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JT、最高益でもなぜ大規模リストラ?国内たばこ市場への見切りと、加速する国際化の裏側

文=編集部
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JT、最高益でもなぜ大規模リストラ?国内たばこ市場への見切りと、加速する国際化の裏側の画像1JT本社ビル(「Wikipedia」より/BlackRiver)

 10~11月にかけ発表された一部上場企業各社の2013年度(13年4月~14年3月)の業績予想では、上方修正する企業が相次いだ。中でも日本たばこ産業JT)は前年度に続いて13年度も過去最高益を更新する見通しだが、そんな好業績下でも大規模なリストラに踏み切る。

 JTのリストラ策は国内に9カ所あるたばこ関連工場のうち、4カ所を閉鎖するというもの。これに伴い本社社員の2割に当たる1600人を削減する。具体的には、たばこを製造する郡山(福島県郡山市)、浜松(静岡県浜松市)と、葉タバコを加工する平塚(神奈川県平塚市)、フィルター部分を包む紙を印刷する岡山(岡山県岡山市)の印刷工場だ。平塚は16年3月末、他の3工場は15年3月末で閉鎖する。

 さらに、全国に25ある支店は15に削減し、たばこ自動販売機の開発・製造・販売等を行う事業部は廃止する。

 JTの13年4~9月期の連結決算(国際会計基準)における純利益は前年同期比40.5%増の2371億円だった。4~9月期としては過去最高であり、ロシアやイギリスでたばこの値上げを実施したのに加え、円安が寄与した。

 14年3月期(通期)の売上高は同11.7%増の2兆3680億円、営業利益は同18.7%増の6320億円、純利益は同20.8%増の4150億円となり、営業利益、純利益とも過去最高益を更新する見通しだ。

 ではJTはなぜ、過去最高益にもかかわらずリストラを断行するのか。

国内たばこ市場への見切り

 JTが大型リストラに踏み切るのは、国内のたばこ市場の先行きに一定の見切りをつけたという決断の表れでもある。日本たばこ協会の統計によると、国内たばこ需要は1996年度の3483億本をピークに減少を続けており、12年度は1951億本とピーク時より44%も落ち込んだ。今年の喫煙者率は20.9%と、18年連続で減った。

 健康意識の高まりに加え、たばこ税の増税による値上がりが「たばこ離れ」を加速した。増税による影響は大きく、過去最大の増税幅となった10年度の国内需要は前年度比で1割減少した。来年4月の消費増税に伴い、大半の銘柄を値上げする方針で、「たばこ離れ」がさらに進むのは避けられそうもない。

 これまでJTは、市場の縮小に応じてリストラを行ってきた。03~04年にかけて、国内の12工場を閉鎖し、4000人の希望退職者を募った。この時は応募が相次ぎ、社員の3分の1に当たる5800人がJTを去った。

 民営化した85年には35あったたばこ工場は、今回のリストラでわずか5工場になるが、これで打ち止めという保証はなく、さらなる工場閉鎖の可能性はあり得る。

急速に進むグローバル化

 JTは、国内市場の縮小に手をこまねいていたわけではない。99年には「ウィンストン」で有名なRJRインターナショナル、07年には「LD」で知られる英たばこ大手のギャラハーを2兆2000億円で買収し、傘下に収めた。近年もスーダンやベルギー、エジプトのたばこ会社を買収している。

 その結果、世界のたばこ市場では「マールボロ」のフィリップ モリス インターナショナル(米)、「KENT」のブリティッシユ・アメリカン・タバコ(英)に次ぎJTは世界第3位のグローバル企業に変身した。

 13年4~9月期決算によると、国内たばこ事業の売り上げは新商品の投入効果で前年同期比0.5%増の3523億円となったが、営業利益は原材料費の増加が重荷となり、同0.6%減の1533億円。一方、海外たばこ事業は円安効果で売上高は同21.6%増の5962億円、営業利益は同26.0%増の2178億円。売り上げ、利益とも国内事業を大きく上回った。

 他方、多角化の一環として進めてきた医薬、飲料、加工食品の3事業の営業利益は、合計でわずか39億円にとどまり、たばこに次いで経営を支える柱には育っていない。

 4つの工場閉鎖で国内たばこ市場に見切りをつけたJTは、新興国でのたばこ需要の伸びに活路を見いだそうとしている。

外国人投資家の注目集まる

 JTで注目されているのは、完全民営化に移行する際の株主の異動だ。

 JTは、旧日本専売公社が民営化されて1985年に誕生した。94年に政府保有株の一部が売り出され、東証1部に上場した。一時、政府が発行済み株式の50.01%を保有していたが、今年3月に東日本大震災の復興財源を確保するために一部売却し、現在の保有割合は33.35%。政府が依然、筆頭株主であることに変わりはない。

 しかし、政府の保有株の全株売却をにらんだ外国人投資家の動きが活発だ。外国人の株式保有割合は35.7%と、率では日本政府や国内投資家を上回る。今年のJTの株主総会では、かつて電源開発(Jパワー)の株買い占めで勇名をはせた英TCIが、「大幅増配やJTによる自己株式の取得」を要求した。結局この要求は否決されたが、外国人投資家のJTへの関心度は高まっている。

 政府が保有株をすべて売却して完全民営化した暁には、JTは外国人投資家にとって魅力的な投資対象になるだろう。外国人が筆頭株主になる可能性もゼロではない。

 業績好調下での果敢なリストラ、急速な海外展開を進めるJTが、名実ともにグローバル企業となる日は近いのか? 同社の動向に、国内外の投資家から注目が集まっている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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