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丸紅に危険事態、住友商事は赤字寸前…総合商社に異変 資源下落ショックで巨額減損

編集部
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●IFRSショックも

 商社決算でインパクトが大きかったのは、国際会計基準(IFRS)がもたらした影響である。日本は長い間、自国基準を維持してきたが、07年8月、IFRSとの共通化に舵を切った。総合商社では11年に住友商事が先行し、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅は14年にIFRSへ切り替えた。

 1月26日に通期予想の下方修正をした丸紅は、IFRSショックに見舞われたといっていい。15年3月期の当期利益を従来予想の2200億円から1100億円に大幅に引き下げた。13年に買収した米穀物準メジャー、ガビロンののれん代を500億円減損処理したのだ。株式市場はガビロンの減損を想定していなかったため、「丸紅ショック」との声も聞かれた。

 日本会計基準とIFRSとの違いの1つが、のれん代の取り扱いだ。IFRSではのれん代の償却は不要な代わり、定期的に減損テストを行って回収可能額と帳簿価格を比較し、回収可能額が帳簿価格を下回った場合には一括して減損処理を行う必要がある。

 穀物に強かった丸紅はガビロンに2700億円を投じ、のれん代は1000億円に上った。丸紅の穀物事業とのシナジー効果が上がり年間150億円の利益が取り込めると見込んでいたが、結局100億円にとどまった。減損テストの結果、500億円の減損損失を一括計上せざるを得なくなった。國分文也社長は「(ガビロンの買収額は)高値づかみだった」と語り、株式市場のシビアな見方を追認する結果になった。IFRSでは買収企業の業績次第で、突然、減損損失が発生するというリスクがあることを丸紅が証明した。

 一方、三菱商事の決算では、IFRSの導入がプラスに働いた。過年度に減損処理したローソン株式の差し戻し益など合計680億円の戻り益を計上した。過去に減損処理しても資産価格が元に戻れば、戻り益が発生するというIFRS特有の会計ルールに基づくものだ。IFRSには減損について厳しいルールがある。一方で、減損した後に価値が上がれば再びその分を計上できる「戻り入れ」もあり、業績が大きく上下に揺れるといった批判がつきまとう。

 今回、総合商社の決算はIFRSのメリットとデメリットを顕在化させた。特に三菱商事は豪州石炭開発子会社の14年10~12月期が38億円の黒字(前年同期は95億円の赤字)に転換し、底力を見せた。鉄鉱石の価格の下落が止まれば総合商社株が反発するとの見方が、市場関係者の間で台頭。3月9日に三菱商事の株価は4年ぶりの水準(2449円)に戻ったが、08年の高値である3950円まではまだ大きな距離がある。

 今回の総合商社各社の決算は、IFRS導入のメリットとリスクを証明したといえよう。
(文=編集部)

【続報】 
 丸紅は原油開発で950億円、銅開発で100億円、石炭開発で50億円の減損が発生する。13年に買収した米穀物子会社ののれん代と合わせて、15年3月期に1000億円の巨額損失を計上する。連結純利益は1100億円と前期比48%減る。巨額損失を計上した住友商事は昨年秋の段階で100億円の最終利益(黒字)と予想していたが、資源価格はさらに軟調で、結局、数100億円(最大1000億円規模)の赤字に転落する。三井物産も資源価格安で、減損がさらに広がる可能性を指摘している。

 総合商社、上位5社は国際会計基準(IFRS)を採用している。IFRSは資産と負債を重視しており、減損の基準が厳しい。16年3月期は厳しい収益環境が続く見通しだ。たとえ資源価格の下落が止まっても、国際取引価格に反映するまでにタイムラグがあるからだ。総合商社の海外開発案件は海外の資源大手が主導権を握っており、持ち分の過半数を保有している。一方、総合商社は、呼びかけ応じて参加する少数株主である。プロジェクト全体のコストの把握が難しいうえに、撤退する場合などで商社側の主張が反映されることはない。最低の利益も確保されない。

 投資家からは「投資した時は大々的に発表するが、その後、問題が発生してもすぐには情報を開示しない。フェアではない」との辛口の批判がある。日経平均株価は1万9500円になり、2万円突破の声が強まっているが、商社株で昨年来高値を抜いたのは三菱商事だけ。対して、伊藤忠商事の株価は昨年来高値から1割安。伊藤忠は資源ではないが、中国に6000億円の巨額投資をする。中国経済の減速と巨額投資のダブル・リスクがあるからで、伊藤忠のトップとマーケットの対話不足が株価に反映されているわけだ。市場はそれだけシビア。総合商社のトップは市場との対話不足が目立つから、株価が上がらない。

【続報2】
 伊藤忠商事は4月1日、2015年3月期に米シェール開発関連で380億円の損失を計上すると発表した。原油価格の下落で出資先の企業の業績が悪化した。資源安を受けて、総合商社では原油やシェール開発で多額の損失を出すケースが相次いでいる。伊藤忠は14年4~12月に130億円の損失を計上したが、損失額が380億円に大幅に増える。伊藤忠は子会社を通じて米石油・ガスのサムソン・リソーシーズ(オクラホマ州)に24.6%出資している。サムソンは3月末に14年12月期決算を発表し、23億ドル強の減損損失を計上。最終損益は14億2000万ドル強の赤字となった。伊藤忠は出資比率に応じた持ち分法損失を計上する。一方で、中国企業への出資方法の変更に伴い利益が出るため、これと相殺し、15年3月期の連結最終利益3000億円の予想は据え置く。

 三井物産は14年4~12月期に米シェール関連で390億円、北海原油で90億円の損失を出しているが、15年3月期(通期)の資源関連の損失はさらに膨らむ可能性がある。この結果、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の総合商社5社の原油関連の損失は4500億円を上回り、5000億円に近づくかもしれない。また、石油&シェール以外の銅・ニッケル鉱山や石炭でも設備の減損などが考えられるため、総合商社5社の資源関連の損失額は当初見込みから倍増する懸念が強まっている。

BusinessJournal編集部

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