました」と丸山氏は明かす。産地経験が豊富な丸山氏も口出しを控え、本人の気づきを尊重したという。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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