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綱渡り続くシャープ、異業種3社による出資決定の思惑と行方〜経営再建とは距離置く

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綱渡り続くシャープ、異業種3社による出資決定の思惑と行方〜経営再建とは距離置くの画像1シャープ本社(「wikipedia 」より/Otsu4)
 経営再建中のシャープは、9月中旬をメドに1000億円の資金を調達する。これに合わせて住宅設備大手のLIXILグループ、電動工具メーカーのマキタ、自動車部品の最大手のデンソーの3社に、第三者割当増資の引き受けを要請した。

 なぜ、異業種の3社に出資を求めたのか?

 シャープは新中期3カ年計画の初年度に当たる2014年3月期の最終黒字達成が、銀行支援の絶対条件になっている。最初のハードルである13年4~6月期(第1四半期)決算は円安に助けられ、売上高6079億円(前年同期比32.6%増)、営業利益30億円(前年は941億円の営業赤字)、当期純損益は179億円の赤字(同1384億円の赤字)だった。期初には100億円前後の営業赤字を見込んでいたが、なんとか営業黒字にこぎ着けた。

 資金繰りの危機も乗り切ったようだ。9月末の2000億円の社債償還については、6月に主力銀行から1500億円の追加融資を取り付けた。通期の黒字化に向けて円安を追い風に、ひとまず好発進した。

 とはいえ、綱渡りの経営は依然として続く。13年6月末の自己資本比率は6.0%と低水準だ。14年3月期末には年金の積み立て不足分、1200億円を負債に計上するため、資本の目減りが起こる。それをカバーするため、今期中の資本増強が不可欠になる。

 そこで9月中旬をメドに総額1000億円規模の資本の増強を行うことにしたが、その内訳は700億円超の公募増資と、LIXILグループ、マキタからそれぞれ100億円、デンソーから25億円、合わせて225億円の第三者割当増資を行うというものだ。6%まで低下した自己資本比率を10%台に回復させるシナリオだ。出資を要請した異業種の3社とは、すでに商品開発などで提携している。

●「自力で再建してもらうのが一番」(LIXIL)

 一方、出資の打診を受けた3社の思惑はどこにあるのか?

 LIXILグループとシャープは、11年8月に共同出資でエコ・ライフ・ソリューションを設立した。共同開発の第1号が、屋根と一体化した太陽光発電システム「ソーラールーフ」。シャープの太陽電池とLIXILの防水型の屋根を組み合わせて発電効率を高めた。太陽光発電システムは屋根に取り付けた架台にパネルを載せるため、屋根全体にパネルを敷き詰めるのは難しい。その点、「ソーラールーフ」はパネルの下部に屋根材をはめ込み一体化させ、安定性を確保した。12年4月から発売を開始し、1年間に2600棟分の販売を目標にしている。また、LIXILは傘下にアイフルホームなどの住宅会社を持ち、各地域の工務店とフランチャイズ契約を結び、1次取得者向けの低価格住宅を提供している。

 LIXILがシャープに出資するのは、LIXIL住宅研究所のエコ住宅と太陽光発電システムの共同出資会社を一体化させる狙いがあるものとみられている。LIXILグループの藤森義明社長は8月5日、シャープへの出資について「提携中の事業をどう伸ばすかの話をしている」と語った。出資する場合は提携事業の強化を目的とし、経営支援のための出資はしないとの考えを明確にした。13年4~6月期連結決算を発表した後、記者団の質問に答え、「(シャープには)パナソニックと並ぶ技術力がある」と評価したが、経営再建に関しては「自力で再建してもらうのが一番だ」と述べた。

●懸念材料は株価

 電動工具で世界トップクラスのシェアを有するマキタは今年5月、シャープと業務提携をすることで合意した。マキタが電動工具で培ったハード技術とシャープの電子制御技術を組み合わせて、ロボット事業への参入を目指す。具体的にはロボット芝刈り機を1~2年内に共同開発する。

 シャープは事業領域を家電や太陽電池から家の外に広げる。昨年、お掃除ロボット「ココロボ」を発売している。ロボット芝刈り機は、お掃除ロボットのお庭版。ロボット芝刈り機の需要は欧米で伸びているという。

 トヨタ自動車グループのデンソーはシャープと電子部品や車載ディスプレー用パネルなどの取引をしており、商品も共同開発してきた。09年12月、シャープと共同開発した車載用空気清浄機プラズマクラスターイオン発生機を発売した。シャープの空中除菌技術であるプラズマクラスター技術とデンソーの車載技術を使い、車内に浮遊するウイルスを抑え、付着したニオイを分解・除去する空気洗浄機を運転席の横に設置した。

 デンソーは車向けカメラやディスプレー技術のほかに、表示計など安全に関わる技術に関心がある。シャープのレーザー技術を応用した衝突回避支援システムでの事業協力を検討しているという。だが、トヨタグループは慎重だ。リスクを抑えるために25億円の出資にとどめたとみられている。

 シャープは16年3月期までの3カ年中期経営計画で、異業種との協業による「5つの新規事業領域の開拓」を掲げている。第1弾がLIXIL、マキタ、デンソーの3社といっていいだろう。

 しかし、多額の出資を受けるのは、そう簡単ではない。最大の出資リスクは株価の下落である。台湾の鴻海精密工業によるシャープへの出資が白紙に戻ったのは、シャープの株価が暴落したためだ。

 LIXILとマキタは100億円出資する。どのようなリスクヘッジを考えているのだろうか? LIXILは藤森社長が「経営再建を支援するための出資ではない」とクギを刺した。出資した途端にシャープの株価が下落すれば、再建にも暗雲が立ち込めることになりかねない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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