富家孝「危ない医療」

なぜ日本は「寝たきり老人」大国?安らかな自然死を許さない、過剰な延命治療が蔓延


 医者は病院で末期がんや脳疾患などで死んでいく人、延命治療の果てに死んでいく人しか見ていない。口から食べる力がなくなっているにもかかわらず、胃ろうをつけて栄養剤を投与し続ける。呼吸する力がなくなっているにもかかわらず、人工呼吸器で息をさせる。こんなことばかりしていては、人間が衰弱して自然に死んでいくことがどういうものなのか、わからなくなる。

いちばんいい死に方


「自然死とは、実態は“餓死”なんです。餓死という響きは悲惨に聞こえますが、死に際の餓死は一つも恐ろしくない」と、『大往生したけりゃ医療とかかわるな』(中村仁一/幻冬舎新書)にある。私は、この記述に同書執筆者と同じ医師として大いに共感した。

 中村氏は、医師としてのキャリアの最後に特別養護老人ホームの常勤医となり、高齢者を大勢看取ってきた。その体験があるので、自然死への見方は確かである。

 中村氏は、「自然死は病気ではありません。過度の延命治療は死に行く人のためにはなりません」と言い、「大往生するためのいちばんいい死に方は自然死です」と結論している。

 では、「自然死(老衰死)=餓死」とは、どのようなことを指すのだろうか。

 人間は誰しも死ぬ間際になると物を食べなくなり、水もほとんど飲まなくなる。そして、飲まず食わずの状態になってから1週間から10日で死んでいく。これは飲食しないから死ぬのではなく、死ぬから飲食しなくなるのであり、死ぬ前にはお腹も減らず、のども渇かないという。こうして飲まず食わずになると、人間はそれまで蓄えてきた体の中の栄養分や水分を使い果たして死んでいく。つまり、自然死は餓死である。

餓死


 餓死というと、言葉の響きからいって惨めに感じる。しかし、中村氏によれば、実際は本当に安らかな死に方であるという。その理由は次の3つだ。

(1)飢餓状態になると脳内にモルヒネのような物質が分泌されて幸せな気分になる。

(2)脱水状態になると意識レベルが下がりボンヤリとした状態になる。

(3)呼吸が十分にできなくなると体内が酸素不足し、その一方で体内に炭酸ガスが増える。酸素不足は脳内にモルヒネのような物質の分泌を引き起こし、炭酸ガスには麻酔作用がある。

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