派閥、パワハラ…社内の“ボスザル”争いが、会社を滅ぼす?
元外資系部長、ユニクロ元マネージャーであり、現在『とくダネ!』(フジテレビ系)コメンテーターとしてもお馴染みの田中雅子氏。長年現場のマネジメントに携わり、数々の全社プロジェクトを成功させ、企業成長を支えてきた田中氏が、ビジネスパーソンが自らをリーダーに成長するためにやるべきことを指南する。
多くの日本企業が、今やグローバル企業として飛躍しようとしています。その中には国内工場を海外に移転したり、海外拠点を増やしたり、英語を公用化するなどの取り組みを進めている企業、本社と地方支社との温度差があり一体化できていない企業、地元と密着することで、グローバル化の大波をうまく乗り切る力強さと熱意を感じさせてくれる、地元に根差した企業などもあります。
ボスザル競争に明け暮れる暇はない
私がコンサルで訪問させていただく企業の経営者の方から、こんな話を聞きました。
「会社組織とは野生の生態系と同じで、猿の世界に例えるとよくわかります。弱体化している企業は、創業者という唯一のボスザルがいなくなって、社内という猿山の中で一生懸命、ボスザル候補が権力争いしている。だから社内闘争にあけくれて組織の力が弱くなってしまうんですよね……」
確かに、例えばオーナー家が社長を歴任した企業の場合、上場企業となりオーナー家からサラリーマン社長へと代わった途端に、社内のあらゆる人を巻き込んだ派閥闘争に火がついてしまうことがあると聞きます。当然、トップマネジメントに対する求心力や組織に対するロイヤルティもなくなるし、組織はガタガタに。あげくの果てには、いい人材を競合企業に引き抜かれてしまうことも。そういった負の連鎖が、今の日本企業の組織の中では起きているのではないかと思います。
しかも、ボスザル争いの中で、実力のある人がボスになるのではなくて、声のでかい、パワハラ系の強引な人や、派閥がでかいところの人がボスになってしまうらしいです。社長になっても、その下の人が現場からの叩き上げだったりすると、「なんだ、現場を知らないんじゃないか」ということになって、結果として社長が弱くなってしまうこともあるそうです。
でも、今は社内闘争などに注力できる余裕は、企業にはないのではないでしょうか?
グローバル経済の中で全世界の競争相手と戦っていかなくてはいけない時に、組織としてのチーム力が弱かったら、完璧に負けてしまうのではないでしょうか?
当事者意識がない「見ザル」「聞かザル」
企業には、グローバルな競争相手と戦うための、トップの経営方針とか中長期計画とかが末端の現場まで浸透していない例が散見されます。中には、
「海外比率をどうしていくのか?」
「いつまでに達成するのか?」
といった経営計画ですらも浸透していない。特に企業規模が大きくなると、危機感が薄れているのが目立ちます。
「いつかは、ウチも海外進出するんだろうなぁ……」