有名漢方で41人死亡との報道、「漢方は安全」も「危険」も誤解? 薬剤師が解説

「Thinkstock」より

 ある週刊誌で、漢方薬についてセンセーショナルな記事が出た。漢方薬副作用の記事である。そのなかでも、小柴胡湯は2000年までに41人が死亡しているという。小柴胡湯の副作用は、間質性肺炎や肝機能障害であり主成分である黄芩によるものだと断言している。

 記事によると、この黄芩は医療用医薬品の約2割に配合されていることから、「漢方薬は危険」と結論づけている。この記事に多くの患者が不安を感じていることは事実だ。実際に筆者も、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などを通じて「漢方薬を飲んでいるが、続けても大丈夫か?」などと相談を受けている。

 漢方薬は体に優しく安全であると考える人も多いようだが、それは誤った認識だ。また、効果がわからないにもかかわらず、漫然と服用を続けるのも間違っている。その週刊誌が主張する「漢方薬は危険」という点には、諸手を挙げての賛成はできないが、記事中で漢方の処方の仕方について触れ、正しい処方がなされているかを疑問視している点は、もっともな指摘だと思う。漢方の処方は、効能効果だけでは決めることができないのだ。

 漢方薬が効かないと言いながら服用を続けている患者は、数多くいる。医師に伝えても、「漢方薬はゆっくり体質から改善するので、もう少し続けてください」などと言われているケースが多い。薬が効かないという患者の訴えを聞いたとしても、薬剤師から医師に対して「効果がないから処方を変更してはどうか」などとは言えない。仮に、そのようなことを言えば「効果があるかないかを判断するのは医師だ」と激怒されることは間違いない。

 もちろん、ほかの薬との飲み合わせや副作用の観点から医師に情報提供した際は、医師は処方変更などの適切な対応をする。しかし、「現在、処方されている漢方薬では効果が見込めないので処方変更してはどうか」と言うのは難しい。

 なぜなら、漢方処方については経験値の低い医師がいるため、何をもって効かないと判断するのかが不確実なためだ。しかし、効果がないのに漫然と長期にわたって服用しても意味がない。多くの場合、その漢方薬に効果がないわけではなく、患者の体質に合っていないから効果を発揮しないのだ。体質に合った漢方薬を服用すれば、症状の緩和はもちろん、身体に本来備わっている自然治癒力を高めることも期待できる。

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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