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小笠原泰「生き残るためには急速に変わらざるを得ない企業」

ソニー、知られざる凄まじい変貌と解体的改革 阻む社員やOBら「内なる敵」たちの愚行

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

 この2つの事業は、現在のソニーにとっての安定的な事業基盤である。米国中心の事業のためソニー本体がコントロールできていないとの批判もあるが、ソニーの後を追って91年に米MCAを買収したものの、95年に保有株の8割を売却して事実上米国でのソフト事業から早々に撤退したパナソニックに比べれば、ソニーは成功したといえる。これは、グローバル展開、異業種への展開、M&A(合併・買収)におけるソニーの実績でもあり、この領域でパナソニックの実績は比較の対象ではない。

ゲーム事業

 そして、ソニーの売り上げの2割近くを占めるゲーム事業であるが、2013年11月に欧米で発売(日本発売は14年2月)されたプレイステーション4(PS4)は販売好調で、PSシリーズ最速で今年2月に累計販売台数が2000万台を超えている。国内販売は今年3月にやっと120万台を超えたが低調であり、販売を牽引する市場は完全に北米を中心にグローバル化している。

 これを、「ソニーのハード復活」と捉える向きもあるが、PS4発売において着目すべきは、ソニー・コンピュータエンタテインメントがソニー・ネットワークエンタテインメントインターナショナルと協業し、クラウドネットワーク時代を念頭にケーブルテレビや衛星放送サービスを必要としないクラウドベースでのテレビのライブ放送、オンデマンドによるコンテンツ視聴をPS4とPS3で提供する新テレビサービス、プレイステーション ヴュー(PS Vue)を昨年11月に発表し、この3月に米国でサービスを開始したことである

 成功するか失敗するかは置き、情報通信技術の進化による事業環境の変化に果敢に挑む姿勢は、評価できよう。その姿勢は、ソニーのイメージを損なうという社内の反対を押し切り、当時の大賀社長のサポートのもとゲーム専用機器事業を確立した、「異端児」と呼ばれた久夛良木健元副社長以来のものであろうか。

金融事業

 最後は、ソニーの売り上げの約1割半を占め、利益貢献度の高い、国内を中心とする金融関連事業である。具体的には、ソニー銀行、ソニー生命、ソニー損保である。この事業については本来のソニーの事業ではないという批判を聞く。しかし、世紀の名経営者といわれるジャック・ウェルチGE元CEOも、エジソンを祖に持つGEで金融事業部門であるGEキャピタルを育成した。ソニーがそのブランドネームを活用して金融事業に参入するのは、米経済学者ロバート・ライシュが指摘するように、変化のスピードが速まり不確実性が高まる事業環境への対応が遅い大企業が取るべき「ブランドオーナーとしての大企業」という戦略を考えると、正しい方向性である。

戦艦大和から高速駆逐艦の船団へ

 このように、ハードからソフトまでの事業をグローバルに展開し、売り上げにおいて寡占的な事業を持たないのが現在のソニーの事業構造である。それを念頭に平井一夫社長は、今年2月の中期経営方針説明会で各事業の環境変化への適応スピードアップを重視して、AV機器事業(同社の売り上げの約5%)、デバイス事業(同約1割)、デジタルカメラ事業(約1割)も順次分社化し、本社を小さくして事実上持ち株会社化することを明言している。

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

1957年生まれ。東京大学卒、シカゴ大学国際政治経済学・経営学修士。McKinsey&Co.、Volkswagen本社、Cargill本社、同オランダ、イギリス法人勤務を経てNTTデータ研究所へ。同社パートナーを経て2009年より現職。主著に『CNC ネットワーク革命』『日本的改革の探求』『なんとなく日本人』、共著に『日本型イノベーションのすすめ』『2050 老人大国の現実』など。
明治大学 小笠原 泰 OGASAWARA Yasushi

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