葬儀業界における消費者不満が顕在化している。燦ホールディングスが首都圏・近畿圏の40~70代で喪主あるいは葬儀を執り行った経験のある男女1,000名を対象に実施した「第6回ライフエンディングに関する意識調査」(実施期間:2025年3月3日~8日)では、葬儀に関して「事前に知っておけばよかった」と感じている人が64.4%にのぼり、後悔の最多理由は6年連続で「適正価格が分からなかったこと」(45.7%)だった。

この結果は、葬儀業界の価格設定がまだ十分に透明化されていない実態を反映している。葬儀は人生の最終章を締めくくる重要なイベントでありながら、価格が分かりにくく、比較検討が困難なため、葬儀後に後悔を抱えるケースが多いことが浮き彫りになった。
葬儀社選定の実態と生前準備の重要性
同調査によると、葬儀社を探し始めたタイミングは「家族が亡くなってから」が63.9%を占める一方で、約4割(36.1%)は生前に葬儀社を検討していることが分かった。生前準備として葬儀社を探す理由は、「葬儀を執り行う可能性があったため」や「故人の終活の一環」といったものが多い。
葬儀社の選択基準としては、約45.7%が「立地(近所や駅近など)」を重視し、次いで「費用の安さ」が大きな要素となっている。これは、利用者が利便性とコストを優先している実態を示しているが、逆に内容面での納得感やサービスの質への関心は相対的に低い状況だ。
一方で、葬儀を「家族が亡くなった後」に初めて探し始める場合、病院側からの早急な搬送の要請や斎場・火葬場の予約制限などにより、時間的余裕なく葬儀社を選ぶ必要が生じる。結果として比較検討が不十分になり、後悔やトラブルに発展しやすいリスクが高まる。
葬儀以外の後悔も多数 相続や遺品整理への知識不足など
葬儀に関する後悔は適正価格だけでなく、「相続について」(19.7%)や「お墓・霊園・納骨堂の選択」、「遺品整理の方法」などの終活関連知識の不足も挙げられている。特に相続は「まだ元気だから」などの理由で先送りされやすく、遺言書の有無や財産分割、名義変更、相続税の申告期限など知っておきたい事項が多く存在し、事前準備がないまま亡くなると家族に大きな負担やトラブルをもたらすケースも少なくない。
こうした課題は葬儀に留まらず、人生の最終段階を円滑に迎えるための総合的な「ライフエンディング」支援の重要性を示している。
専門家への早期相談が増加 葬儀社の役割が変化
さらに調査では、「葬儀について誰かに相談したことがある」と回答した人が83.8%にのぼり、そのうち約3人に1人(33.5%)が葬儀社に相談していることが明らかになった。相談相手の選択肢としては配偶者や兄弟姉妹を上回り、葬儀社の専門知識や経験を重視する傾向が強まっている。

この背景には、葬儀に関する情報不足や複雑化した手続きへの不安、葬儀社の信頼感向上があるとみられる。燦ホールディングスは、葬儀社が「安心と納得」を提供するパートナーであることを強調し、早期相談の重要性を呼びかけている。
燦ホールディングスの戦略と今後の展望
燦ホールディングス株式会社は、90年以上にわたり葬儀事業を展開し、全国に複数のグループ企業を持つ業界大手。価格透明化やサービスの見える化に積極的に取り組み、利用者の不安や疑問に応える体制を強化している。
同社の終活カウンセラーであり執行役員の鎌田真紀子氏は「多くの人が突然の別れに備える準備ができていないことで後悔を抱えている。事前の備えは心の安心と家族の負担軽減につながる」と語る。複数社への相談や比較検討を推奨し、単なる葬儀手配に留まらず、相続や遺品整理、墓地選びまでを含む総合的なライフエンディング支援サービスを展開しているという。
また、葬儀社の役割は単発的なサービス提供から、顧客のライフステージに寄り添った長期的な伴走型サービスへの転換が進んでおり、燦ホールディングスもその潮流の最先端を走っている。
今後は、デジタル化による情報提供の充実や若年層への早期啓発、相続関連企業との連携強化が期待される。葬儀業界の成長戦略としては、生前相談の増加と価格・サービスの透明性確保が欠かせない要素となり、燦ホールディングスの取り組みは業界全体のモデルケースとなる可能性が高い。







