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片山修「ずたぶくろ経営論」

ホンダのスポーツカーS660、車の常識を破壊する革命的意味 手作業で大量生産に逆行

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
ホンダのスポーツカーS660、車の常識を破壊する革命的意味 手作業で大量生産に逆行の画像1ホンダ「S660」の製造工程

 ホンダはこのところ、明るいニュースがない。2013年以降の5回にわたる「フィット」のリコール、また米国でのタカタ製エアバッグをめぐるリコール問題などの対応にてんやわんやで、なかなか前に進めない。そのなかで“希望の星”といえば、「ホンダジェット」を除いて肝心のクルマでは軽のスポーツカーのみである。

 スポーツカーはF1参戦の歴史に象徴されるように、ホンダらしさの象徴だ。ホンダはかつて“とんがったクルマ”が特徴で、その点が評価されてきた。近年そうした長所がすっかり消えて、無難にまとまる傾向にある。トヨタ自動車とホンダのクルマに差がなくなったとすらいわれている。

 いささか停滞ムードが漂うなかで4月に発売された軽のスポーツモデル「S660」は、ホンダらしさを取り戻す起爆剤としての役割が期待されている。ミッドシップエンジン・リアドライブレイアウトを採用し、高い旋回性とともに低い重心高にこだわる。軽自動車初の6速マニュアルトランスミッションと7速パドルシフト付CVT(無段変速機)をラインアップし、走りの楽しさを徹底追求した本格的なスポーツカーだ。

 ホンダの軽には、売れ筋の「N-BOX」があるので、プラットフォームを共有化すればS660の生産はさほど難しくはないと考えがちだが、そうは問屋が卸さない。とはいえ、S660には少量生産の新しいビジネスモデルの構築という画期的な意味が秘められているのだ。

生産は地方のグループ子会社

 S660の生産を担当するのは、近鉄名古屋駅から特急で2駅、近鉄四日市駅から車で約30分走ったところに工場を構えるホンダのグループ子会社、八千代工業四日市製作所である。従業員は713人、平均年齢は約42歳だ。
 
 八千代の2015年3月期の連結売上高は2157億円で、うち完成車事業は18.2%の393億円、部品事業は81.8%の1764億円だ。1972年に埼玉県狭山市の柏原工場でホンダ「ステップバン」の受託生産を開始したのを皮切りに、85年には本格的な軽自動車の受託生産を四日市製作所でスタートした。以来、「アクティ・トラック」「アクティ・バン」「バモス」「バモス・ホビオ」など、ホンダの軽自動車をほぼ一手に生産してきた。ピーク時には日産1000台にのぼった。

 ところが、N-BOXを機にホンダの軽の生産は自社の鈴鹿製作所に全面移管された。現在、八千代が生産しているのはバモスやS660などにすぎず、台数はいまや日産150台まで落ちた。

逆転の発想

 では、一体なぜS660は鈴鹿製作所ではなく八千代で生産されているのか。理由は大きく2つある。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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