NHK『クロ現』、BPO審議へ　NHK調査報告書は信用されず　公共放送局の捏造疑惑

文＝碓井広義／上智大学文学部新聞学科教授

【この記事のキーワード】NHK, BPO, クローズアップ現代, ひとことでは言えない

　また、NHKは「やらせ」ではなく「過剰な演出」だと主張しているが、「何がどう過剰なのか」は報告書を読んだ限りでははっきりしない。組織のトップにまで責任が及ぶ可能性のある「やらせ」という文字を回避したいがために「過剰な演出」という言葉を使ったのではないかという疑問が拭えない。

BPOへの期待

　幸いBPOの放送倫理検証委員会には、放送や番組制作について十分な見識を持つメンバーが参加している。ドキュメンタリーの優れたつくり手でもある映画監督の是枝裕和氏、新聞記者として長年放送の現場を取材してきた放送評論家の鈴木嘉一氏、そして放送研究で多くの実績がある法政大学社会学部教授の藤田真文氏などだ。

　今回の問題は、一人の不心得な記者の暴走にすぎないのか。それとも組織としてなんらかの欠陥が背後にあるのか。BPOの審議と検証が明らかにしてくれることを期待したい。
（文＝碓井広義／上智大学文学部新聞学科教授）

碓井広義／上智大学文学部新聞学科教授

1955（昭和30）年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020（令和2）年3月まで上智大学文学部新聞学科教授（メディア文化論）。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士（政策研究）。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』（倉本聰との共著）など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。