CDR(CO2除去)とは?種類・削減との違いと企業活用法を解説

CDR(CO2除去)のキービジュアル

冒頭

CDR(CO2除去)とは、人為的な活動によって大気中のCO2を取り除き、地中、土壌、森林、海洋、製品などに長期的に貯留する取り組みです。企業にとって重要なのは、CDRは排出削減の代わりではなく、削減しきれない残余排出を中和するための手段だと切り分けて考えることです。

この記事では、2026年8月1日時点で確認できる一次情報をもとに、CDRの定義、排出削減やCCSとの違い、主な技術、企業がCDRクレジットを検討する前の確認項目を整理します。

【この記事のポイント】

  • CDRは「大気中からCO2を取り除くこと」と「長期的に貯留すること」の両方が必要です。
  • 排出削減、回避、化石由来CO2のCCSは、単独ではCDRとは異なります。
  • 主な種類には、植林・再植林、土壌炭素、バイオ炭、BECCS、DACCS、風化促進、海洋CDRなどがあります。
  • SBTiのネットゼロ考え方では、まずバリューチェーン排出を大幅に削減し、残余排出を永久的な炭素除去で中和します。
  • 購入前には、追加性、永続性、MRV、二重計上防止、無効化、主張できる内容を確認します。

CDR(CO2除去)とは何ですか?

CDR(Carbon Dioxide Removal)は、人間の活動により大気中のCO2を除去し、長期的に貯留する技術・方法の総称です。

CDRの基本構造

IPCCはCDRを、人為的活動によって大気中のCO2を取り除き、地質・陸域・海洋の貯留層または製品に持続的に貯留するものと定義しています。ここで大事なのは、単にCO2を捕まえるだけではなく、「大気から取り除いたCO2が、どこに、どれくらいの期間、戻らずに保管されるのか」まで見る点です。

CDRは、日本語では「二酸化炭素除去」「CO2除去」と呼ばれます。資源エネルギー庁は、CDRを可能にする技術をネガティブエミッション技術(NETs)として説明し、自然プロセスを人為的に加速させる手法と、工学的プロセスに大別しています。

CDRに該当するかを判断するときは、次の3点を分けると理解しやすくなります。

判断軸CDRで必要なこと該当しない例
炭素の由来大気中または生物由来のCO2を除去する化石燃料由来の排ガスを回収するだけ
貯留地中、土壌、バイオ炭、製品などに長期保管する短期間で再放出される利用
人為性植林、設備、管理、処理など人の追加的活動がある自然に起きる森林や海洋の吸収をそのまま数える

つまり、CDRは「排出量を減らす施策」ではなく、「すでに大気中にあるCO2を引き戻す施策」です。温室効果ガス排出量の管理では、まず排出削減によって、排出量そのものを減らし、それでも残る排出に対してCDRを検討します。

CDRと排出削減・CCS・カーボンクレジットの違い

CDRは、排出削減、排出回避、CCS、カーボンクレジットと混同されやすいものの、気候上の効果と主張できる内容が異なります。

CDRと近い概念の違い

排出削減は、自社やバリューチェーンから出る温室効果ガスを減らす取り組みです。省エネ、再エネ調達、燃料転換、工程改善などが該当します。これはネットゼロ戦略の中心であり、CDRより先に実施すべきものです。

CCS(Carbon Capture and Storage)は、発電所や工場などの排ガスからCO2を回収し、地中などに貯留する技術です。IPCCの整理では、化石燃料利用から出るCO2にCCSを適用するだけでは、大気中のCO2を取り除いたことにはならないため、単独ではCDRではありません。一方、バイオマス由来CO2を回収・貯留するBECCSや、大気から直接CO2を回収して貯留するDACCSはCDRに含まれます。

カーボンクレジットは、削減量・吸収量・除去量を一定のルールで認証し、取引や無効化ができるようにした証書です。クレジットの中には排出削減・回避系も、除去系もあります。そのため、「カーボンクレジットを買った」だけではCDRを使ったとは言えません。除去系クレジットか、削減系クレジットかを確認する必要があります。

概念主な効果CDRとの関係企業の注意点
排出削減排出を発生前に減らすCDRより優先削減計画の代替にしない
排出回避本来出たはずの排出を避ける通常はCDRではない「除去」と表現しない
CCS排ガスCO2を回収・貯留する化石由来CO2のみではCDRではない炭素の由来を確認
CDR大気中CO2を取り除き貯留する残余排出の中和に使う貯留期間とMRVを確認
カーボンクレジット削減・吸収・除去を証書化する除去系ならCDRクレジットになり得る種別、登録簿、無効化を確認

企業の開示では、「削減しました」「オフセットしました」「除去しました」「ネットゼロを達成しました」は同じ意味ではありません。CDRを使う場合も、何トンを、どの方法で、どの登録簿で、いつ無効化したかを説明できる状態にしておくことが重要です。

CDRにはどんな種類がありますか?

CDRには自然を活用する方法と工学的な方法があり、コスト、貯留期間、供給量、検証のしやすさが大きく異なります。

CDRの主な種類

代表的なCDRには、植林・再植林、森林管理、土壌炭素貯留、バイオ炭、BECCS、DACCS、風化促進、海洋アルカリ化・海洋直接回収などがあります。どれが優れているかを一概に決めるのではなく、用途に合わせて「除去量の確からしさ」「貯留の期間」「供給可能量」「価格」「地域・社会への影響」を比較する必要があります。

種類仕組み貯留の特徴確認ポイント
植林・再植林樹木の成長でCO2を吸収生態系管理に左右される火災、伐採、土地権利、反転リスク
土壌炭素農地管理で土壌中の炭素を増やす測定と維持管理が重要ベースライン、サンプリング、管理継続
バイオ炭バイオマスを炭化し農地等に施用比較的長期に残りやすい原料、炭化条件、施用記録
BECCSバイオマス利用時のCO2を回収・貯留地中貯留なら長期化しやすいバイオマスの持続可能性、回収率、貯留サイト
DACCS大気から直接CO2を回収し地中貯留長期貯留が設計しやすいエネルギー源、コスト、設備稼働実績
風化促進岩石粉末などでCO2固定を促す鉱物化により長期化しやすい反応速度、測定方法、地域影響
海洋CDR海洋の吸収・回収を人為的に高める方法により差が大きい生態系影響、MRV、規制

CDR.fyiは、耐久性のあるCDR市場について、2026年8月1日時点で約4,942万tCO2の販売、約164万tCO2の納入、販売量に対する納入率3.3%を掲載しています。この数字は、CDR市場が拡大している一方で、実際に納入・無効化まで進んだ量はまだ限られることを示しています。

CDRの種類を選ぶときは、価格だけでなく「将来、本当にその除去量が存在し続けるか」を見ます。安価な自然系CDRは副次的便益が大きい一方、反転リスクや測定の難しさがあります。DACCSやBECCSなどは長期貯留を設計しやすい一方、コスト、エネルギー、設備稼働、供給量の制約があります。

なぜ企業のネットゼロ戦略でCDRが必要なのですか?

CDRは、企業がすべての排出を削減しきった後に残る残余排出を中和するために必要になります。

ネットゼロにおけるCDRの位置づけ

SBTiのCorporate Net-Zero Standardは、企業が2050年までに通常90%以上の排出削減を行い、削減しきれない残余排出を永久的な炭素除去と貯留で中和する考え方を示しています。ここでのポイントは、CDRを先に買って「削減したことにする」のではなく、削減の優先順位を保ったうえで残余排出に対応することです。

Oxford Principles for Net Zero Aligned Offsettingも、ネットゼロに近づくにつれて、オフセットの中身を排出削減・回避系から炭素除去へ移行し、さらに長期貯留型の除去を増やすことを推奨しています。これは、ネットゼロの最終状態では、排出が残る分だけ大気中から同量を取り除く必要があるためです。

企業がCDRを検討する場面は、主に次の3つです。

活用場面目的注意点
将来のネットゼロ準備残余排出を中和する調達先を早期に育てる削減計画と別枠で管理
BVCM自社バリューチェーン外の気候貢献を示す自社排出削減の達成とは分けて主張
製品・イベント等のオフセット残余排出をクレジットで相殺するISO 14068-1や環境省ガイドラインに沿った表現

日本でも、環境省は2024年3月にカーボン・オフセット指針第4版とカーボン・オフセットガイドラインVer.3.0を公表し、国際的なカーボンニュートラル定義やISO 14068-1の要件を参考にした見直しを行っています。CDRを使う場合も、クレジットの品質だけでなく、主張の仕方まで確認する必要があります。

CDRクレジットを購入する前に確認すべき品質項目

CDRクレジットは、除去量の算定、貯留期間、第三者検証、二重計上防止を確認してから購入すべきです。

CDRクレジットの品質確認

CDRは将来性のある領域ですが、まだ市場が成熟しているとは言えません。購入契約の段階では将来納入のオフテイクであり、実際の除去・発行・無効化が後年になるものもあります。企業が開示や稟議で使う場合は、購入量ではなく、納入済み・発行済み・無効化済みの状態を分けて管理してください。

最低限確認したい項目は次の通りです。

確認項目見るべき内容質問例
追加性クレジット収入がなければ実施されなかったか通常事業との差分は何か
永続性CO2がどのくらい戻らず保管されるか100年、数百年、千年以上のどれか
MRV測定・報告・検証が第三者に耐えるか方法論、検証機関、測定頻度は何か
反転リスク火災、土地利用変更、漏えい等で戻る可能性バッファ、保険、補填ルールはあるか
二重計上防止同じ除去量を複数者が主張しないか登録簿、シリアル番号、無効化証明はあるか
社会・環境影響土地、水、生物多様性、地域社会への影響セーフガードや苦情処理はあるか
納入リスク将来契約が実際に納入されるか納期、未達時対応、返金・代替条件は何か

とくに「購入済み」と「除去済み」は分けてください。CDR.fyiの方法論でも、販売はオフテイク、事前購入、事後クレジットを含み、納入は大気からCO2が除去・貯留された状態として整理されています。社内資料で購入量をそのまま削減実績のように見せると、後から説明が難しくなります。

企業はCDRをどう活用すべきですか?

企業はCDRを、排出削減計画、残余排出の見積もり、品質基準、開示ルールをそろえたうえで段階的に活用すべきです。

CDR活用の実務フロー

実務では、いきなり「どのCDRを買うか」から始めるより、先に自社の主張と用途を決める方が安全です。CDRクレジットは高価で供給量も限られるため、削減計画の穴埋めとして広く使うより、削減計画の穴埋めとして広く利用するのではなく、残余排出の将来的な中和や、BVCMとしての気候貢献など、目的を明確にしたうえで活用します。

おすすめの進め方は次の通りです。

  1. Scope1、Scope2、重要なScope3排出量を算定する。
  2. 2030年、2040年、2050年に向けた削減計画を作る。
  3. 削減しきれない残余排出の候補を特定する。
  4. CDRを使う目的を、ネットゼロ準備、BVCM、製品・イベントオフセットなどに分ける。
  5. 永続性、MRV、登録簿、無効化、開示文言の基準を定める。
  6. 小口で試験購入し、証憑と社内説明の流れを確認する。
  7. 長期契約を検討する場合は、納入リスクと未達時対応を契約に入れる。

社内稟議では、次のような表で整理すると、CDRを「雰囲気のよい環境施策」ではなく、リスク管理された調達案件として説明しやすくなります。

稟議項目記載すべき内容
目的残余排出の中和、BVCM、学習目的、顧客要請対応など
対象排出どの年度・どの範囲の排出に対応するか
CDR種別バイオ炭、DACCS、BECCS、植林等
数量購入量、納入予定量、無効化予定量を分ける
品質基準追加性、永続性、MRV、二重計上防止
証憑契約書、登録簿、シリアル番号、無効化証明
開示文言「削減」「除去」「オフセット」「貢献」の使い分け

Green Carbonのようにクレジット創出・調達支援に関わる企業へ相談する場合も、最初に「どの主張に使うのか」を伝えると、CDR、J-クレジット、海外VCM、削減系クレジットの選択肢を整理しやすくなります。削減と除去を混ぜずに管理することが、CDR活用の第一歩です。

出典・参考

よくある質問(FAQ)

Q. CDRとカーボンオフセットは同じですか?
A. 同じではありません。CDRは大気中のCO2を除去して貯留する活動です。カーボンオフセットは、残余排出をクレジットで相殺する使い方であり、そのクレジットには削減系、回避系、除去系があります。

Q. CCSはCDRに含まれますか?
A. 化石燃料由来の排ガスCO2を回収・貯留するCCSは、単独ではCDRではありません。大気由来またはバイオマス由来のCO2を回収し、長期貯留するDACCSやBECCSはCDRに含まれます。

Q. 企業はCDRを買えばネットゼロを主張できますか?
A. CDRを買うだけではネットゼロとは言えません。まずバリューチェーン排出を大幅に削減し、削減しきれない残余排出を高品質な炭素除去で中和し、算定範囲や証憑を開示する必要があります。

Q. CDRクレジットで最初に確認すべきことは何ですか?
A. 除去済みか、将来納入予定かを最初に確認してください。そのうえで、追加性、永続性、MRV、登録簿、無効化証明、二重計上防止、反転時の補填ルールを確認します。

Q. CDRは排出削減の代わりになりますか?
A. 代わりにはなりません。CDRは削減しきれない残余排出に対応するための手段です。省エネ、再エネ、燃料転換、工程改善などの排出削減を優先したうえで、CDRを補完的に使います。

著者:カーボンクレジットジャーナル編集部 監修:Green Carbon ESG・カーボンクレジット担当 利益相反開示:本記事は、カーボンクレジット創出・調達支援を行うGreen Carbonの知見をもとに制作しています。制度・市場情報は公的資料および公開情報を参照し、特定のクレジット購入を推奨するものではありません。