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レオパレス21、アパートオーナー潰しの“反社会的”商法…契約解除を一方的に通告

文=編集部
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レオパレス21、アパートオーナー潰しの“反社会的”商法…契約解除を一方的に通告の画像1レオパレス21(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 かつてない規模の施工不良が発覚した賃貸アパート大手、レオパレス21(深山英世社長)の株価が大暴落している。

 2月8日の終値は前日より100円安い415円。ストップ安となった。連休明けにも急落が続く。12日はストップ安の335円。13日もストップ安の255円。3営業日連続のストップ安となった。14日も売りが止まらない。昨年来安値の224円をつけ、終値は225円(30円安)。翌15日の終値は224円。安値は218円である。株価は問題が発覚する前の1023円の高値(18年5月11日)から5分の1以下になった。同社株を見切る投資家が増えている。

 レオパレスは2月7日、建築基準法違反の疑いがあるアパートが新たに3都府県で1324棟見つかったと発表した。耐火水準を満たさなかったり、遮音性が基準値に達していなかった。18年5月にも界壁と呼ばれる屋根裏の部材がきちんと施工されていなかった問題が発覚したばかり。過去に施工した3万9085棟を調査していた。

 翌2月8日に18年4~12月期連結決算を発表した。最終損益が439億円の赤字(前年同期は128億円の黒字)だった。最終赤字は7年ぶり。過去に手掛けたアパートで施工不良が発覚し、補修工事の費用や今後の引っ越し代の負担を見込んだ引当金など434億円を特別損失として計上した。アパートの売却損なども発生し、特別損失は510億円に膨らんだ。売上高は前年同期比2%減の3763億円、営業利益は65%減の65億円だった。

 19年3月期通期では380億~400億円の最終赤字を見込む。最終赤字は8年ぶり。予想数値に幅があるのは期中に入居募集を再開できる戸数が不明なためだ。通期の売上高は5100~5160億円(従来予想は5530億円)、営業利益は245億円の黒字から75~105億円の黒字へと引き下げた。

 今回の施工不良問題で、最大1万4443人に引っ越しを求める異常事態になり、居住者やアパートのオーナーから怒りの声があがる。

サブリース契約を一方的に解除

 レオパレスは地主から賃貸アパートの建築を受注し、完成後に一括で借り上げて入居者に転貸する「サブリース」の大手業者である。賃貸管理戸数は57万戸で物件のオーナーに支払わなければならない賃料は月250億円にのぼる。

 アパートの施工不備を見つけたのは、2014年に発足したオーナー団体「LPオーナー会」だ。オーナーは入居者の有無にかかわらず、レオパレスから毎月一定の賃料を受け取ることができる。低いリスクで高い利回りが確保できるとして人気が出た。レオパレスが将来支払うべき「未払いリース料」は09年3月末で1兆4000億円超に達していた。

 だが、08年秋のリーマン・ショックがもたらした経済危機で情況が一変。10年3月期に790億円、11年3月期には403億円の巨額赤字を計上して経営危機へ一直線だ。

<工場の派遣社員や期間従業員の入居が多かった地方都市で、入居率が急低下し、レオパレスは受け取る家賃収入が支払う賃料を下回る「逆ざや」に陥った。苦境を脱するため、レオパレスは保証賃料の減額やサブリース契約の解約交渉に乗り出した。当時は契約で引き渡しから10年間は賃料を固定していたが「契約10年未満のオーナーにも(賃料を)2年ごと見直す契約に変えてもらう場合があった」(宮尾文也取締役)。一部の部署では減額交渉を「終了プロジェクト」と名付け、数値目標を定めていたといい、会社側もこの事実を認めている。「長期固定賃料という説明を信じ、億単位の借金を背負ったオーナーを、レオパレスは裏切った」(LPオーナー会の前田和彦代表)。こうしてオーナーの不満が施工不良の発覚につながった。〉(18年11月28日付日本経済新聞)

 11年、レオパレスはサブリース契約解除を一方的に通告する「終了プロジェクト」を強行したため、神戸のオーナーからサブリース契約解除無効の訴訟を起こされた。この時、オーナーは違法建築を裁判の争点とした。14年、オーナーたちが結集して、「LPオーナーの会」を設立して集団訴訟に発展していくのである。

アパート商法の闇を告発

 レオパレスの施工不良問題を追及してきたのが、経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)だった。第1弾は17年12月26日に放送された。「スクープ取材!マネーの『魔力』」と題し、レオパレスが賃料保証を守らずに一方的に減額していたことなど契約トラブルを伝えた。

 第2弾は18年5月29日。大問題に発展することになる違法建築疑惑を独自取材で突き止め報じた。同番組で自社のことが報じられると知ったレオパレスは、29日夕方に急遽会見を行い、施工の不備を認める一方で「意図的な手抜き工事はない」と主張した。第3弾は19年2月5日。前回の放送を受けて約束された全棟調査や補修工事が進んでいないと告発した。

 レオパレスは、賃料契約(サブリース契約)とアパート建設・施工の両面からオーナーを裏切ったが、それだけではすまなかった。フリーライターの村上力氏は2月11日付「日刊ゲンダイ」で次のように指摘している。

<巨額赤字増資を抱えたレオパレスは13年に320億円の公募増資を実施した。幹事会社はSMBC日興証券。問題は当時存在した違法建築や訴訟について投資家に(情報を)開示しなかったということです。経営陣がこれらの重要事実を知らなかったはずはない。一般投資家までだまそうとしたのかと言いたい>

創業社長は不正流用が発覚し引責辞任

 レオパレスの創業者は深山祐助氏(みやま・ゆうすけ、73)。長崎県壱岐市出身で拓殖大学商学部貿易学科卒業。1973年、不動産仲介業「ミヤマ」(現レオパレス)を設立。85年に敷金無料の都市型アパート「レオパレス21」事業を開始した。これが当たり、89年に株式店頭公開、2004年3月に東証1部上場を果たした。

 06年 5月、深山社長が入居者から徴収したサービス手数料のうち、計48億6500万円を社長個人名義での不動産投資や知人の会社の運転資金に充てるなどの不正流用が発覚した。深山社長は引責辞任し、後任社長に拓殖大学の後輩で副社長の大場富夫氏が就任した。その後、深山氏は08年から、親族と設立した不動産会社MDI(ミヤマデベロップメントコーポレーティドの略)の代表取締役会長を務めている。

 レオパレス現社長の深山英世氏は祐助氏の甥。長崎県壱岐市の出身。大学を中退して1977年にミヤマに入社。祐助氏が引責辞任したため、創業一族の英世氏が2010年、社長に就任した。

 18年、スルガ銀行の女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の不正融資が発覚した。シェアハウスを運営するスマートデイズ(18年5月に破産)の創立者である大地則幸氏はレオパレスの出身者。「サブリース+家賃保証」というスキームを使い、オーナーを安心させてシェアハウスを売りまくった。「かぼちゃの馬車」は、さしずめレオパレスのミニ版ということだ。

 サブリース商法の闇が次々とあぶり出されてきた。手抜き工事がどのような経緯で行われたのか。会社ぐるみだったのか、との厳しい追及が続く。レオパレスは、存亡の危機に立たされている。
(文=編集部)

【続報】

 レオパレスの株価は2月18日に大幅続落。前週末比25円安の199円まで売り込まれた。昨年来安値を更新した。金融機関によるレオパレス物件のオーナー向け融資が返済不能になる恐れがあるとして、金融庁が各金融機関の融資実態を一斉に調査すると伝わり、売り材料とされた。

 施工不良問題を受けた空室の増加でレオパレスからオーナーへの家賃保証が滞る可能性があるほか、2018年にはスルガ銀行による不適切融資やTATERUの融資資料改竄などが発覚しているため、レオパレスのアパートオーナーに対する不正融資への懸念も売りにつながった。

 法人顧客のレオパレス社宅利用の取りやめが相次いでいるとの報道も、見切り売りを加速させている。レオパレス株の200円割れは2012年6月以来、6年半ぶり。今回の問題発覚前の2月7日の終値(515円)から下落率は61%に達する。

【続報2】

 レオパレス21は3月18日、建築基準法違反の疑いがある施工不良が相次いで見つかった問題の原因などを調べる第三者委員会(弁護士3人で構成)の中間報告書を公表した。報告書は、「当時の社長である深山祐助氏のトップダウンの指示で、内部充填剤として発泡ウレタンを使用する方向性が示された」と明記した。

 施工業務の効率化、工期の短縮が目的で、ウレタンを使った物件は関東近辺の一部で施工されたという。これが「界壁」と呼ばれる屋根裏の壁などの施工不良につながったと指摘した。

 創業者である祐助氏は06年まで社長を務め、顧客から預かった約49億円の資金を私的に流用したとして引責辞任した人物だ。

 一連の施工不良は組織的・構造的な問題であり、意図的に行われた疑いがあるという。レオパレスの施工不良問題は、一部の部署や役職員が独断でやった問題ではなく、トップ以下会社ぐるみの不正が疑われる事態に発展した。

 中間報告は、法的適合性や品質・性能のチェック態勢の不備が「全体的な原因」だとし、法的問題を扱う部署や担当者が存在していなかったと指摘した。社長の直轄部署であった商品開発部門が「法令や品質を軽視していた」とも批判した。工期短縮の背景としては、物件への入居者数を増やすため、企業の人事異動などに合わせた物件の完成が求められていたことを挙げた。

 レオパレスは同日、すでに引っ越しなどを済ませた住人が425人にとどまっていると明らかにした。耐火性を満たさない天井の施工不良がある物件に住む7782人について率先して引っ越すよう促しているが、3月末までに引っ越しが終わるのは1121人で全体の14%に過ぎない。4月以降に480人が住み替える見通しだが、約8割の入居者の転居のメドは立っていない。

 調査委は5月下旬までに最終報告をまとめる。意図的な不正の有無や現経営陣の関与が焦点となる。もし、「組織ぐるみだった」と役員の責任が認定されると、現経営陣の総退陣もあり得る。

 3月18日に記者会見した会社側は「(部材の)仕様変更の手続きが取られていなかったことが最大の問題」とし、社内の確認が不十分だったと述べた。その上で「組織的に違法なものをつくっていた認識はない」と強調した。「(深山祐助氏が)違法性を認識した上で指示を行ったことはない」と繰り返し、違法性を否定した。会見には蘆田茂執行役が出席し、深山英世社長は姿を見せなかった。

 施工不良が相次ぐレオパレス21の物件を敬遠して、今春の引っ越しシーズンに借り手がつかない部屋が出ると予想されている。既に計上した特別損失(434億円)がさらに増える可能性があり、アパートの売却損が今後も発生することもあるだろう。業績に暗雲がたち込めるレオパレス21は氷河期に突入した。

BusinessJournal編集部

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