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故人の海外預金、払い戻しは困難?100万円&3年かかる場合も 安く短期で実現する方法

文=山岸純/弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP・パートナー弁護士
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 特に遺産分割で揉めているわけではないのに遺産分割調停を申し立てた目的は、「相続人Aが相続人全員の代表者として、シンガポールの○○銀行の預金口座の払い戻し手続きを行うことに、相続人全員が同意する」という内容の「調停調書(判決文と同じ効力がある裁判所の書面)」を作成してもらうことにありました。

 裁判所には事前に事情を説明していたので、最初の調停で上記の合意が成立し、日本の裁判官の名前が入った調停調書が完成しました。

 しかし、これだけでは何の効力もありません。海外の銀行にしてみれば、他の国の言葉で書かれた他の国の文書など、意味はないからです。

 そこで、次に調停調書の内容を正確に英語に翻訳しました。さらに、調停調書とその翻訳文を公証役場に持ち込み、「この翻訳内容は正確で間違いありません」という認証をもらいました。ただ、これだけではまだ「どこかの国の誰かが何かを翻訳し、また別の誰かがそれにお墨付きを与えた」程度にしかなりません。

 今度は外務省に行き、「この人は間違いなく日本の公証人です」という証明をもらいます。ここでようやく、「日本の裁判所が『相続人Aが相続人全員の代表者として、シンガポールの〇〇銀行の預金口座の払い戻し手続きを行うこと』を認め、それを日本の公証人が正しいものであることを認め、さらに日本の外務省が諸外国向けに正しいものであることを認めた」文書となります。

 最後に、駐日シンガポール共和国大使館に行き、大使あるいは大使館職員に「この人たちの署名などは本物です」という認証をしてもらい、ついに完成となります。

 これ以外にも、相続人の出生証明書や婚姻証明書などを揃える必要があり、上記と同じような手続きを踏みます。無事に書類が揃ったら、銀行が送ってきた預金払い戻し請求書に必要事項を記入し、国際郵便で指定の場所に郵送します。

 すると、1カ月ぐらいで銀行の小切手が郵送されてくるので、日本の銀行で換金します。これでようやく、亡くなった方が海外に遺した預金の払い戻しに成功したわけです。

 香港の銀行でも、上記と同じような方法で預金の払い戻しに成功したことがあるので、プロベートを採用している国であっても、一定の条件下ではこのような方法が可能なのかもしれません。

費用と時間はどのくらい?

 肝心の費用ですが、家庭裁判所の手続きで2000~3000円、公証役場の手続きで1万数千円、シンガポール大使館の手続きで数百円です。

 弁護士費用は、ここでは詳細を控えますが、大卒初任給の手取り額より低い程度と考えていただければと思います(あくまで筆者の基準です)。

 手続きに要した時間は、家庭裁判所への申し立てから調停調書の取得まで2~3カ月、そこから各種書類の完成まで1カ月、各種書類を郵送して小切手が届くまで1カ月というのが平均です。

 ただ、シンガポール、香港でもすべての銀行で上記の方法が通用するかどうかはわかりませんし、プロベートを採用している他の国については、検証したこともありません。さらに、預金額によって対応が違ってくることも考えられるので、上記の方法がすべてのケースで通用するとは限りません。

 したがって、実際に「あまりお金をかけずに、故人海外預金を払い戻す方法」を試す際は、必ず専門家と相談して、慎重に慎重を重ねた上で、自己責任で判断していただければと思います。筆者への正式な依頼を除き、本内容についての具体的な問い合わせには応じかねますので、ご留意ください。
(文=山岸純/弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP・パートナー弁護士)

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