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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第24回

危険ドラッグの摘発が市場拡大という皮肉な事態を呼ぶ“経済学的”理由

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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 ドラッグ所持に対して厳罰化を打ち出すと何が起こるかというと、需要曲線が左にシフトする。以前は「ちょっとおもしろそうだから、やってみようか」と思ったであろう初心者が、「死刑になるかもしれないんだったら、けっして近づきたくない」と考えを改めるようになるので、マーケット全体で需要が激減する。そして均衡点である価格も数量も減り、ドラッグ市場全体が小さくなって供給側も大々的には儲からなくなる。

 もともと日本の麻薬や覚せい剤撲滅への取り組みは、このような需要側を減らす試みが中心で、それは経済学的にとても正しいことだった。ところが危険ドラッグの場合、そもそも所持することに対して厳罰化できていないため、従来型の取り締まりができない。そこで苦肉の策として供給側を取り締まっているというのが現状なのだ。それは経済学的にいうと、摘発されたら販売店が店名や場所を変えたりしてイタチごっこが止まらずに、業者がなんとかマーケット拡大の恩恵にあずかろうとする動きを止めることができない。

 危険ドラッグをなくしていくためには、違法なドラッグの定義を変えて「危険なものは全部ダメ」というような強権発動をしないかぎりは、経済学的に分析すれば「収まらない」のである。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

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