JAL、「手ぶら旅行」実現…荷造り・宿泊先へ配送・倉庫へ返送のサービス

●この記事のポイント
・JALは、旅行者や出張者の荷物の保管・荷造り・配送を行うサービス「JAL Carry Direct」の提供を開始
・エアトランク社が空調・セキュリティを徹底管理する倉庫にアイテムを保管
・旅行の常識を大きく変える『手ぶらでの旅行』を実現するサービス
日本航空(JAL)は、旅行者や出張者の荷物の保管・荷造り・配送を行うサービス「JAL Carry Direct」の提供を始めた。利用者はあらかじめアイテムを倉庫に送って預けておき、スマホ上で宿泊先や日程を指定し、荷造り・宿泊先への配送・クリーニングなどのサービスを受けられる。スーツケースを持ち運んだり、空港の手荷物カウンターなどで預けたりする手間から解放される。このようなサービスを始めた狙いは何なのか。また、どのような技術・仕組みによって実現しているのか。JALに取材した。
●目次
同サービスは、宅配型トランクルームサービスを手掛けるエアトランクとJALが共同で運営するもの。エアトランクが空調・セキュリティを徹底管理する倉庫にアイテムを保管する。ユーザは必要なアイテムと宿泊先・日程を指定するだけで、スーツケースに梱包されたアイテムが滞在先へ届く。帰宅する際はアイテムを指定の方法でスーツケースに収納して宿泊先に預けるだけで、倉庫へ返送される。
これまでの旅行の常識を大きく変える『手ぶらでの旅行』を実現するサービス
このようなサービスを始めた背景・狙いについて、JALは次のように説明する。
「旅行や出張の際、多くの方が大きなスーツケースの移動、荷造り、宿泊先への荷物配送、帰宅後の荷ほどき、クリーニングなどにストレスや負担を感じていらっしゃいます。これらの課題を解消し、より快適な移動を実現するため、本サービスをリリースいたしました。出張や旅行の需要はコロナ禍以前の水準に回復しつつあり、特に東京を目的地とする出張が多いため、首都圏に倉庫を構える株式会社エアトランク様にとっては配送コストが抑制され、低価格かつ高品質なサービスを提供することが可能でした。また、エアトランク社の既存サービス『宅配型トランクルーム』においても、預託物の中からスーツケースを必要時のみ利用するケースが非常に多く、本サービスのニーズを前もって体感しております。
さらに、インバウンドの増加に伴い、各地でオーバーツーリズムが発生し、観光地ではコインロッカーの供給が追いつかず、大きな荷物を持って観光せざるを得ない旅行者が増加しています。お子様連れのご旅行の場合、通常の荷物以外にお子様用のベビーカー、オムツ、哺乳瓶、粉ミルク、離乳食など、かなりの荷物が増えてしまうため、旅行自体を諦めてしまうケースもございます。
このようなストレスを解消するため、宿泊先にチェックインしてから使用するお品物は本サービスをご利用ください。それによりユーザは必要最小限の荷物のみで移動や観光が可能となります。また、これまで煩わされていた多くの諸問題から解放され、より充実した旅行を実現できます。本サービスは、これまでの旅行の常識を大きく変える『手ぶらでの旅行』を実現するサービスです。顕在化していないニーズではございますが、潜在的なニーズが高いサービスと捉えております。
JALは『JALマイルライフ構想』を引き続き推進し、日常生活やライフステージにおける多様なサービスを提供することで、マイルを『ためる』『つかう』シーンを拡大し、顧客層の拡大と利益成長を目指しています。本サービスの導入により、JMB会員の旅行や出張の際のストレスや負担を軽減し、より多くの顧客に快適な旅を提供することを目的としています。エアトランク社においては、同社が保有する集荷配送等のノウハウおよび設備を最大限に活用した本サービスを提供することで、さらなる成長を目指しております。また、従来『収納の延長+宅配便』と捉えられてきた『宅配型トランクルーム』のイメージを刷新し、ユーザ所有のお品物の有効活用方法や新たな生活様式、旅行様式といった価値観の創造を提案してまいります」
荷造りから宿泊先への荷物配送、荷ほどき、クリーニングまでのトータルサービス
具体的には、どのような内容のサービスなのか。
「スーツケースごと保管・パッキング・配送・クリーニングまで可能な荷物のトータルサービスです。エアトランク社が保有する空調・セキュリティが徹底管理された倉庫で、お客様がご旅行や出張等でご使用になる大切なお品物をお預かりいたします。旅行前後の煩わしいパッキング、帰宅後の荷解き、後片付けや洗濯といった旅行におけるストレスを解消し、手ぶら旅行という新しい旅行様式を実現するサービスです。
サービスのイメージは以下のとおりです。
・旅行や出張などでご使用になりたいアイテムをまとめて倉庫にお預けいただく
・マイページから今回の旅行でご使用になりたいアイテムと宿泊先への配送を依頼する
・(倉庫側)お客様の要望に沿って荷物をパッキングし、宿泊先へ送付する
・宿泊先でスーツケースを受け取る
・旅の後は宿泊先でスーツケースをお預けいただき、エアトランク倉庫へ返送する
・(倉庫側)荷物を受け取り、中身を確認する。ご依頼があればクリーニング・洗濯を行い、次回のご利用まで大切に保管する
スマートフォンひとつで荷造りから宿泊先への荷物配送、荷ほどき、クリーニングまでのトータルサービスをご利用いただけます」(JAL)
どのような技術・仕組みによって、実現されているのか。
「エアトランク社は、宅配型トランクルーム事業で培った知見、Webアプリ技術、倉庫設備、荷物管理システム、ロジスティクス網を活用し、預託品の安全な管理、配送、使いやすいインターフェースを提供するサービスを展開しております。その結果、一般的な宅配便よりもリーズナブルな送料設定でありながら、高品質なサービスを実現しております」(JAL)
最後に、今後の利用者数の目標・見込み、事業展開の計画などを聞いた。
「今後1年間で5000人規模の会員獲得見込みでございます。保管・配送可能なアイテムは追加を予定しており、スーツケース以外のアイテム(例えばゴルフバッグ、災害備品、各種レジャー用品等)も保管・配送できるよう検討中です。実際にご利用いただく方々のご意見も踏まえながらサービスをブラッシュアップさせ、より多くの出張者旅行者の身軽で快適な移動を実現してまいります。
また出張が多いビジネスマンに関しては毎月のように日本全国を飛び回っており、そのための準備コストもかなりのものとなります。そのため会社の福利厚生として本サービスの導入をしていただけるよう働きかけを行ってまいります」(JAL)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)