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碓井広義「ひとことでは言えない」(3月25日)

ラジオは“死んだ”のか?知られざるとてつもないラジオの力 無数の被災者を救っていた!

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

 震災時のラジオの活躍は、内容の面だけではない。地震や津波による停電でテレビをはじめとする他のメディアが使えなくなったときも、電池で動くラジオは唯一稼働するメディアとして、存在自体が被災者を元気づけた。ラジオの向こうに生きている人がいると感じさせることで、被災者に安心感を与えたのだ。

「想像ラジオ」とラジオの想像力

 ラジオは映像が伴わないことが弱みだと捉えられがちだが、裏を返せばそれは強みにもなる。画面に映らないという理由から、ラジオの出演者はテレビに比べてリラックスして話せるのだ。そのためリスナーは、出演者の人柄や素の部分までを楽しむことができる。

 いや、それだけではない。音声だけだからこそ、人の“想像力”を強く刺激するのだ。テレビでは、「赤い花」は具体的な花として映し出されてしまう。しかし、ラジオで「赤い花」と聞いた時、100人がイメージする花は100通りある。

 野間文芸新人賞受賞作で芥川賞候補作にもなった、タレント・いとうせいこうさんの小説『想像ラジオ』(河出書房新社)。同作の主人公は、ラジオパーソナリティのDJ・アークだ。彼は被災地から不眠不休で放送を続けている。だが、そのおしゃべりや音楽はラジオのスイッチを入れても聴こえてこない。彼自身が言うように、「あなたの想像力が電波であり、マイクであり、スタジオであり、電波塔であり、つまり僕の声そのもの」だからだ。ラジオという想像力のメディアと震災が生んだ、21世紀の“世界文学”と呼びたい野心作である。

これからのラジオ

 3月29日に、TBSラジオの『全国こども電話相談室』が、半世紀を超す歴史に幕を下ろす。確かに、PCやスマートフォン(スマホ)による検索全盛時代の今、存続は難しかったかもしれない。

 一方で、最近はスマホの普及や、ラジオ放送をインターネット上で同時配信する「radiko」のようなサービスの登場により、新たなラジオファンも増えてきた。「電話相談室」に代表される、送り手と受け手が互いを感じることのできる双方向性は、今後も形を変えて継承されていくべきラジオのチカラだろう。
(文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授)

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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