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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

抗がん剤でがん悪性化との米国調査報告…多量の肉や砂糖摂取が原因と指摘

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士
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抗がん剤でがん悪性化との米国調査報告…多量の肉や砂糖摂取が原因と指摘の画像1「Thinkstock」より

 本連載前回記事で説明したように、身体が万全の状態であれば、ナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫システムが十分に反応して「がん細胞の元」を攻撃しますが、疲れやストレスがたまってしまうと免疫機能が不十分になり、「がん細胞の元」を見逃すことが多くなります。また、歳を重ねれば身体の機能も衰え、細胞をコピーする際にミスも多くなります。

 つまり、高齢になるほど、がんを発症するリスクは高まるのです。事実、国立がん研究センターがん対策情報センター発表の「年齢階級別のがん罹患率」(2011年全国推計値)を見ると、がん発症数は50歳から急激に高くなっていきます。

 長寿大国の日本で、がんの死亡者が増え続ける背景に、長寿が関係していることは否めません。

 とはいえ、がんの研究や治療方法が進歩しているにもかかわらず、死亡者数が年平均5000人も増え続け、毎年30万人以上もの方が亡くなるのはなぜでしょうか。単に高齢化が進んだという理由だけで、がん患者が増え、がんで亡くなる方が増えたことを説明することはできません。

 確かに、医療は目覚ましい進歩を遂げている部分もあります。しかし、がんをはじめとする慢性疾患に関しては、ほとんど進歩が見られないのが現状です。なにしろ、生活習慣病の患者数は一向に減っていないのです。

 がんに関しては、検査技術が進歩し、以前に比べ早期のがんを見つけられるようになりました。そのため一見、治療効果が上がってがんの死亡率が下がっているように映るデータもあります。しかし、これは単に、より早期のがんが発見できるようになり、がんを発見する数が増えたことや早期発見の分だけ生存期間が延びたため、がんの生存率が上がったかのように見えているからではないでしょうか。

 つまり、ある程度進んだがんに対する治療効果は、以前からあまり変わっていないというのが現状なのではないでしょうか。

 結局、日本でがんの死亡者数がそれほど減らない理由は、高齢化だけではないようです。

アメリカではがんの死亡者数が減っている

 日本に先駆け、アメリカでは1960年代からがんをはじめとする生活習慣病が増大していました。膨れ上がった医療費がアメリカ経済をひっ迫するようになり70年代初頭、政府により治療技術の改善を図るべく、巨額の予算が投じられました。ところが、効果はまったく上がらず、がんによる死亡者とがん罹患者は増え続けました。

 医療費の縮小に向けた何らかの打開策が待たれるなか、77年にあるレポートが発表されました。

 アメリカの上院栄養問題特別委員会が、世界中の慢性病と食事の関係について調査し、その結果をまとめた「マクガバン・レポート」です。このレポートでは、「アメリカ人の慢性病は肉食中心の誤った食生活がもたらした食原病であり、薬では治らない」とし、「大量の脂肪や砂糖、食塩を摂取していることが心臓病、がん、脳卒中などの病気の原因となっている」と指摘しています。

 当時、上院議員であり民主党の大統領候補だったジョージ・S・マクガバン氏が委員長を務めていたことからマクガバン・レポートの名で呼ばれるようになったのですが、レポートの発表後、マクガバン氏はアメリカの医学会や畜産業界から強い反発を受けたため、その後行われた大統領選挙で落選したといわれています。

 マクガバン氏のキャリアを阻みはしたものの、このレポートは治療重視だったアメリカの医療政策が方向転換を図るきっかけとなりました。

 そして90年に発表されたのが、アメリカの政府機関OTAによるレポートです。これは「Office of Technology Assessment(アメリカ議会技術評価局)」の略称で、 政策立案のために基礎調査をするアメリカ議会の調査部門を指します。

 同レポートでは、次のように従来の常識を覆すような治験結果が紹介されています。

・抗がん剤や多剤投与グループでは、「命にかかわる副作用」が7~10倍になる
・抗がん剤で腫瘍が縮んでも5~8カ月で再増殖する
・腫瘍を治療しないほうが長生きする

 その上で、次のように結論付けています。

・抗がん剤では患者は救えない
・抗がん剤の投与でがんは悪性化する

 そして、「公認のがん通常療法は根本的に間違っている」と断定しているのです。このOTAレポートを機に、アメリカではがん治療のあり方が大きく見直されるようになったといわれています。

 その後、食事療法、運動療法、音楽療法、免疫力を高める心理療法をはじめとする「代替療法」が国家を挙げて推奨されるようになり、この25年間でアメリカではがんによる死亡率は劇的に減少し、現在も減り続けているというのです。

 ちなみに、レポートの中で「公認のがん通常療法」と記されているのは、日本でもおなじみの「手術、放射線、抗がん剤」による治療法のことです。アメリカが通常療法から代替療法へ移行する一方で、日本ではいまだにこれらを「三大治療」「標準治療」と呼び、がん治療の主流としているのです。

 アメリカの平均寿命は先進国では最低といわれていますが、男女を合わせた平均寿命は78.84歳で(2013年調査)、多少なりとも年々延びています。また、程度の違いはあるにせよ、日本と同じく高齢化が進んでいます。

 三大治療にこだわり続ける日本と、それを見直したアメリカ。がんの死亡者数が増え続けている日本と、減少傾向にあるアメリカ。果たして、日本におけるがん治療の方向性は正しいといえるのでしょうか。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

―『薬剤師は抗がん剤を使わない』より抜粋―

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

『薬剤師は抗がん剤を使わない』 日本人の2人に1人はがんになるという時代において、抗がん剤は果たして有効なのか amazon_associate_logo.jpg

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