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「倒産を先送りするだけじゃないのか」と金融機関は反発したが、金融相だった亀井静香・国民新党代表(当時)の鶴の一声で決まった。同法は2009年12月4日に施行され、11年3月末までの時限立法だったが、期限が2回延長され、いよいよ13年3月末をもって終了する。
通常、借金返済が滞ると銀行は貸金を不良債権とみなし、一定程度の損失を引き当てる必要があるが、同法では正常先のまま据え置くことを認めた。だから、経営が悪化しても融資は維持され、企業が倒産するのを防ぐために一定の効果があった。亀井金融相の置き土産である金融モラトリアム法によって多くの中小企業が救われたのは事実である。
民間信用調査会社の東京商工リサーチがまとめた12年度上半期(4~9月)の全国企業倒産件数(負債額1000万円以上)は、前年同期比5.7%減の6051件。上半期としては4年連続の減少で過去20年間で最少となった。負債総額も8.4%減の1兆8084億円と同期間で最も少なかった。商工リサーチは 「中小企業円滑化法などの政策効果で倒産を回避した企業が多い」と分析している。
金融モラトリアム法に、どのくらいのカネがつぎ込まれたのだろうか? 金融庁がまとめた12年3月末時点の「貸付条件の変更等の実施状況」によると、それがハンパな金額でなことが分かる。全国1521金融機関に対する申し込み件数(累計)は313万3742件で、条件変更が実行されたのは289万3387件。条件を見直した債権の合計は79兆7501億円にのぼる。凄まじい金額である。このほか、住宅ローンの返済条件を見直した個人が20万4260人で、見直し額は3兆1610億円である。
金融モラトリアム法の副作用は強烈だ。法律の期限が切れると滞っている借金は、即座に不良債権とみなされ、銀行は損失を処理する必要に迫られる。では、金融機関が、実際に損失処理を必要とする債権はどれくらいあるのか。
東京商工会議所が今年6月に東商会員に実施した「中小企業金融に関するアンケート調査」によると、金融機関の半数は円滑化法終了後、条件変更に応じた中小企業の格下げが必要だと考えている。円滑化法の適用で、現在、正常債権に区分されている債権の2割程度は不良債権として処理しなければならないと判断している。
金融庁は円滑化法を利用して条件を変更した中小企業は30万社あるとみている。このうちの2割近くの6万社の債権は円滑化法がなくなれば不良債権として処理され、倒産は免れない、ということだ。
金融機関にも影響は及ぶ。中小企業の資金繰りは悪化し、事業縮小、倒産が相次ぐ。金融機関の6割強に何らかの影響が出ると予想されている。特に、信用金庫、信用組合は「大きな影響がある」と回答している。