1点につき100万円、合格は寄付金次第…医学部入試、裏口入学と男女比調整が常態化の理由

東京医科大学本部(「Wikipedia」より/Southerncity)

 東京医科大学における裏口入学や事実上の女子学生への一律減点が発覚したことで、大学医学部入試をめぐる問題がクローズアップされている。そこで今回は、美容外科医でハイクラス家庭教師MEDUCATEを運営する細井龍氏に話を聞いた。

――東京医科大学以外でも、医学部への裏口入学は行われているのですか。

細井 多くの大学の医学部で、裏口入学は行われているでしょう。ただ、裏口入学の定義があいまいですが、筆記試験である一次試験で加点することは裏口と断定してよいと思います。東京医大で問題になっているのは二次試験での点数調整ですが、これが裏口や女性差別に該当するのかどうか。

 医師の感覚では、一次試験で一定の学力という担保を得たうえでの裁量は、大学側にある程度置かれてもよいのかなという印象はあります。医学部の入試は、一次試験で医師国家試験に合格できる最低限の学力があるかどうかをみて、二次試験では小論文と適性試験と面接によって医師になる適性があるかを判断する“総合試験”です。かりに一次試験の点数が高くてもコミュニケーション能力や自己管理能力に欠けていれば、医師の資質がないと判断されるでしょう。

 要するに、頭が良くても、患者さんから信頼感を得られる立ち居振る舞いができなれば医師の仕事ができないと大学側が総合的に判断するわけです。

――東京医大が行った小論文での点数調整をどう見ていますか。

細井 東京医大が一次試験で特定の受験者に加点をしたことは明白なアウトですが、二次試験での加点に関しては、女性を差別するという意識はないでしょう。今年の受験で10~20年後の医療労働人口が決定するわけです。統計学上、このまま女子学生を増やし続けると10~20年後に医師不足が顕著になるという状況を想定したうえで、東京医大は男女調整を行ったのだと思います。世間から女性差別ととらえられることは、仕方のないことだと思います。しかし、通常、どの医大でも医師の適正な男女比を念頭に置いて、一次試験は平等に採点して、二次試験では個々の受験生の適性、男女比率を鑑みて選別していることは、医師として想像がつきます。

寄付金の実態

――裏口入学の謝礼金は、どのように授受されているのですか。

細井 寄付金というかたちで大学に納入するのが通例だと考えます。一方、間にブローカーとして人が挟まる場合は、そのブローカーにも金銭譲受があることが推察されます。個人的に大学関係者とのつながりがある場合は、個人間の金銭のやり取りがあっても不思議ではないです。

――寄付金の相場はどのぐらいですか?

細井 相場は決まっていません。金額はその年度次第です。合格ボーダーラインに何人いるかで、1点につき50万円だったり、100万円だったりと。それから寄付金の予算を組んでいる場合、ボーダーラインに10人いるのなら予算額を10等分して金額を設定しているとも考えられます。ボーダーラインにいる受験生には他の大学に合格している人も多いので、どちらの場合も大学側は「寄付金に協力していただければ入学の手続きに入れますが、いかがですか?」と投げかけをしているのです。

――大学関係者と受験生の保護者を仲介するのは、どのような人でしょうか。

細井 医学部専門予備校が裏口入学を斡旋しているという話は昔からあります。高額な月謝はそれを裏付けるものともとらえられますね。国会議員秘書が仲介していると聞いたことがあります。彼らは豊富な人脈を持っていて、僕も何度か食事をしたことがありますが、「会社を上場したければ僕に言ってくれ」などと政治力を背景にした相談を促しています。そのなかに裏口入学の案件も含まれているのでしょう。

 今回の東京医大の裏口入学では元医療コンサルティング会社の役員が仲介しましたが、医療コンサルタントなら大学病院関係者とのパイプに加えて、医療法人理事長とのネットワークも持っている。知り合いの理事長の子供が医学部を目指しているという情報を耳にしたら、「大学に話を通しましょうか?」と打診する場合もあるではないでしょうか。

――裏口入学が行われやすい大学には、何か特徴があるのでしょうか。

細井 推薦入学の多い大学では、裏口入学が行われやすいといわれています。推薦入学には一次試験すらなく、学校の成績、小論文、面接、それから総合試験と呼ばれる適性試験が行われますが、どの試験も客観的な基準に基づく採点は難しいです。それから推薦入学では筆記試験の問題が非常に簡単で、得点差がつかないケースが多いのですが、これはあくまで「筆記試験を行っていますよ」という体面を保つためだけに行っているからです。

 つまり得点差をつけられないので、小論文や面接などで主観的に差をつける仕組みにして、入学者をコントロールできるようにしているのです。とくに偏差値の低い私立大学は20~30名の推薦枠を設けているので、寄付金や裏口入学の温床があるととらえられても仕方がありません。

 それから地方の偏差値が低い一部の私立医科単科大学でも、なんらかの調整が行われているといわれています。地方の医師不足を背景に地域枠を設けた医学部も、寄付金を条件にした入学が行われている可能性があります。地域枠は、その地域で一定期間働くことを条件に学費を免除したりする“奴隷制度”のような仕組みになっていて、多少学力が低くても医師国家試験に合格できさえすれば、人材を地域にロックして、医師として稼働させることができます。
(取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト)

小野貴史/経済ジャーナリスト

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表
著書「経営者5千人のインタビューでわかった成功する会社の新原則」

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