【採用難時代の処方箋】「紹介会社に頼んでも人が来ない」企業が陥る罠──“丸投げ”から抜け出すための構造理解の画像1

空前の売り手市場が続く中、多くの企業が人材獲得に苦戦を強いられている。自社の人事リソースだけでは限界を感じ、人材紹介会社や採用代行(RPO)といった外部パートナーを活用するのは、もはや不可欠な選択となっている。しかし、少なくない企業から聞こえてくるのが「高いフィーを払って依頼しているのに、一向に成果が出ない」という嘆きだ。

この課題の根本原因はどこにあるのか。単なる「担当者との相性」や「コミュニケーション不足」なのだろうか。株式会社uloqoの代表取締役であり、これまで500社以上の採用支援を手掛けてきた関川懸介氏は、その本質を「関係性の問題ではなく、パートナーのビジネスモデルに対する“構造理解の不足”にある」と鋭く指摘する。

本稿では、同氏の知見をもとに、企業が陥りがちな外部パートナー活用の罠と、彼らを単に「使う」状態から「使いこなす」状態へと移行するための具体策を提示する。

紹介会社との付き合い方は「関係構築」から「構造理解」へ

多くの企業は、人材紹介会社に対して自社の魅力や求人要件を熱心に伝え、ミスマッチがあればフィードバックを返すという、いわゆる「関係構築」のアプローチをとっている。しかし、関川氏によれば「このアプローチだけでは成果は頭打ちになりやすい」という。なぜなら、紹介会社と一口に言っても、それぞれビジネスモデルやマッチングの構造が全く異なるからだ。構造を無視した一律のコミュニケーションは、徒労に終わる可能性が高い。

例えば、大手の人材紹介会社を思い浮かべてほしい。彼らの強みは、大規模なデータベースと独自のアルゴリズムによるマッチングにある。この「アルゴリズム型」の紹介会社に対して、担当者とどれだけ親密な関係を築いても、システム上で求職者とマッチしなければ紹介数は増えない。

ここで企業側が取るべきアクションは「自社求人のデータ分析」である。スカウトの返信率、書類通過率、辞退率といった指標を紹介会社別・ポジション別に分析し、どのフェーズに課題があるかを特定する。返信率が低ければ求人票のコピーや訴求軸を見直し、書類通過率が低ければ市場の要件定義とズレがないかを確認する。データに基づきPDCAを回すことで、「アルゴリズムが自社求人を優先的にレコメンドしやすい状態」を意図的に作り出すことが正解なのだ。

一方、両面型(企業と求職者を同一担当者がフォローする形態)や特定の領域に特化したブティック型の紹介会社は、「人的型」のビジネスモデルと言える。ここでは、コンサルタント個人の力量と動きが成果を大きく左右する。

人的型の紹介会社に対しては、単に求人票を渡すだけでなく、背景にある組織課題や入社後のキャリアパスといった「文脈情報」を丁寧に伝えることが求められる。また、ミスマッチ時のフィードバックも重要だ。「スキルが不足している」といった曖昧な返答ではなく、「〇〇の経験が3年以上ある人は優先度が高い」といった具体的な情報を提供する。コンサルタントに対して、「他社案件よりも自社の案件を優先して動くべき合理的な理由」を与えることが、彼らの行動を変え、成果に直結する。

採用代行(RPO)に潜む「戦略なき丸投げ」の罠

人材紹介会社と並び、近年急速に普及しているのが採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)だ。採用リソースが不足する企業にとって、RPOの稼働力は大きな魅力であり、その価値は高い。しかし、ここにも本質的な課題が潜んでいる。

現在、多くのRPO事業者は「業務代行」を主軸としたビジネスモデル、すなわちスカウト送信数や対応件数といったオペレーション量に応じた価格設計(BPOに近い構造)を採用している。これ自体は否定されるべきものではないが、企業側が「採用課題の解決」までを期待してしまうと、大きなギャップが生じる。

採用活動は本来、事業戦略と不可分である。求める人材の定義、労働市場における自社のポジショニング、競合環境の理解といった「戦略設計」が根底になければならない。にもかかわらず、多くの企業はこの設計が曖昧なまま、「手が足りないから任せる」という理由だけで採用代行を導入してしまう。

その結果、何が起きるか。「戦略なきオペレーション」が外部に委託されるだけで、本質的な課題は一向に解決されない。

パートナーを「使いこなす」ための5つのチェックリスト

では、企業はどのように外部パートナーと向き合うべきか。関川氏が強調するのは「役割と期待の明確化」である。

まずは自社の採用における課題を分解し、どこにボトルネックがあるのかを特定する。そのうえで、採用代行に求める役割を明確に定義するのだ。それは単なる「リソース補完」なのか、それとも自社にない「ノウハウの獲得」なのか、あるいは上流の「戦略設計支援」なのか。この整理ができていなければ、適切なパートナー選定すらままならない。

特に「ノウハウ獲得」を目的とする場合、知見の移転を前提とした関係構築が求められる。パートナーの意思決定や仮説を理解し、自社に再現性のある形で蓄積していく必要がある。自社の人事も意思決定の主体として関与し続けなければ、いつまで経っても外部依存のままであり、長期的な採用力の向上は見込めない。

関川氏は、外部パートナーを「使う」のではなく「使いこなす」ためのチェックリストとして、以下の5つを提示している。

  1. パートナーの役割を定義しているか
  2. 構造(アルゴリズム型/人的型)を理解しているか
  3. ボトルネックを特定しているか
  4. ノウハウを自社に蓄積しているか
  5. KPIを共有しているか

まとめ:自社の「採用力」を取り戻すために

人材獲得競争が激化する中、外部パートナーの存在は欠かせない。しかし、採用成果を最大化するためには、企業側が相手のビジネス構造を深く理解し、役割を定義し、改善を回し続ける「使いこなす」視点が問われている。

「紹介会社に頼んでも人が来ない」と嘆く前に、まずは身近なパートナーとの向き合い方、そして自社の採用戦略そのものをアップデートする時期に来ているのではないだろうか。