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日大、学費を払うアメフト学生選手に箝口令…「教育機関とは思えない」異常な実態

文=深笛義也/ライター
日大、学費を払うアメフト学生選手に箝口令…「教育機関とは思えない」異常な実態の画像1日大の田中英壽理事長 (写真:読売新聞/アフロ)

 関西学院大学とのアメリカンフットボールの定期戦で、日本大学の選手が悪質な反則プレイを行った問題で、日大アメフト部の父母会は近日中に選手全員で声明文を発表することになると27日、明らかにした。

 選手たちには大学側から箝口令が敷かれており、これまでは氏名を伏せてマスコミの取材に応えるなどイレギュラーな応対が見られるのみだった。今後、選手たちの声が公になる。声明は伝えられているところでは、内田正人前監督や井上奨前コーチの指示があったことを指摘し、反則プレイを余儀なくされた宮川泰介選手を守る内容になるという。

 箝口令が敷かれたことにこそ、今回の問題の本質があると語るのは、都内の大学関係者である。

「会社が不祥事を起こしたときに、社員に箝口令を敷くというのならわかりますよ。それだって本来は、社員は雇われているといっても自由な個人なので、おかしいですけど、会社の不利益は社員の不利益になることも多いので、仕方がないこともある。今回のアメフト問題なら、教職員に箝口令を敷くならわかりますが、学生である選手たちに敷くなんて、こんなおかしなことはないですよ。学生は雇われているわけじゃなくて、逆に学費を払っているわけですから。およそ、教育機関とは思えない対応です」

 日大の教育憲章を見ると、「得られる情報を基に論理的な思考、批判的な思考をすることができる」論理的・批判的思考力、「他者の意見を聴いて理解し、自分の考えを伝えることができる」コミュニケーション力、「集団のなかで連携しながら、協働者の力を引き出し、その活躍を支援することができる」リーダーシップ・協働力、「謙虚に自己を見つめ、振り返りを通じて自己を高めることができる」省察力などが、日大マインドとしてあげられている。

 箝口令を敷くという姿勢は、この教育理念からかけ離れていることは明白だ。むしろ声明を出すという選手たちの姿勢が、日大マインドに適っている。

「大塚吉兵衛学長が会見をしましたが、田中英壽理事長のほうが力を持っているんです。教育面が学長、経営面は理事長ということになりますが、金と人事を握っているのが田中理事長ですから。上意下達で、理事長選挙のときに協力した人物が重用されるという体制です。それで覚えめでたくナンバー2の常務理事に就いたのが内田前監督で、学内での力では学長より上でしょう。自由闊達な意見交換の上で行われるのが本来の大学運営ですから、それとはかけ離れているのが日大の実情です。田中理事長も相撲部の監督まで務めた方ですけど、運動部の実力者が大学のトップに立っているというのも、他の大学では聞いたことがありませんね。もちろん日本体育大学のような、体育系の大学なら別ですが」

猛反発を浴びた企画広報部

 23日の内田前監督と井上前コーチの会見の際には、司会を務めた企画広報部の米倉久邦氏が、「会見を打ち切ります!」などと連呼して世論の猛反発を招いた。

「日大の企画広報部は、取材依頼しても応えてくれないところです。大学で何か始めるというようなときは記者会見したりしますが、自ら発信するだけですから。こちらが聞きたいということに応えてはくれないんです。そういうところも、大学らしくないところですね」

 大学当局に自浄能力を求めるのは難しいようだ。地に堕ちてしまった日大ブランドの再生には、真摯な謝罪会見を行った宮川選手や、箝口令を破って声明を出す選手らに期待するしかないのだろうか。
(文=深笛義也/ライター)

深笛義也/ライター

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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