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小笠原泰「日本は大丈夫か」

東京地検特捜部、日産ゴーン逮捕で“期待外れの結果”も…脱税での起訴は困難か

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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東京地検特捜部、日産ゴーン逮捕で“期待外れの結果”も…脱税での起訴は困難かの画像1日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏(写真:ロイター/アフロ)

 10日、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏と前代表取締役のグレゴリー・ケリー氏が再逮捕され、東京地裁は同日、両氏に10日間の勾留を認める決定をした。先月19日に逮捕された際の容疑は「2011年3月期~15年3月期の有価証券報告書の虚偽記載」であったが、今回の再逮捕の容疑は「直近3年分の有価証券報告書の虚偽記載」。両氏はすでに起訴されており、否認が続けば証拠隠滅の恐れがあるとして、さらに勾留が延長される可能性もある。

 11月29日に開かれた東京地検の定例記者会見で、欧米メディアから「勾留が必要な根拠は何か」という、長期勾留を問題視する質問を受けた久木元次席検事は、次のように述べた。

「無用に長期間の身柄拘束をする意図はない」
「取り調べは全過程を録音・録画し、英語の通訳人を介して行われている」
「国にはそれぞれの歴史と文化があって制度があり、他国の制度が自国と違うからといって簡単に批判するのはいかがなものかと思う」

 久木氏の意図は正確にはわからないものの、最後の回答は、海外からは文化には国や地域による違いがあるのが当然であるのと同様に、人権解釈も国ごとに違って当たり前という発言と解釈される恐れがあるのではないか。

 本件について特捜部による立件に至る過程を見ると、興味深いことが浮かんでくる。ちなみに、以下は入手可能な資料をもとにした論理的な類推によるものである。

なぜ脱税での立件ではないのか?

 金融商品取引法違反の疑いで特捜部に逮捕されたゴーン氏が有価証券報告書に記載しなかった報酬額は、少なくとも120億円に上ると報じられている。このほかにも私的流用が判明しているという。立件対象になるとみられる2010~2017年度の8年間の虚偽記載容疑の総額は、計90億円近くになる可能性が出てきたとの報道もある。また、ゴーン氏の2017年度の報酬が約25億円に上る疑いがあるが、同年度の決算報告書で開示された金額は約7億3000万円だったという。つまり、実際の報酬と公表されている報酬には約18億円の差があるということだ。

 この差額が、実際の報酬として認められるべき差額として確かであれば、所得の隠蔽による所得税の脱税、つまり所得税法違反に該当する。フランスでの報道では脱税と扱われている。このような巨額の脱税行為を何年にもわたってできるくらい、日本の国税庁の目は節穴なのであろうか。いや、そのようなことはない。日本の国税当局がとても優秀であることを筆者は知っている。高額所得者はちゃんとマークされている。しかし、ゴーン氏をめぐっては過去に国税当局が動いた形跡はない。だとすれば、ゴーン氏に所得隠しの明確な証拠はなかったということになる。

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