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エボラ出血熱、日本に思わぬ影響?対策関連銘柄上昇、富士フイルムは先進製薬企業へ

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富士フイルムホールディングス本社(「Wikipedia」より/Rs1421)
 富士フイルム(中嶋成博社長)は西アフリカを中心に広がっているエボラ出血熱患者への本格的投与に備え、グループ会社、富山化学工業(非上場、菅田益司社長)が開発した抗インフルエンザ薬「アビガン錠」(一般名ファビピラビル)を11月中旬から追加生産する。11月にギニア政府とフランス政府が実施する臨床試験でエボラ出血熱に対する効果が確認できれば、海外からアビガンを提供してほしいという要請が増えるとみて追加生産に踏み切る。現在2万人分の錠剤の在庫があるが、製剤前の原薬は30万人分を保有しており、「感染が拡大しても、十分な量を供給できる」としている。

 アビガン錠は富山大学医学部の白木公康教授と富山化学が共同開発し2014年3月、インフルエンザ治療薬として国内で承認を受けた。今年夏からインフルエンザウイルスと構造が似ているエボラ出血熱ウイルスに、この薬が有効ではないかと注目された。エボラ出血熱の治療薬としては未承認だが、ウイルスの増殖を防ぐ作用があり、エボラ出血熱にも効果があると期待されている。

 これまでにフランスとドイツ、スペイン、ノルウェーの4カ国で、承認前の緊急措置として4人のエボラ出血熱患者にアビガンが投与され、フランスとスペインで患者の症状が改善したと報告された。イギリスとドイツでは、エボラ出血熱に感染させたマウスにアビガンを投与すると、ウイルスが減少したという動物実験の結果が論文で発表されている。

 西アフリカで発生したエボラ出血熱の感染者は、世界で急速に拡大している。世界保健機関(WHO)の発表では感染者数は1万3000人を超え、死者の数は5000人を突破した。WHOは12月初旬までに、1週間あたりの新規感染者数が5000人から1万人に増える可能性があると指摘している。

 厚生労働省はエボラ出血熱の患者が国内で発生した場合の治療方法などを検討する初めての専門家会議を開き、患者に対して未承認薬の使用を容認する方針で一致した。塩崎恭久厚労相は10月28日、エボラ出血熱の国内対策としてアビガン錠を2万人分備蓄していることを明らかにした。

 フランスの病院でエボラ出血熱に感染した女性がアビガンを投与され治癒し、退院したという報道を受けて、富士フイルムの持ち株会社である富士フイルムホールディングス(HD、古森重隆会長兼CEO)の株価は10月7日、3800.0円と2008年以来の高値をつけた。

●富士フイルムHD、ヘルスケア事業成長に追い風

 アビガンのエボラ熱に対する効果が確認されれば、富士フイルムHDの株価が暴騰するといわれている。同社株価の7月末からの上昇率は21%。日経平均株価が2%安なので逆行高を続けている。07年11月1日の上場来高値、5710円を抜くとの強気の見方もある。英ケンブリッジ大学の研究チームは、アビガンがノロウイルス対策にも効果があるとする論文を発表したと、ロイター通信が伝えた。エボラだけでなくノロウイルスにも効果があるとすると、富士フイルムHDは一躍先端医薬品を主力商品として持つ会社に変身を遂げることになる。

 アビガンを開発した富山化学には富士フイルムHDが66%、大正製薬ホールディングス(上原明社長)が34%を出資。富山化学の製品は、海外は富士フイルム、国内は大正製薬と富山化学の共同出資会社、大正富山医薬品(非上場、大平明社長)が販売を担当する。このため大正製薬HDの株価も動意をみせている。

 富士フイルムは08年に1300億円で富山化学工業を買収し、医薬品に本格参入した。現在は医療機器と医薬品、化粧品・サプリメントがヘルスケア事業の3本柱だ。14年3月期のヘルスケア事業の売上高は、前年同期比13%増の3820億円、全売り上げの2割弱であり、15年3月期は4000億円を見込む。

 19年3月期にヘルスケア事業の売り上げを1兆円にする計画を立てているが、収益面が課題だ。ヘルスケア事業全体では営業黒字を維持しているが、X線画像診断装置や内視鏡など医療機器で利益をあげている。他方、研究開発費が先行する医薬品は営業赤字が続いている。14年4~9月期決算でも営業赤字だ。

 富士フイルムHDは今秋、新しい中期経営計画を公表する。ヘルスケア事業の売り上げ1兆円達成の具体的な道筋を示すとみられているが、医薬品に関しては大型M&A(合併・買収)が不可欠との指摘もある。そこで、米ワクチン受託製造会社、ケイロン・バイオセラピューティクス(テキサス州)を買収する。

●エボラ出血熱対策銘柄に「買い」集まる

 10月中旬、日経平均株価が急落する中、富士フイルムHD以外でもエボラ出血熱対策銘柄が買われた。NEC(遠藤信博社長)系の日本アビオニクス(東証2部、秋津勝彦社長)は、発熱者を発見するサーモグラフィーを空港に納入。水際での感染者隔離に有効な機器を製造している。日本エアーテック(平沢真也社長)は医療ベッド用の簡易隔離ブースを発売している。川本産業(東証2部、川本武社長)はガーゼ、脱脂綿など医療用衛生材料の最大手だ。興研(ジャスダック、村川勉社長)は防塵・防毒マスクの会社だが、感染症患者専用のマスクで脚光を浴びた。栄研化学(和田守史社長)は、長崎大学が同社の技術を用いてエボラ出血熱の新診断技術を開発中だ。

 注射用器具大手テルモ(新宅祐太郎社長)は、エボラ出血熱が注射針の使い回しで感染することから新規の需要があるといわれ、検査診断用手袋製造のオカモト(岡本良幸社長)、温度感知機器を医療機関向けに販売している日本光電(鈴木文雄社長)も賑わった。アゼアス(東証2部、沼尻俊一社長)は米国デュポンの医療用を含めた防護服を販売している。

 東証マザーズに上場しているペプチドリーム(窪田規一社長)は、エボラウイルスと同じようなウイルス形態のインフルエンザウイルスの治療薬を開発中だ。同社が持つ特殊ペプチド技術を用いれば、エボラ出血熱の治療薬開発も理論的には可能といわれている。創薬ベンチャーの何社かが、エボラ出血熱の治療薬関連で大化けする可能性もある。
(文=編集部)

※文中、上場市場を明示していない銘柄は、いずれも東証1部。