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AVやデリヘルは「勝ち組」の仕事?風俗で働いても稼げない…最貧困女子の現実

文=小石川シンイチ
AVやデリヘルは「勝ち組」の仕事?風俗で働いても稼げない…最貧困女子の現実の画像1「Thinkstock」より

「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/4月11日号)は『あなたを待ち受ける貧困の罠』という特集を組んでいる。「病気、介護転職、失業…安定した生活は、たった一つのきっかけであっという間に崩れ去る。誰でも陥る可能性のある貧困の実態」に迫った特集だ。

 フランスの経済学者、トマ・ピケティが著した『21世紀の資本』(みすず書房)。このベストセラーをきっかけに、世界中で格差への注目が高まっている。現在の日本で問題視される格差は、大衆層が貧困化することによって生じているものだ。

 高齢者は生活に行き詰まる老後破綻、非正規労働者の増加などで若い世代の目の前にも貧困が待ち受けているのだ。

 しかし、最後の公的なセーフティネットである生活保護も、この4月から生活費を賄う生活扶助は引き下げられ(3年連続)、家賃に充てる住宅扶助と、暖房費などに充てる冬季加算も削減されるなど、ネットのすきまが広がっている。

 また今月は、生活に困った人を支援する「生活困窮者自立支援法」が施行され、生活保護を受ける前の段階で就労支援を行う窓口が全国の自治体に設置されるなど、「貧困」が注目キーワードになっているのだ。

女性の貧困

 さらに、出版界では「風俗嬢でもまったく稼げていない人がいる」「風俗の中にも大きな格差が生まれつつある」などと指摘した『最貧困女子』(鈴木大介/幻冬舎新書)がべストセラーとなり話題を呼んでいる。経済メディアとしても、「貧困」を取り上げるタイミングといえる。

「東洋経済」でも、『元AV女優・日経記者が歩く 女性の貧困最前線』という記事で、大学時代にAV出演後、日本経済新聞社に入社したという異色の経歴を持つ鈴木涼美のルポを掲載している。

 30歳のカオリは、3歳の娘と都内のアパートに2人暮らしのシングルマザー。昨年7月から生活保護を受給しているという。

 カオリのファースト風俗は6年前、1日3~8万円の収入を得るソープランドだった。当時は60万円近く月収があったが、交際し始めた男性と同棲生活を開始。結婚後は夫に怪しまれないよう、イメージクラブへ週3回程度出勤するだけになった。その後、妊娠が発覚し、妊婦専門のホテヘル店、出産後は母乳マニア向けの風俗店で働いた。母乳マニア向けの風俗店は週に3~4回、4時間の短時間勤務でも月に80万円近くを稼ぎ出した。

 ところが、夫の精神的なDVが深刻なものとなり離婚を決意し、母子支援センターへ避難した。

「ホテヘルと、1本だけ出演したアダルトビデオの収入で何とかやり繰りしていたが、体がだるく出勤できない日が増えた。比較的安定した収入が望めるソープに移り、出会い喫茶などにも出入りしたが、日々悪くなる体調や子供の面倒を見ながらの出勤に限界を感じ、生活保護を申請。現在も受給し続けている」(同記事より)

 風俗の世界で、ある程度の収入と安心して働ける環境が手に入るのは、あくまでもお店に出られる健康状態を維持することが前提だ。また容姿や愛嬌など「風俗や水商売にはその世界なりの求められるスペックがある」(同記事より)という。

 鈴木自身も「彼女たちの一人」として「稼ぐ資本としての身体」を持っていた時代には「寝る時間はいくらでもあったが、なぜかいつも眠くて体調が悪かった」という。

「私自身、20~21歳の頃は夜の世界で自分のスペックの高さをある程度謳歌した。しかし年を重ねることによる条件の絶対的悪化を思うと、女の一生の仕事としてとらえるにはあまりに残酷な気がして傷つく前に抜け出したかった。25歳を目の前にして逃げるように昼職に転じたのは、そういう残酷さにうすうす感づいたからだ」(同記事より)

 しかし、多くの風俗嬢は残酷な貧困地獄からは抜け出せないのだ。

風俗の中でも格差

「月刊宝島」(宝島社/4月号)では、『最新報告 ニッポンの貧困「地獄の現場」』という特集を組んでおり、『最貧困女子』著者の鈴木大介がセックスワークの格差を語る。

「セックスワークをする女性たちに『もっとまともなバイトがあるだろう』と言う人がいますけど、普通のAVやデリヘルで、それなりの収入を得られるのって、いまは『勝ち組』の仕事ということを理解していないですよね。(略)一昔前ならお金に不自由しなかった層が『まともなバイト』に進出していて、それに押し出されて『まともなバイト』をしていた人がセックスワークに流れた。当然、いままでのAV嬢や風俗嬢は、もっと底辺の仕事を受け入れるしかない。そうして一番弱い貧困層に、しわ寄せがいっているんです」

 セックスワークの格差、最貧困となれば「冗談抜きで命に関わる問題となる。かなり切迫した状況になってきた」と実感を語っている。

「21世紀の資本」ならぬ「21世紀の“稼ぐ資本”」も深刻なようだ。
(文=小石川シンイチ)

小石川シンイチ

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