JRA「複雑な事情」から巡り合った人馬が、デビュー戦を「歴代最速」タイムで快勝! 秀逸の上がり3ハロンは将来の出世を早くも確約?
26日、東京競馬場で行われた芝1800mの新馬戦は、新種牡馬ドレフォン産駒のジオグリフ(牡2歳、美浦・木村哲也厩舎)が、2着馬に1馬身半差をつける快勝を決めた。
スタートを決めると道中は内目の3番手を追走。最後の直線、早め先頭から押し切りを図る1番人気アスクビクターモア、それに持ったまま並びかけるアサヒの外に持ち出すと、鞍上のステッキに応えて力強く伸び、先頭でゴール板を駆け抜けた。
レース後、騎乗したC.ルメール騎手は、「スタートが良かった。道中は真面目に走っていてセンスがいい。反応は少し遅かったが坂を上がってからいい瞬発力を見せてくれた」と笑顔で振り返った。
勝ち時計1分48秒2は、1986年以降に東京競馬場で行われた2歳新馬戦・芝1800mの最速タイム。2位は今春の毎日杯(G3)で2着し、日本ダービー(G1)でも4着と善戦したグレートマジシャンの1秒48秒6だが、こちらは11月の新馬戦で記録されたものだった。
今年のダービー4着馬の勝ち時計を6月の時点で上回っているのだから、ルメール騎手が笑顔であるのも頷けるだろう。クラシック級の若駒を発見したことに対しての笑みも、もしかしたら含まれていたのかもしれない。
だが今回、ルメール騎手とジオグリフがコンビを組むに至った背景には、少々複雑な事情も存在していたようだ。
元々、ジオグリフは27日に東京で行われる芝1600mの新馬戦で、北村宏司騎手を背にデビューを迎える予定だった。しかし、20日に行われたユニコーンS(G3)で北村宏騎手が落馬。府中市内の病院に搬送され、残念ながら右足骨折の診断が下された。
北村宏騎手が騎乗不可となったため、27日東京の1600m戦から26日阪神の芝1800mへ出走をスライドすることに決めたようである。27日の東京は宝塚記念(G1)の裏開催となり、また3場開催でもあるため代わりの騎手の確保するのが難しいということが、スライドの理由の1つとして挙げられる。
一方、ルメール騎手はこのレースで、元々は国枝栄厩舎のキズナ産駒パラレルヴィジョンに騎乗する予定だった。しかし、直前でパラレルヴィジョンが回避を決定。同馬はノーザンファーム天栄へと放牧に出され、ルメール騎手は騎乗未定となっていた。
騎手がいなくなった馬と馬がいなくなった騎手が思いがけず出会うこととなり、結果は歴代最速タイムで快勝。今後のクラシック候補に踊り出たわけである。
「ジオグリフの父ドレフォンは新種牡馬のため、まだ未知の部分も多いですが、母のアロマティコは中距離のG1で3着2回の実績があります。モーリス産駒の兄アルビージャは芝2300mの新緑賞(1勝クラス)をレコード勝ちするなど、2000m以上の距離で現在3連勝中です。
ジオグリフも今回芝1800mの距離を好タイムで快勝しました。今後も中距離路線で活躍して行ける可能性は十分にあると思いますよ」(競馬記者)
ちなみに今回、ジオグリフが記録した上がり3ハロンの時計は33秒3。2歳6月の東京芝1600m以上の新馬戦で、上がり3ハロン33秒3以内を記録した馬は過去にロードクエスト、サリオス、ワーケアの3頭だという。全てが後のオープン馬であり、サリオスは朝日杯FS(G1)の勝ち馬だ。
そういった意味で、ジオグリフの今後の活躍は早くも確約されたのかもしれない。また、複雑な巡り合わせから誕生したコンビは今後も継続されるのか、あるいは北村宏騎手の元へと戻るのだろうか……色々と、長い目で見守って行きたいところである。
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