
「もしものとき、何をすればよいのか」
人生の最後に向き合う葬儀や終活について、漠然とした不安を抱えている方は多いはずです。
さらに葬儀業界は現在、少子高齢化や地域とのつながりの希薄化、さらには新型コロナウイルスの影響などさまざまな要因により、大きく変化しつつあります。
これまでの常識が通用しなくなった現代において、遺族は何に戸惑い、葬儀社はどう寄り添っているのでしょうか。
今回は、25年にわたり葬儀に携わり、NHK連続テレビ小説『おむすび』の撮影協力なども行った株式会社公益社大阪本社 セレモニーサービス部 担当次長馬渡氏に、葬儀業界の変化や終活の必要性についてお聞きしました。

一般葬はもはや一般的ではない?葬儀業界の変化とは
——葬儀の現場で、今と昔でニーズが変化していると感じることはありますか?
以前に比べ、「家族葬」という形で葬儀を済ませたい、と考えている方が増えています。
現在は第一声、「家族葬でお願いします」とおっしゃるご遺族の方が大半ですね。
そもそも、私が葬儀業界に入った25年ほど前には「家族葬」という言葉もありませんでした。
——実際には「家族葬」の定義がわからないご遺族の方もいるのではないかと思います。これまでの一般葬との具体的な違いはどこにあるのでしょうか?
「家族葬」に明確な定義はありませんが、まず、葬儀に集まる人数が圧倒的に違います。以前は、一般的な家庭の葬儀でも100人ほど集まるのが普通だったのですが、現在は10〜20人ほどで済ませる場合が多いです。
参列される方の人数が少なくなると、会場の大きさや食事の数など、グレードダウンできる点が増え、結果として以前の葬儀より金額面でも下がるケースがほとんどですね。
また、親戚の方々の参列が減っていると感じます。故人のごきょうだいなどが高齢で、ご自身だけでの参列が難しいためです。
以前は、こういった方々が葬儀に関する知識を豊富に持っていて、我々葬儀社が一から十まで説明せずとも葬儀の準備が進んでいくケースが多かったのですが、最近はそういった光景が少なくなっていると、身をもって実感します。
喪主の方が、正解がわからない状態で葬儀を進めなければならない、というイメージです。
——このように、葬儀の規模感が小さくなった要因はどこにあると考えていますか?
新型コロナウイルス感染症の流行も加速化の一因になっていますが、高齢化も大きな要因のひとつであると考えています。
先ほど、故人のごきょうだいが高齢で参列できないケースがあると話しましたが、これは亡くなる方自体がかなり高齢になってから亡くなられることが多いためです。
また、亡くなる年齢が高齢になることで、勤務した会社との縁が薄くなってしまい、会社関係者の参列がなくなるということも要因としてあります。
喪主の方も自分自身の会社関係者に葬儀のことを詳細にはお伝えしなくなっていますね。以前は、喪主の同僚の方が受付を担当するなど、葬儀への参列も仕事の一部と捉えていた会社もありました。
縁が薄くなってしまっているのは、会社関係者だけではありません。人間関係が希薄になり、地域や町内会の関係者の参列が減少していることも要因のひとつですね。

朝ドラの現場で感じる、時代の移り変わり
——馬渡さんは、NHK連続テレビ小説『おむすび』の葬儀のシーンで作法の指導を担当されましたよね。印象的だったことはありますか?
はい、橋本環奈さん演じる主人公の祖父役を松平健さんが演じており、そのお通夜や葬儀のシーンで取材協力や撮影の立ち会いを行いました。
打ち合わせの段階でスタッフの方に「法名(戒名)がおかしくないか」などの質問を受けるなど、細部へのこだわりを感じることが多かったですね。
そしてやはり、現在我々が多く担当する葬儀とは、異なる部分が多くあると感じました。
——時代背景としては平成の、阪神淡路大震災の少しあとですよね。
そうですね。比較的、新しい時代を取り扱った朝ドラではあるものの、時代設定は十数年前です。現在のような家族葬ではなく、「顔が広い人物が亡くなった際の、中規模程度の葬儀のイメージ」と伝えられました。
「そういえば十数年前まではこうだったな」と思い出しましたね。
お通夜が終わったあとのシーンでは、人が入れ替わり立ち替わり故人に会いにくるのですが、現在ではお通夜後にそのような様子はあまり見受けられません。
また、関西地方などでは現在、「香典辞退」のケースが増えてきました。お香典のやり取りのシーンなどにも、逆に新鮮さを感じました。
目の前の葬儀単価ではなく、未来の顧客を見据えたサポートを
——葬儀に対する考え方の変化を受けて、市場や葬儀社の動きにも変化はあるのでしょうか?
市場としては2040年が死亡者数のピークだといわれています。2040年に向けて葬儀の件数は増えていく一方、葬儀1件あたりの単価は下がってきています。葬儀社がビジネスとして経営を維持していくためには、限りある件数をどう確保していくかが課題になるのです。
そのため、家族葬をお手伝いできる、という部分を大きくプロモーションに取り入れている葬儀社が多いですね。とくに、ここ十数年で業界に参入してきた葬儀社は、Web広告での集客にも力を入れている印象です。
弊社も、家族葬をアピールするプロモーションのほか、イベントなどで認知を広げていく活動を行っています。
また、弊社は100年近い歴史があることで、宗教関連の方やお客様からのご紹介なども多いです。我々はこの部分をとても大事にしています。
葬儀の喪主の方、参列している方々も将来のお客様になりうると考えているため、1件あたりの単価をいかに上げるかよりも、誠心誠意寄り添って「次も頼みたい」「誰かにすすめたい」と感じていただけるようにお手伝いすることもプロモーションの一端になるのではと考えています。
——日々、そのような気持ちでお客様と向き合っている馬渡さんが、葬儀や事前相談の際に大切にしていることはありますか?
とにかく、細かい部分まで説明を欠かさないことです。
家族葬が増えたことで、自分自身が葬儀に参列したことがないという人が増えています。さらに、「なぜこれをするのか?」を当たり前に教えてくれる親戚の参列も減少していることで、葬儀社側がしっかり説明を行わないと金額や行動に納得感が得られないのです。
ただ葬儀をお手伝いするだけではなく、「なぜお布施にこれだけの金額を出さなければいけないのか」「お通夜と葬儀を別で行うのはなぜか」など、多くの方々が疑問に思う部分をしっかりと解消できる、コンサルタント的な役割も果たしていかなければと思っています。

終活は遺される家族のために
——最近は、「終活」という言葉の浸透も顕著になってきていると感じます。実際に葬儀社の目線から見て、終活をする方は増えているのでしょうか?
葬儀に関して生前に準備される方が劇的に増えている、という印象はありません。どちらかといえば、多くの方がイメージし行動している終活は、財産の整理や身の回りの断捨離、介護施設の検討などを指しているように感じます。
一方で、お墓に関する相談は増えていますね。以前はこちらからお墓についてお伺いすることが多かったのですが、最近はお客様の方からご相談いただくことが多いです。
自分自身のお墓をどうするかだけでなく、お墓の移転や墓じまいに関する相談も多く耳にするようになりました。
年代の傾向としては、60〜70代の方々の相談が多いです。自分自身が動けるうちに、という意識が高くなっているのでしょう。
——多くの方がいずれ意識することになる終活ですが、そもそも終活が必要な理由はどこにありますか?
やはり、「遺される方々のため」ですね。
葬儀ひとつとっても、参列者や葬儀の規模、祭壇に飾る写真など、事前に伝えられていないと判断に困ってしまうことが多いのです。実際に、葬儀の現場で喪主の方々が困惑する様子を多く目にします。
故人が本当にしたかったことが見えていないと、遺された方々が「本当にこれでよかったのか」と悩むことになってしまうケースもあるのです。
また、葬儀だけで終わりません。葬儀後も、相続など対処する項目が数多く存在します。
——終活をした場合とそうでない場合でどのような違いが出てくるのでしょうか?
まず、葬儀や相続などの、打ち合わせや手続きにかかる時間が違います。
たとえば葬儀では、亡くなられた直後の打ち合わせは平均して2時間半ほどかかるのですが、終活をしている方の場合、1時間かからずに打ち合わせが終了する場合もあります。
打ち合わせだけでなく、準備にかかる時間も大幅に短縮されることが多いです。
これによって、遺族の方々は故人とゆっくりと最後の時間を過ごしてお別れができますし、喪主の方々が葬儀に抱える不安や不満も少ない傾向にあります。
よりよい終活のため、葬儀社や故人・家族ができること
——故人だけでなく、遺族の方にもメリットが多い終活ですが、より世の中に普及するためには何が必要だと感じますか?
まず、終活は1人でやるには限界がある、という認識が広まることが必要だと感じます。
どうしても終活をする方は、身の回りの整理など、たった今、自分自身だけでできることばかりに目が向く印象があります。しかし、実際には葬儀や相続関連の手続きなど、故人以外の方がやることのほうが多くあるのです。
自分の死後に関わる誰かを巻き込んで、「引き継ぎをする」意識で終活を進めるのがよいですね。
今後、喪主を経験した方が「こういうことをしておけばよかった」「こんな終活をしてくれていて助かった」など、終活の重要性を発信できるようなイベントや終活カフェなどの場が、もっと認知されていくことも、終活普及の一助になると感じます。
——葬儀業界や終活市場が変化していくなか、公益社をはじめとする葬儀社はどういった役割を担っていくのでしょうか?
これまで葬儀社は、葬儀のお手伝い、サポートをすることが仕事でしたが、今後はその範囲がどんどん広がっていくのではないかと考えています。
実際、葬儀社は江戸時代に葬儀に使用する道具を貸し出すところから始まり、徐々に葬儀の手伝いや進行を担当するというふうに、役割を変化させてきました。現在は、徐々に葬儀に関わるコンサルタントや、作法や金額の理由をレクチャーするという役割も加わっていると感じます。
今後は、お墓や相続など葬儀後の分野のサポートも担っていくことが予想されますし、我々のグループではすでにそういった業務を専門に担当する会社も備えています。
時代の変化に合わせて、葬儀に関わるスタッフも、葬儀に関する知識だけではなく葬儀の前後に関する知識も持っておかなければなりません。
親戚や近所づきあい、宗教観などが変化し、葬儀や終活に関して迷いが多く生じるなか、多くの方々にとって「相談窓口」や「駆け込み寺」のような存在になれればと思っています。

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「もしものとき、何をすればよいのか」
その問いに、明確な正解はないかもしれません。
しかし、準備をしておくこと、信頼できる相手に相談することは、自分自身への安心をもたらします。また、「もしものとき」への不安を話し合い、備えることは、遺される方々への優しさにもつながるのではないでしょうか。
人生の終わりに寄り添うプロの視点から学び、できることから始めてみましょう。
※本稿はPR記事です。







