世の中には「就職人気ランキング」に対して、「ブラック企業ランキング」、もしくは「不人気企業ランキング」といったものが存在する。しかし、ランクインされている企業を見てみると、私が定義するところの「ブラック企業」に該当しない企業が含まれていることがある。内情は優良企業でさえあるのだが、その企業が属する業界や、一部の個別企業によるダーティなイメージが投影しているものと考えられる。そのような企業を採り上げ、「何がブラック企業イメージの原因か」「実際はどうなのか」について、多角的に分析していく。
【2】大塚商会
不人気企業でも、活躍して充実した社会人生活を送る人はいるし、人気企業に入りながらも「こんなはずじゃなかった…」と不満を募らせる人もいる。親の期待や友人からの評価も大事かもしれないが、そこで働くのはあくまで自分自身なのだ。ほかならぬ自分自身の判断基準で、主体的な判断をして然るべきである。
今回採り上げる企業について、まずは客観的な情報からご覧頂こう。データはいずれも2011年12月末日時点のものだ。
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東証一部上場企業
社員数:6,684名
売上高:4,782億円 経常利益:233億円 自己資本比率:50%超
社員平均年収:765万円
離職率:4.0%(同社が属する情報通信業の平均離職率は10.1%)
年間休日日数:125日(完全週休2日制)
リフレッシュ休暇:勤続5年・10年・15年などの区切りにリフレッシュ休暇として連続5~10日間の休暇と、5~10万円の慰労金を支給
保養所:熱海・南房総・琵琶湖・南鳥羽に「自社経営のホテル」があり、保養所として格安で社員に提供。温水プールやテニスコートも完備。
その他福利厚生:自社健康保険組合・各種社会保険・提携ローン融資制度・社員持株会制度・退職金制度・社内再雇用制度・ホームヘルプ制度・社内販売・各種特別優待など
採用実績校:
(男子)
東京大学、東京工業大学、一橋大学、電気通信大学、筑波大学、首都大学東京、東京学芸大学、横浜国立大学、横浜市立大学、千葉大学、埼玉大学、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、立命館大学、明治大学、立教大学、法政大学、中央大学、青山学院大学、学習院大学、成城大学、成蹊大学、東京理科大学
(女子)
お茶の水女子大学、白百合女子大学、フェリス女学院大学、日本女子大学、東京女子大学、関西学院大学、関西大学、同志社大学、筑波大学、東京芸術大学、東京外国語大学、北海道大学、東北大学
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どうだろう。どこからどう見ても、一流大企業の香りが漂ってくるではないか。
タイトルでもうネタバレしているが、この会社こそ「大塚商会」だ。ネット上では以前からブラック企業との悪評が高い会社であったが、それら悪評が2ちゃんねるなどに書き込まれた日付をご覧頂きたい。2005年前後のものが多くないだろうか。あれから年月が経ち、同社は何かが変わったようだ。現在はこのとおりの姿なのである。
昔からのイメージから、「大塚商会=コピー機の飛び込み営業」という印象が強いようだが、現在同社の売上の半分はBPOなどのサービスサポート事業であり、今やコピー機の販売は同社システムインテグレート事業の一部でしかなくなっている。同社の社員一人当たり年間売上高は7,000万円に迫り、効率の良い経営ができているといえる。社内ルールで「残業は21時まで」と決められているし、高いと思われている離職率も昨年度で4%であり、IT業界平均の10%(これは厚労省が把握している数字であり、実態はもっと多いだろう)から考えると、「居心地のいい環境」とさえいえるかもしれないのだ。
とはいえ、同社が「営業会社」であることは間違いのない事実である。現場では日々、営業ノルマとプレッシャーとの戦いであることもイメージ通りであるし、数字を達成できていない人やグループ、支店ではピリピリ・ギスギスした感じになっていることも確かだ。
その一方で、営業会社ならではの旨みもある。給与は基本給、残業代、インセンティブで構成されており。役付きの営業で安定してインセンティブを取得できれば、年収1,000万円を超えることも少なくない。「営業成績さえ残せば、何をしてもOK」という雰囲気であり、業績に応じた給与ともあいまって、「デキる人」にとっては天国なのである。私自身もこれまで同社社員と多くお会いしてきたが、「営業成果が給与に反映されるので、単なる年功序列の会社と比べるとフェアーだ」とおっしゃっていた方が多かった。メリット、デメリットを分かって入る分には、ひとつの選択肢として充分お勧めできる会社である。
同社を一言で表すなら、まさに「よくも悪くも営業会社」というところであろう。
※本稿は、新田龍氏のメルマガ「ブログには書けない、大企業のブラックな実態」から抜粋したコンテンツです。