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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」(1月29日)

若者を食い物にする労働マルチ 甘い言葉で誘い、違法な低賃金・長時間労働

文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト

(2)採用基準が通常の会社と比べて明らかに緩い

 労働マルチを行っている企業の採用情報には「不問」というキーワードがあふれているのが特徴だ。例えば、

 「業界経験不問 未経験者歓迎」
 「学歴不問」
 「職歴不問」
 「年齢不問」
 「金髪OK」

 このようなキーワードが複数並んでいたら、逆に警戒すべきだろう。通常、人材の採用は慎重に経験や人柄を見極めて選考していくものである。それがここまで幅広く門戸を開いているということは、「常に募集・採用し続ける必要がある」、すなわち「業務内容や職場環境に問題があり、離職者が多いため」である、という可能性を考慮したほうがいいからだ。

(3)射幸心を煽るキーワードを並べる

 さらに労働マルチの企業は、若手の社員たちが楽しそうにスポーツをやっていたり、海辺でバーベキューに興じたりしている写真を並べ、

 「月収100万円/年収1000万円も可能」
 「海外研修あり」
 「自由な時間に働ける」
 「夢」
 「成長」
 「感謝」

というふうに、「自由で好待遇」を連想させるようなワードをちりばめている。求人広告を見た人の多くは「経験がなくても稼げそうだ」「クリエイティブで面白そう」と引き寄せられていくだろう。

 そして、一度入ってしまったが最後、報われない長時間労働を強いられ、稼ぎは一部の幹部社員だけがせしめてしまうというマルチの構図にはめられてしまうのだ。

●労働マルチの法的な問題点とは

 ここまで見てきて、「報われない長時間労働というが、それは本人に説明の上で納得して入っているのだから、違法ではないのではないか」と考える人もいるかもしれない。では、ここで労働マルチの法的な問題点について言及しておこう。

 まず、労働マルチが批判されるべき点は、

 「違法行為、もしくはグレーゾーンの行為を意図的に行いながら、対外的にはそれを隠して『やりがい』や『高収入』をエサに若者をおびき寄せ、搾取的労働を強いている」

というものである。具体的には、以下が違法行為、もしくはグレーゾーンの行為といえる。

 ・虚偽の求人広告(正社員やアルバイトも選択肢として提示されるが、いずれも選ぶと不採用になり、業務委託を選んだ人だけが採用される)
 ・業務委託契約を悪用した労働力とやりがいの搾取(業務委託契約を謳いながら、実質的には業務委託ではない)
 ・1日10時間を超える長時間労働
 ・実質的に最低賃金以下の労働
 ・社会保険未加入(求人広告では「社会保険完備」となっていても、業務委託契約のため適用されない)
 ・違法な労働条件をあたかも合法のように喧伝し、さらに本人自らその労働条件を選ぶように誘導する
 ・「今は新人だから稼げないだけ」「力がつけば年収2000万円になる」などと過度に射幸心をあおる
 ・組織に対してマイナスの言動は「ネガティブ」と受け取られて評価が下がる(評価が下がると昇進できないため、次第に会社に不都合なことは明らかにしなくなり、洗脳状態になる)
 ・恐怖を与えて行動を縛る(特に社会経験の浅い人は「世間ではこれが当たり前」という思い込みで深みにはまることが多い)

●労働マルチに業務委託が多い理由

 上記の「業務委託契約を謳いながら、実質的には業務委託ではない」という部分について、少し専門的になるが以下に解説する。

 そもそも、なぜ労働マルチの企業は販売員を正社員やアルバイトとして採用せず、「業務委託」という契約を結びたがるのだろうか。その理由は明確で、「企業側の負担や持ち出しがゼロになるから」である。

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

労働環境改善による企業価値向上支援、ビジネスと労務関連のこじれたトラブル解決支援、炎上予防とレピュテーション改善支援を手がける。労働問題・パワハラ・クビ・炎上トラブル解決の専門家。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。著書25冊。

Twitter:@nittaryo

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