武豊「神騎乗」で菊花賞のパートナーを確保、降板のルーキーに見せつけた「格の違い」
25日、中京11Rの神戸新聞杯(G2)はジャスティンパレス(牡3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)が優勝。主役不在といわれた混戦の結末は、2歳G1・ホープフルSで2着がある実績馬の華々しい復活劇で幕を閉じた。
そして、ジャスティンパレスと共に菊花賞(G1)への優先出走権を掴んだのは、2着のヤマニンゼスト(牡3歳、栗東・千田輝彦厩舎)と3着のボルドグフーシュ(牡3歳、栗東・宮本博厩舎)だ。
「神騎乗」で菊花賞のパートナーを確保
ヤマニンゼストは12番人気とノーマークに近い存在だったが、今回初コンビを組んだ武豊騎手の見事なエスコートで変わり身を見せた。
ゲートを出ると、武騎手は真っ先にラチ沿いへと誘導。他馬がポジション争いをする中で、一見消極的にも思えたこの行動が後々効いてくる。道中は動かずに後方でじっくり脚をためると、直線も内へ。最後までインコースにこだわったヤマニンゼストは、ゴール前で下がってきた2頭の間を綺麗に割り、2着でフィニッシュした。
レース後に武騎手は「決め打ちです」と謙遜したが、勝ち馬のジャスティンパレスも内から抜け出したように、当日は内側が有利な馬場状態だった。大外を回して上がり最速を記録したボルドグフーシュら“外差し勢”にきっちり先着しており、鞍上の大胆な判断が生んだ激走といえそうだ。
ヤマニンゼストの複勝は1570円の配当がつき、武騎手の36年のキャリアでも重賞の中では最高額となった。二桁人気の穴馬に菊花賞権利をもたらした名手の騎乗に対し、SNSやネット掲示板では「まさに神騎乗!」「さすがの馬場読み」といった賛辞が寄せられた。
一方、そんなレースを複雑な心境で見ていたであろう人物が、ルーキーの鷲頭虎太騎手だ。
「鷲頭騎手に初勝利を与えてくれたのが、実はこのヤマニンゼストです。そのレースが馬にとっても初勝利で、そこから3戦はこのコンビが続きました。2戦目も勝利して連勝となりましたが、前走の藻岩山特別(2勝クラス・芝2000m)では、3番人気に支持されたものの、直線で大外を回すロスのある競馬で6着と敗れています。
特別戦であり、新人騎手の特典といえる斤量3kg減のルールが適用されない中で鞍上を任された一戦でしたから、鷲頭騎手としても期待に応えたかったところでしょう。巧みな進路取りで優先出走権を獲得した名手に、自身の力不足を痛感したかもしれません」(競馬誌ライター)
ヤマニンゼストの陣営も「功労者」である武騎手とのコンビで菊花賞に向かうことを表明。レジェンドの神騎乗なくしては参戦が叶わなかった可能性が高かっただけに、継続騎乗を依頼したのも頷ける。
いずれにせよ通算6勝の鷲頭騎手は、G1騎乗条件となる31勝の壁もあり、避けられない結末だったとはいえ、得るものはあったはず。幸いにもヤマニンゼストは所属厩舎の管理馬であり、今後も騎乗するチャンスはあるだろう。
来たるコンビ再結成に向けて、この経験を成長の糧にして頑張ってほしい。
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