ZOZO、資金難示す材料も…前澤社長所有分の同社株式9割が銀行担保に

ZOZO前澤友作社長(AFP/アフロ)

 ZOZO前澤友作社長の言葉を借りるなら、これも「クソ記事」ということになるのかもしれない。前澤氏はツイッターで「人生の肥料はクソ記事」と言い放ったからだ。

 アパレル通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するZOZOの2019年3月期連結決算の売上高は、前期比20.3%増の1184億円と増収だったが、営業利益は同21.5%減の256億円、純利益は同20.7%減の159億円と上場以来初の減益となった。年間配当は24円とし、前期(29円)から5円減らした。

 18年4月に発表した初の中期経営計画で、前澤は「10年以内に時価総額5兆円」「グローバルアパレルトップ10入り」とぶち上げた。年間2~3割伸ばしてきた商品取扱高を21年3月期に18年3月期比2.6倍の7150億円にするとした。

 この目標に向けて新機軸を打ち出したが、ことごとく不発に終わった。

 18年1月に始めたプライベートブランド(PB)事業が足を引っ張った。全身を採寸できる「ゾゾスーツ」を無料で配り、試着なしでぴったりの服を届けられることを切り札に販売拡大につなげる計算だった。

 無料で配るゾゾスーツは話題を呼んだが、採寸結果が正確ではないという批判が出たほか、計測の煩わしさや予約から配送まで時間を要したことから、ゾゾスーツが届いてもPB商品を注文する人は少なかった。19年3月期にPB部門は200億円の売上げを見込んでいたが、結果は27億円にとどまった。

 中期経営計画では21年3月期にPB事業を2000億円に伸ばして第2の収益の柱とする超強気の目標を掲げたが、この計画は1年で撤回。海外向けPBからは撤退を決め、ドイツや米国の関連子会社の評価損を計上した。

有料会員向け割引サービスは優良ブランドの離反を招く

 18年12月に始めた有料会員向け割引サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」も失敗した。月額500円か年額3000円を支払う有料会員になると、ゾゾタウン上での商品購入金額から10%が割引される。割引分はZOZO側が負担する。

 ゾゾタウンにおいて常時1割引で買えるという価格政策に、「ブランド価値が毀損する」と判断したオンワードホールディングスやミキハウスなどがゾゾタウンから相次いで撤退した。

 順調に伸びてきたゾゾタウンへの出店ショップ数は2019年3月末現在で1245店。昨年12月末時点と比べて10店減少した。ZOZOは出店企業の離反を防ぐため、4月25日で入会受け付けを停止。5月30日にサービスを終了する。

個人所有のZOZO株の87%を銀行へ担保提供

 資金難を示す懸念材料が出てきた。2月12日と22日、前澤氏は関東財務局に大量保有報告書を提出した。それによると、前澤氏個人が所有するZOZO株式の87%が、国内外の金融機関に担保として差し出されていた。担保提供先は三井住友銀行、野村信託銀行、みずほ銀行など7行だ。

 鳴り物入りで始めたPB事業は、スーツの発送費を回収することができなかった。さらに、利用者の支払いが最大2カ月後となる決済サービス「ツケ払い」を始めて、販売代金の回収期間が長期化。売掛金が増加し、18年末の現預金は82億円と18年3月末から7割近く減少した。

 金融機関は、前澤氏に保有株式を担保として差し出すことを求めたのだろうか。

 3月29日、三井住友銀行など3行と150億円を上限に借り入れができるコミットメントライン(融資枠)契約を結んだ。三井住友のほか千葉銀行と京葉銀行が参加。これにより運転資金を確保し、19年3月末の現預金の残高は216億円と持ち直した。

 ZOZOは18年5月に三井住友から240億円を借り入れている。同月、前澤社長から600万株を自社株買いで取得した。取得額は250億円に上った。1年もたたないうちに、こうした窮状に陥るなどとは、前澤氏は夢想だにしなかったことだろう。

株価上昇大作戦に市場は冷やか

 前澤氏は株価を引き上げるコツを心得ている。グローバルアパレルTOP10入り目標、PBゾゾブランドの10万着無料配布、さらにプロ野球への参入を表明するなど、話題づくりに長けている。知名度は、いつの間にか全国区となった。

 プロ野球への参入を表明した翌日(18年7月18日)のスタートトゥデイ(現ZOZO)の株価は、4875円の高値を付け、時価総額は1兆5192円と1兆5000億円を超えた。前澤氏は株式37.9%(18年3月31日現在)を保有しており、この時の株価で計算すると、同氏の保有株式の時価総額は5762億円となった。

 昨年9月には月周回旅行計画をぶち上げた。さらに今年1月上旬に前澤氏がツイッター上で、個人資産1億円を投じて100万円を100人に現金でプレゼントするキャンペーンを実施した。

 しかし、市場は冷やかだ。19年2月8日、年初来安値の1621円に沈んだ。株価は昨年夏の高値に比べて5割以上安い。半年で時価総額は1兆円が消し飛んだ計算だ。

 ZOZOの20年3月期の売上高は、前期比14.9%増の1360億円、営業利益は同24.7%増の320億円、純利益は同40.8%増の225億円と、超強気の見通しを立てている。 

 新しい株価上昇の起爆剤として打ち出したのが、10月に開催するゴルフ「ZOZOチャンピオンシップ」だ。賞金総額975万ドル(約10億9200万円)、優勝賞金は175万ドル(約1億9600万円)。日本で開催されるゴルフ大会では史上最高額となる。

 同大会には、スーパースターのタイガー・ウッズが参戦する。“ウッズ効果”で、失った信頼をどこまで取り戻せるか。

 前澤氏は停止していたツイッターの再開を4月25日に発表した。「今後のリスク要因」(アパレル業界担当のアナリスト)と見る向きもあり、連休明け後の株価の10%安につながった、という辛口の指摘もある。

 次は5月13日、「アルバイト2000人、時給1300円、ボーナス付き」で新規雇用すると発表したところ、「応募が殺到。わずか2日後の5月15日正午で募集を締め切った」そうだ。前澤氏は14日、ツイッターで締切りを表明。「(応募者は)全員面接させていただきます」と述べた。ただ、応募総数は公表していない。

「バイト改革」と銘打ち、千葉、茨城両県の物流センターで商品発送作業などをするバイトを新規に採用。週4日以上働く既存のバイトの時給も6月から300円増の1300円に上げることにした。成果などで一定の条件を満たせば、月最大1万円のボーナスも支給される。

 かつての現金100万円プレゼントや今回の時給3割引き上げなど、カネにまつわる話題が多いところが、前澤氏らしいといえるのかもしれない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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