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高橋潤一郎「電機業界の深層から学ぶビジネス戦略」

優良老舗企業、なぜ突然「巻き込まれ」破綻?不可解な連鎖破綻、陰の人物浮上

文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役
優良老舗企業、なぜ突然「巻き込まれ」破綻?不可解な連鎖破綻、陰の人物浮上の画像1「ユタカ電機製作所 HP」より

 始まりはある小さなベンチャー企業の倒産だった。

 それはタッチパネルの加工を手がけるグラス・ワン・テクノロジー(東京都千代田区)という企業で、2月18日に実質的事業閉鎖状態となり、弁護士に事後処理が委任されていた。まだこの段階では、ベンチャーが志を果たせず技術を事業化できないまま経営破綻した、というレベルのものだった。しかしすでにこの時点で、水面下では業界内の老舗が連鎖破綻する事態となっていたのだ。そしてそれはすべて、本来の事業とはまったく別の金融操作によるものだった。

 時間軸とともに話を整理すると、グラス・ワンの破綻と同時に、電子部品の老舗であるスイッチング電源などの電源装置メーカー、ユタカ電機製作所(東京都品川区)が民事再生を申請、そして少し遅れて2月27日に電気フライヤーなど業務用厨房機器のメーカー、マッハ機器(東京都江東区)がやはり民事再生を申請した。ユタカ電機製作所には半世紀を超える業歴があり、従業員160人を抱え、かつては年間で100億円以上の売上高があった。もともとは新日鉄の子会社だった業界の老舗だ。

優良老舗企業、なぜ突然「巻き込まれ」破綻?不可解な連鎖破綻、陰の人物浮上の画像2

 ユタカは近年、経営規模は小さくなっていたが、それでも経営は安定的で黒字だった。不幸だったのは昨年親会社が代わったことだった。それまではベンチャーキャピタル(VC)の日本産業パートナーズが親会社だったが、14年にグラス・ワンの親会社であるグラス・ワン・ホールディングスの出資に代わっていた。そのグラス・ワン・グループの中核会社だったグラス・ワン・テクノロジーが経営破綻に追い込まれたことから、「グラス・ワン側は事前の相談もなく、勝手にユタカの民事再生を申請した」(ユタカ関係者)のだ。しかし話はこれだけでは終わらない。2月末になってマッハが経営破綻するが、なんとその筆頭債権者にユタカの名前があったのだ。

融通手形による資金繰り

 グラス・ワン・グループの実質オーナーだった人物は、VCというよりは金融ブローカー的な仕事をしており、経営が悪化していたマッハに、ユタカとの間でお互いの手形を振り出す融通手形による資金繰りの話を持ち込んでいた。しかしこの融通手形は一時的な資金回避でしかないので、当然ながら行き詰まる。こうしてユタカとマッハはともに民事再生という法的申請に至った。さらにその後、ユタカからはグラス・ワン側に対する貸し付けが行われていたことも判明している。ユタカの資産と名義を、親会社となったグラス・ワン・ホールディングスは利用していたのである。

 グラス・ワン・グループの中核事業会社であるグラス・ワン・テクノロジーの事業化が進まなかったという背景は確かにあった。また、マッハもM&Aの失敗という自身の問題を抱えていたのも確かだ。しかしユタカ自身には特に大きな問題はなく、ほかの2社の破綻に巻き込まれたかたちになったといえる。もう少し正確にいえば、グラス・ワン・グループの実質オーナーである金融ブローカーひとりに翻弄されたかたちとなった。

 ちなみにユタカは、民事再生申請から2カ月近くが経過した4月8日になって、コンデンサなど電子部品製造の上場大手、ニチコンの傘下に入り再出発することで同社と基本合意している。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

業界紙記者を経て2004年に電機業界の情報配信会社、クリアリーフ総研を創業。
雑誌などへの連載も。著書に『エレクトロニクス業界の動向とカラクリがよ~く
わかる本』(秀和システム)、『東芝』(出版文化社、共著)ほか
クリアリーフ総研

Twitter:@clearleafsoken

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