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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

アップルに「半導体の盟主」を奪われたインテルの致命的ミス ムーアの法則終焉説の嘘

文=湯之上隆/微細加工研究所所長

常に終焉説が囁かれる「ムーアの法則」

 ムーアの法則とは、1965年に米インテルの創業者の一人、ゴードン・ムーア氏が提唱した「半導体のトランジスタの集積度は2年で2倍になる」という法則である。集積度を2倍にする際、トランジスタの寸法が変わらなければ半導体チップが巨大化していく。そうならないように、集積度の向上とともにトランジスタの寸法を微細化する。したがって、ムーアの法則と微細化は表裏一体の関係にある。

 ムーアの法則が提唱されてから50年が経過したが、その間に何度もその終焉説が囁かれた。なぜなら、半導体の微細加工技術が幾度となく困難に直面したからだが、半導体業界はその都度、壁をブレークスルーしてきた。

 その具体的な一例を示そう。筆者は2007年、リソグラフィ技術に関わっている世界のキーパーソンたちに、「半導体微細化の限界は何nm(ナノメートル)か?」というインタビューを行った。リソグラフィ技術とは、半導体ウエハ上に微細なパターンを形成する技術で、半導体製造工程の中で最も重要な技術の一つである。その結果、半数以上が45~32nmと回答した。最も挑戦的な人たちですら、22nmが限界だと答えた。

 それから8年が経過したが、現在では半導体の微細化は20nmを軽々と突破し、10 nm台が量産されている。8年前のリソグラフィの専門家の予測は、見事なまでに全員外れたわけだ。

 このような微細化を可能にしたのはマルチパターニングという技術であるが、このマルチパターニングを何回も繰り返せば7~5nmまでは微細化でき、そのあたりが限界だろうといわれている。しかし、これまでの微細化の歴史を考えれば、7~5nmに到達した後も人類はきっとさらなる微細化技術を見つけるに違いない。

国際半導体技術ロードマップ(ITRS)

 半導体の微細化は、国際半導体ロードマップ専門委員会が発行するロードマップ(ITRS:International Technology Roadmap for Semiconductors)を基に、半導体メーカー、製造装置メーカー、材料メーカーなどがベクトルを合わせて開発を進めている。

 このロードマップの中心的な存在として、実質的に今日まで微細化を牽引してきたのは、パソコン用プロセッサの80%を独占し23年間も世界半導体売上高1位に君臨し続けている米インテルである。このような実態から、「ITRSとはIntel Technology Roadmap for Semiconductors(インテルのためのロードマップ)」と皮肉られることも多かった。

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