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『ムカつくことには合理性がある~若き老害・常見陽平が吠える』

「ゆとり」のないゆとり世代 社会的にスルーされ搾取される若者と、価値観押し付ける大人

文=常見陽平/評論家、コラムニスト、MC

 成人式は、普通に行われている。お祝いの儀式だから、少しテンション高めでもいいじゃないか。EXILE風やE-girls風の者などどこにでもいる。まず、成人式を、新成人をバカにするなと言いたい。

●オッサンの老害芸 新聞の成人式社説

 もうひとつ、成人式がくるたびに「けしからん」と感じるものがある。それは、成人式に関する社説である。多くの場合は、中途半端な若者評論や説教である。要するに普段、若者と会わない論説委員・編集委員たちによる老害芸の披露の場なのである。
 
 ちょうど今年の成人式の日には、TBSラジオの『荻上チキ Session-22』に、まさに成人式ネタで出演する機会があった。若者論に詳しい後藤和智氏による成人式、社説レビューが秀逸だった。ぜひ、ご覧いただきたい。

『成人の日 社説読み比べ(後藤和智さん)』(『荻上チキ Session-22』公式サイト<「TBSラジオHP」より>)

 今年の成人式社説は、老害芸としても、若者の現状の分析としても実に中途半端だったといえる。もっとも、数年前の朝日新聞の「君は尾崎豊を知っているか」という、徹頭徹尾上から目線で、尾崎豊的世界観を押し付ける気持ち悪いものがなかったのも特徴だが。

 とはいえ、この手の成人式社説は、若者の味方のようで、単に説教をしているだけ、無理ゲーを強いているだけのようにも感じる。例えば、毎日新聞は若者の読書時間が減っていることを嘆いているが、その根本的な理由は掘り下げられていないし、大人たちも含めて読書離れが進んでいることを棚に上げている。そもそも、ネットニュースをスマートフォン(スマホ)で読むという行為も含めると、若者がこれほど「文字」を読んでいる時代はないわけだ。もちろん、読書というのは情報や知識・教養を身につける行為であると同時に、考える、著者の考えと対話するという行為でもあり、性質が違うことはわかる。ただ、それを単に若者に責任転嫁するのも違うのではないかと思うのだ。

 朝日新聞の社説なども、個性を礼賛しているように読めるのだが、この個性の礼賛というものもまた若者を苦しめていることをわかっているのだろうか。だいたい、いくつかの社説で見られた「成人おめでとう」という言葉ですら迷惑だ。何に対して「おめでとう」と言っているのか。成人になったことを喜べるような、素晴らしい世の中なのだろうか。その世の中は、誰がつくったのだろうか。この厳しい社会を20年間生き延びたことに対する「おめでとう」ならわかるのだが。

 最近では、大学の入学式、企業の内定式や入社式でこだわりを持って、あえて「おめでとう」とは言わない学長、社長も散見される。その大学なり企業に入るのは本人が決めたことであるし、別にそこに入ったところでえらくもないし、若者の幸せなど約束できないからだ。むしろ潔いといえる。

常見陽平/千葉商科大学准教授、働き方評論家

常見陽平/千葉商科大学准教授、働き方評論家

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)後、株式会社リクルートに入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年より准教授。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。主な著書に『「就活」と日本社会』(NHK出版)や『「意識高い系」という病』などがある。
常見陽平公式サイト

Twitter:@yoheitsunemi

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