信金・信組が条件を変更した債権は21兆4913億円。地銀・第二地銀の37兆1414億円に次ぐ規模だ。3メガバンクなど主要行の19兆8380億円より金額が大きいのである。
地域経済を支える地銀、第二地銀、信金、信組は金融モラトリアム法によって巨額の潜在的な不良債権を抱えている。だから、「倒産先送りのツケ」はこれから、本格的に回ってくる。
深刻な事態を憂慮する金融庁は、地域金融機関の救済に禁じ手を使うことになる。
1つは銀行の事業会社への出資を5%以下に制限している銀行法の規制緩和だ。戦前、金融機関を中心にした財閥の支配力が高まった、悪しき歴史を踏まえ、銀行の事業会社への出資比率は原則5%以下に制限してきた。出資比率を保険会社並みの10%に引き上げることを検討している。
なぜか? 円滑化法の期限切れに備え、条件を変更した中小企業への貸し出しを出資に切り替え、銀行の表面上の不良債権額を減らそうという苦肉の策なのだ。しかし、この策は資本金が大きな中堅以上の企業でなければ役に立たず、ポスト円滑化法の毒を消す特効薬にはならない。
2つ目の妙薬はファンドに債権を移し替えることだ。金融庁は中小企業への資金支援の名目で、事業再生基金(ファンド)の設置を促している。これを受けて全国の地域金融機関で中小企業向けの再生ファンドを設置する動きが相次いだ。
円滑化法の期限切れで条件を変更した債権が一気に不良債権化し、損失が表面化するのを防ぐために再生ファンドに債権を売り飛ばしてしまおうというびぼう策だ。メガバンクなどの大手行は十分な引当金を積んでいるが、経営規模の小さい地域金融機関にはそんな体力はない。まともに損失を処理したら自己資本不足に陥る金融機関が出てもたなくなる。そこで不良債権をファンドに移し替える。不良債権隠しでおなじみの飛ばしの手法である。
98年12月に経営破綻した日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)は不良債権を飛ばすために70社余という膨大な数のペーパーカンパニーを設立した。あまりに数が多いのでネーミングに困り、和田倉企画、桜田企画など江戸城の門を社名につけることになった。こうした飛ばしの受け皿会社は「江戸城会社」と揶揄された。
全国各地の地元金融機関が出資して設立している再生ファンドは、円滑化法で大量に生まれる不良債権の受け皿となる。政府公認の飛ばし会社ができることになるわけだ。
(文=編集部)