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エヌビディア「ゲーミングノートPC向けRTX 50」AI性能の飛躍的な向上

2025.04.11 2025.04.11 22:27 IT
エヌビディア「ゲーミングノートPC向けRTX 50」AI性能の飛躍的な向上の画像1
4月5日に開催された「NVIDIA Gamer Day」

 2025年4月5日に秋葉原で開催された「GeForce RTX 50シリーズ ノートPC メディア説明会&デモショーケース」では、主にゲーミングノートPC向けRTX 50シリーズローンチイベントとなったが、そこにはAI時代のモバイルコンピューティングの未来を示す要素があった。

 NVIDIA(エヌビディア)の最新GPUアーキテクチャ「Blackwell」は、圧倒的な性能の高さ故に、発表以来、常に話題を呼んできた。同GPUを採用するGPUカードの品不足が続く話題は、ゲームに興味がない読者層でも耳にしたことがあるだろう。

 そのBlackwell=RTX50シリーズを搭載したノートPC群のAI処理能力の飛躍的な向上と、それがもたらすビジネスPCやパーソナルコンピューティングにおける未来への可能性について考えさせられた。

AI性能の飛躍:DLSS 4とBlackwellアーキテクチャの核心部分

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 ゲーミングPC向けGPUとして捉えた場合、GeForce RTX 50シリーズの中核をなすのは、DLSS 4(Deep Learning Super Sampling 4)の導入だ。

 DLSSは、NVIDIAが開発したAIベースの画像アップスケーリング技術で、低解像度でレンダリングされた画像を、AIを用いて高解像度に変換することでGPUの負荷を軽減しながらも高品質な映像を提供するというものだ。

 レイトレーシングのような高負荷なレンダリング技術と組み合わせることで、グラフィクスのリアリティを向上させつつ、高精細な映像を得ることが可能になる。AIによるアップスケーリングでは実際にネイティブ解像度でレンダリングした品質に近い、あるいはそれ以上のリアリティを得られる。

 この機能をベースに中間フレームの生成まで行えるようになっていたが、DLSS 3が1フレームにつき1枚の追加フレームを生成していたのに対し、DLSS 4では最大3枚の追加フレームを生成可能となった。

 例えば4K解像度で60フレームのレイトレーシングによるレンダリングが行える場合、出力は毎秒240フレームに達するフルレイトレーシング映像を用いたゲームプレイが実現できる。

 この性能向上を支えているのが、多次元配列演算を担う第5世代Tensorコアだ。従来比で最大2.5倍のAI処理性能だ。

”ゲーム用GPUでのAI性能”は、このように使われるが、ではゲーミング分野のみが応用範囲かと言えば、それは正しくない。

ビジネス分野への応用とオンデバイスAIの可能性

 RTX 50シリーズのAI性能は、ゲームやクリエイティブ分野にとどまらず、ビジネス分野にも大きな影響を与える可能性を秘めている。

 Tensorコアの本質は、推論アクセラレータである。例えばDLSS 4では、大規模言語モデルでも使われているトランスフォーマーというアルゴリズムが採用された。より複雑なAI技術をオンデバイスで動かせるようになってということだ。

 例えば、高度なデータ分析や自然言語処理、リアルタイムの映像解析など、これまでクラウドに依存していた処理を、ノートPC上でリアルタイムに行えるようになる。自然言語処理は言うに及ばず、映像解析やデータ分析はオンデマンドで行えることで、セキュリティとプライバシーと応答性の両方に良い影響を及ぼす。

 AIの応用が進む一方、多くの企業が企業情報をクラウドAIにアップロードすることを忌避している。セキュリティやプライバシーの観点からも、オンデバイスAIの重要性が増している中、オンデバイスAI能力は多ければ多いほど価値がある。

 例えばComfyUIは、画像生成AI「Stable Diffusion」を操作するためのオープンソースのツールだ。各処理ステップを「ノード」として視覚的に配置し、それらを接続することで、柔軟かつ高度な画像生成ワークフローを独自に構築・運用できるが、ノートPC上でも軽々動作する様子は圧巻だ。

 マイクロソフトの小型言語モデル「Phi-4」のデモでも、ノートPC上で全く問題ないパフォーマンスが発揮されていた。企業が業務に特化した独自にトレーニングした高性能AIを運用する選択肢になり得る印象だ。クラウドベースのAIサービスに代わる実用的なソリューションとなる可能性をRTX 50は示している。

NVIDIAエコシステムによるAI活用の促進

 NVIDIAは、RTX GPUに搭載されたAIテクノロジーを活用するためのエコシステムも構築している。

 NVIDIA NIMマイクロサービスやAIブループリントを利用することで、ユーザーは自身のニーズに合わせてAI機能を簡単に利用できるようになる。これらのツールを活用することで、言語モデル、音声モデル、検索モデル、ビジュアルデザインモデル、ビジョンモデルなど、多岐にわたるAI機能を手軽に利用でき、様々なタスクの自動化や新しい機能の開発を加速させる。

 これまでは、ノートPCに搭載できるミドルクラスのGPUでは、あまり大きなAIモデルを動かせなかった。VRAM上にオンメモリで実装できなければ、いくらTensorコアが高性能であったとしても(AIパフォーマンスの高さは)宝の持ち腐れだ。

 しかし、現時点では提供が始まっていないが、RTX 5060TiのデリバリーがノートPC向けにも始まれば、ビジネス向けノートPCにおけるAI活用にも活路が出てくるだろう。このバリエーションには16GバイトまでのVRAMを搭載できるため、より大きなAIモデルをGPUに実行させることが可能になる。

モバイルコンピューティングの新たな可能性

 アップルは自社開発のMシリーズプロセッサで、メインメモリをCPU、NPU、GPUで等しくアクセス可能にすることでAIパフォーマンスを引き上げている。同様のアプローチはクァルコムやAMDなどのSoCが採用してくるだろうが、NVIDIAソリューションの魅力は、圧倒的に高い性能を求めるゲーミングPCユーザーや、AIの先端研究におけるニーズを満たすパフォーマンスレベルの高さに他ならない。

 GeForce RTX 50シリーズ ノートPCの登場は、モバイルコンピューティングにおいて、そのパフォーマンスをどう活かしていくのか。AI PCとしての未来を占うものになるかもしれない。

 高度なAIをパーソナルな環境で利用できるようになることで、私たちの働き方、学び方、そして創造性は大きく進化するかもしれない。AIと高性能グラフィックスの融合は、これまで想像もしなかったような新しいアプリケーションやサービスの創出を促すだろう。

 どれほど業務効率を高めるか?といった色気のない話が、最高のゲームパフォーマンスを求めるユーザーの熱気に支えられているとしたら、それもまた痛快な話ではないか。

(取材・文=本田雅一/ITジャーナリスト)

※本稿はPR記事です

本田雅一/ITジャーナリスト

本田雅一/ITジャーナリスト

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

Twitter:@rokuzouhonda