篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

クラシック・コンサート、音楽ホールの“利用料金”の恐ろしい話

「Getty Images」より

 僕は、海を見に行くのが好きです。ちょっと海を見たくなると、クルマに乗って葉山御用邸のある一色海岸に出かけるのですが、毎回、納得できないことがあります。

 高速道路を下りてすぐにトンネルがあるのですが、このトンネルが含まれたたった2キロの有料道路が、1970年開通の逗葉新道。ここを通らない方法もあるのですが、そうすると一旦、逗子市内に入る道しかなく、時間もかかります。そもそも逗子市内の交通渋滞を緩和する効果も狙って、この道路がつくられたのです。

 1日の通行量は1万1000台を超え、年間収入も約4億2000万円でほぼ推移している逗葉新道は、全国でも有数の収益率だそうです。そのため、今も一般車の通行料金100円という低価格に抑えることができるのだと思いますが、こんな駄菓子のような金額なら、撤廃してほしいとも思います。こんなトンネルは日本中どこにでもありますし、もちろん多くは無料です。しかし、逗葉新道は建設省(現国土交通省)ではなく、神奈川県道路公社がつくりました。そこにからくりがあるようです。日本には結構、こういう有料道路があり、各地でドライバーをイライラとさせていますが、それぞれの道路ができた当時は、本当にありがたく思われていたはずです。

公共音楽ホールの不可思議な料金設定

 実は、こんな道路と同じように駄菓子屋のお菓子のような料金設定が、日本の公共音楽ホールにもあるのです。

 たとえば、オーケストラコンサートを行うとします。まずは、公共ホールを使用するのが一般的です。公共ホールは、文化振興目的だけでなく、成人式、県市町村の行事をはじめ各種イベントにも使用されることもあり、公共自治体の年間予算が組まれているために、安価で借りられる点が大きな魅力です。そして、意外に思われるかもしれませんが、日本の多くの公共ホールは、音楽の本場、欧米のホールよりも音響や設備も優れていることが多いのです。

 ホールの賃貸料は午前、午後、夜の3区分があり、しかも平日は安く設定しています。かつ、入場料無料と有料では、賃貸料を変えることも一般的に行われています。入場料金の金額に応じて料金が変わることも多いのですが、非営利目的の使用は、地元住民への貢献度も高いと考えられ、安く貸し出される仕組みです。

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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