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片山修「ずたぶくろ経営論」

シャープと東芝をダメにした歴代トップたちの内部抗争 企業の暴走は止められるのか

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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 片山氏は、それでも09年に堺工場を稼働させる。液晶をめぐって、亀山、堺両工場の総投資額は9450億円に上った。結果、拡大路線は裏目に出た。12年に責任を取るかたちで町田氏は相談役、片山氏は代表権のない会長に退いた。そして、次期社長に奥田隆司氏を指名したのは、片山氏ではなく町田氏だったといわれている。

 シャープは12年、再建のために提携先を探して奔走し、迷走する。町田氏が先頭に立って進めた台湾・鴻海精密工業との資本提携は交渉が頓挫する。一方、奥田氏から交渉を委任された片山氏は、米半導体大手のクアルコムやサムスン電子と接触して出資を取りつけるなど、社内は混乱した。代表権のない町田、片山両氏が、最前線で経営に関与していたことは“二頭政治”といわれるなど、ガバナンスの欠如を露呈した。

 そして13年3月期の赤字が5453億円と過去最悪となり奥田氏が社長を退くと、次期社長として高橋興三氏が就任。この人事も不透明で、さまざまな憶測を呼んだ。誰がどこで何を決めているのか、よくわからなかった。

 トップの対立に伴う事業戦略の迷走が、現在の危機的状況の遠因であることは間違いない。

東芝

 インフラ工事等の不適切会計が問題となっている東芝はどうか。14年3月期までの3年間に、営業損益ベースで500億円強の影響が見込まれ、第三者委員会の調査によってさらに膨らむ可能性が指摘されている。

 東芝の問題もまた、背景にはトップの対立がある。報道されているように、前会長の西田厚聰氏と副会長の佐々木則夫氏の間には、深い溝があるのだ。

 05年に社長に就任した西田氏は、原子力と半導体に傾注し、米原子力大手ウエスチングハウス買収など積極的な投資で拡大路線をとった。しかし、08年のリーマン・ショック後、巨額赤字に転落。09年、西田氏は次期社長として二人三脚で原子力分野を推進してきた佐々木氏を指名し、会長に退いた。しかしその後、両氏は対立を深める。

 13年には、佐々木氏の後任として田中久雄氏が社長に就いた。しかし、西田氏は会長に留まり、佐々木氏は1945年以来設けられていなかった「副会長」の職につけられる。同時に、一度常任顧問に退いていた室町正志氏が、取締役に復帰した。この人事の背景には、経団連会長の座を狙っていた西田氏の思惑があるといわれている。

 さらに14年、西田氏が相談役に退くと、室町氏が佐々木氏を飛び越して社長経験がないまま会長に就任。佐々木氏は副会長に留まった。これもまた、西田氏の思惑といわれている。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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