まず12年3月に関西国際空港を本拠とするANA系のピーチ・アビエーション(ピーチ)が就航。同7月にはJAL系のジェットスター・ジャパン(ジェットスター)が、翌8月にはANAとエアアジア(マレーシア)合弁のエアアジア・ジャパン(エアアジア)が就航した。
そんな中でピーチは今年9月17日に、「累計搭乗者数が300万人を突破した」と発表。同日午前、関西国際空港第2ターミナルで300万人目の搭乗者に記念品を贈るなどの記念式典を行った。
同社は12年3月の就航から約9カ月で搭乗者数100万人を達成、その約5カ月後に200万人、その約4カ月後に300万人達成と搭乗者数大台達成のピッチを縮めてきた。同社関係者は「年末までの残り3カ月で400万人達成は確実」と自信を強めている。
その結果、「日本LCC元年」からたった1年で、早くも「ピーチ独走、2社迷走」の構図が浮上している。
これは単に、ピーチ300万人突破(13年9月)、ジェットスター200万人突破(13年8月)、エアアジア80万人突破(13年8月)という搭乗者数の違いのみの評価ではない。
「航空会社の基本サービスの品質指標」といわれる就航率(運航予定便数に対する欠航便の割合)に開きがあり過ぎるのだ。
12年度におけるピーチの就航率は99.04%で、LCC3社を含む国内航空10社でトップ。13年度も第1四半期(4-6月)の就航率は99.76%と国内トップを記録している。
ちなみに、国土交通省発表の直近データ(航空輸送サービスの比較等に関する情報)によると、13年1-3月期のLCC3社の就航率はピーチ99.46%、ジェットスター96.34%、エアアジア98.15%と、ピーチの高さが際立っている。これにはフルサービス系航空会社のJAL 98.41%、ANA 96.45%も敵わない実績だ。
また、今年4-7月の平均搭乗率もピーチが84%だったのに対し、ジェットスター、エアアジアは60-70%とみられている。平均70%台といわれるLCCの採算ラインもピーチはクリアしており、今年度の黒字転換が確実視されている。
●経営迷走したエアアジアとジェットスター
何がLCC3社の明暗を分けたのか?
それは今年4月1日に開催されたエアアジアの取締役会の席上だった。マレーシア本社から出席したエアアジアCEO(最高経営責任者)のトニー・フェルナンデス氏の怒声が飛んだ。フェルナンデス氏はエアアジア・ジャパンのバランスシートを振りかざし、「コストがかかり過ぎだ。もっと削減せよ」と居並ぶANA出身役員たちに詰め寄ったのだった。それに対して、エアアジア・ジャパンCFO(最高財務責任者)の内山正明氏が「日本には日本のやり方がある」と反論、フェルナンデス氏が主張したコスト削減には賛成しなかった。
それから約3カ月後の6月25日、ANAホールディングスとエアアジア(マレーシア)は共同で合弁事業を解消すると発表。ANAは合弁会社のエアアジア・ジャパンを完全子会社化し、今年11月1日付で社名を「バニラ・エア」に変更、LCC事業の再出発を図ることとなった。