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小林敬幸「ビジネスのホント」(12月10日)

アベノミクスは経済を動かしていない 景気への影響小、「燃費の悪い」経済政策

文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者
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 民主党政権の政策は、一言でいうと企業と官僚をいじめることを国の経済成長よりも優先していた。政治からの不意のいじめが来るのに備え、企業は内部留保を厚くして備えた。その民主党政権が終わり、経済環境にプラスの予測可能性が出てきたので経済活動が活性化した。自民党への政権交代後、経済に最も大きなプラス効果をもたらせたのは、アベノミクスでも自民党政権でもなく、単にビジネスを敵視する民主党政権でなくなったからだろう。強いていえば、自民党政権のほうが民間の経済活動の邪魔をする程度が少なかったからだといえよう。

(2)アベノミクスの結果の評価

 安倍晋三首相は就任以来、円安、株価上昇、雇用の拡大という結果を、自らの経済政策の成果と主張してきた。前述したとおりアベノミクスが及ぼした影響は限定的だが、理由と原因はともかく、円安、株価上場、雇用の拡大という結果が出たのは事実である。では、これらの結果は果たしてプラスの結果といえるのか。

・円安は、たいしてプラスではない

 現在の円安局面になる前、政府やマスメディアが円安のプラス効果を訴えていた頃から一部で指摘されていたことだが、今の日本経済にとって円安は必ずしもプラスではない。日本のGDPの7割をサービス業が占め、製造業の比率は低い。加えて輸出依存度は他の先進国に比べても低い。従って、円安になって恩恵を受ける輸出型製造業の比率は低いので、円安の恩恵を実感する国民が少ないのだ。

 そもそも、歴史的にも自国通貨安で崩壊した国は数あれど、自国通貨高で崩壊した国はない。言い方を換えれば、むしろ幸いにも十分な基礎体力があったので3割の通貨安を許容できた。だから強力な金融緩和策を実施できたと見るべきだろう。
 
・株高は、それだけで成果ではない

 株価が上がったからといって、必ずしも経済が良くなっているわけでもないし、国民の生活が豊かになるものでもない。例えていえば、塾から受験生への宿題が増えたからといって、生徒の成績が上がったのではないのと等しい。増えた宿題をちゃんと消化したら成績が上がる可能性が高くなる、という程度でしかない。

 受験生がよく勉強して実力を伸ばすには、宿題の量を増やすことよりも、じっくりと勉強する習慣をつけることのほうが大事だろう。株価も上がったり下がったり変動性が高いと、少しくらいその平均値が上がっても、企業経営に支障をきたすものである。公的資金を市場に投入して短期的に株価を上げたりすれば、ひるがえって経済にはマイナスなのだ。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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