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日産ゴーン社長の報酬、なぜトヨタ社長の5倍の10億円?業績一人負け、株価低迷…

文=編集部
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日産ゴーン社長の報酬、なぜトヨタ社長の5倍の10億円?業績一人負け、株価低迷…の画像1日産自動車の「NISSAN GT-R」(「Wikipedia」より/Hatsukari715)
 日産自動車は定時株主総会の招集通知で、2014年3月期に取締役8人(社外取締役は除く)に支払った役員報酬の総額が16億5400万円に上ったことを明らかにした。単純平均で1人当たり前年度比マイナス5.3%の2億675万円。また、3年連続で10億円寸前にとどまっていたカルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)の報酬を10億円の大台に乗せた可能性が強まってきた。

 ゴーン氏の役員報酬は6月24日に開催される株主総会で開示されるが、過去の同氏の役員報酬は次の通りだ。

 10年3月度:8億9100万円
 11年3月期:9億8200万円
 12年3月期:9億8700万円
 13年3月期:9億8800万円

 13年3月期、日産の取締役9人に支払われた役員報酬は、前年より200万円少ない17億4600万円だったが、ゴーン氏は前年より100万円多い9億8800万円を得た。役員報酬の半分以上を1人で占めた格好となった。

 14年3月期の報酬には13年3月期の業績が反映される。日産は米国と中国市場の不振が響き、本業の儲けを示す連結営業利益は4%減と自動車大手7社で唯一、減益だった。14年3月期は円安効果で自動車メーカーの業績が軒並み好転したが、日産だけが伸び悩み、2期連続で通期業績見通しの下方修正に追い込まれた。

●仏ルノーは役員報酬3割カット

 こうした業績にもかかわらずゴーン氏の報酬が増額された理由のひとつとして、同氏がCEOを兼務する仏ルノーから受け取る報酬が、大幅に削減されたことが挙げられる。

 欧州債務危機を受け販売台数が急減し経営不振に陥った仏ルノーは13年1月、フランス国内の従業員の約17%にあたる8000人の人員削減策を発表した。ゴーン氏のリストラ案に労働組合は猛反発。「従業員のクビを切るなら、自分の高い報酬を減らせ」とのスローガンを掲げた大規模なデモが行われた。雇用を重視するフランス政府からもルノーへの批判が高まった。フランス政府はルノー株の15%を保有する筆頭株主でもあり、フランス政府を刺激するのは得策ではないと考えたルノーは、労働組合にリストラを受け入れさせる条件として「16年までゴーン氏の役員報酬の3割を返上する」と提示して収拾した。ゴーン氏の役員報酬は3億7000万円程度であり、その3割は1億1000万円。13年から16年までの4年間に計4億4000万円の役員報酬がカットされるため、減額分を日産の報酬で補ったとみられている。

 もともとルノーはフランス政府の監視の目が厳しいため、ゴーン氏の役員報酬は日産の4割以下に抑えていた。一方、日産社内ではゴーン氏の報酬に異議を唱える声は上がっていない。

 そのゴーン氏は意気軒昂だ。6月3日、パリで「18年に米国、日本、フランスなど一部の国で世界初の自動運転車のテスト販売を開始する」と発表し、正式には20年までに販売を開始するとしている。かつて日産は電気自動車(EV)の盟主になると宣言し、EVに注力していたが普及は遅れており、自動運転車にも重点的に投資していく。当初は部分的な自動運転機能を持った自動車になる予定で、運転手は手動運転に切り替えたり、自動化のレベルを選ぶことができるようにする。

 だが、自動車アナリストには、自動運転車が普及することに懐疑的な向きが少なくない。技術的な問題というより、自動運転車が事故を起こしたり事故に巻き込まれたりした場合に誰が責任を負うのか、その基準を各国で決めなければならず、法律上の規制が自動運転車の最大の障害となると指摘している。そのため、「自動運転車は電気自動車の二の舞いになる恐れもある」(アナリスト)との声も聞かれる。

●カギ握る中国市場

 11年6月に発表された日産の中期経営計画「日産パワー88」では、17年3月期末までにグローバル市場の占有率(シェア)8%、売上高営業利益率8%を達成するというのが骨子となっている。計画の折り返し点である14年3月期のグローバル市場のシェアは6.2%、営業利益率は4.8%だった。

 中期経営計画の達成に向けて日産は得意とする中国市場で攻勢をかける。15年3月期の中国での販売台数は前期比18%増の143万台を計画。中国でのシェアを前期の6.1%から6.5%に上げ、営業利益は前期比35%増の1450億円程度を見込む。15年3月期、連結営業利益に占める中国事業の比率は、前期の18%から21%強に上昇する見通しを立てているが、中期計画の達成の成否は、ひとえに中国事業にかかっている。同期の連結営業利益は7%増の5350億円を想定しているが、中国事業の伸びが止まると業績見通しの下方修正に追い込まれる。ちなみに、13年の2回の下方修正では、当時の志賀俊之COO(最高執行責任者)が更迭された。

●低迷する株価

 また、日産の株価をみてみると、6月6日の終値は942円。トヨタ自動車は5869円、ホンダは3580円、スズキは3100円、富士重工業は2791円である。ダイハツ工業は1793円、二輪車のヤマハ発動機1683円、再建途上の三菱自動車工業でさえ1099円で、日産自の株価を上回っている。日産自より株価が安いのはいすゞ自動車(636円)、マツダ(473円)の2社だけである。

 株価を見る限り、ゴーン氏の報酬は割高な感をぬぐえない。トヨタの豊田章男社長の13年3月期の役員報酬は1億8400万円、ホンダの伊東孝紳社長は1億4500万円と、ゴーン氏の5分の1程度である。日産は「グローバル企業の経営者の報酬を参考にしている」と説明しているが、6月の株主総会では批判を集めるとの予想が広がっている。
(文=編集部)

【続報】

 ゴーン氏は、6月24日の株主総会で、14年3月期の自身の報酬が9億9500万円だったことを明らかにした。13年3月期の9億8800万円から0.7%増の700万円増えた。社外取締役を除く取締役8人の報酬増額は17億500万円。前の期は9人で18億4200万円だった。報酬総額は1億3700万円減ったが、ゴーン氏は増え、役員報酬の58%を1人占めしたことになる。日産は役員報酬に関する資料で業績や実績に基づいて報酬を決めていると説明しているが、ゴーン氏の役員報酬は業績に関係なく毎年増え続けている。

 10年3月期 8億9100万円
 11年3月期 9億8200万円
 12年3月期 9億8700万円
 13年3月期 9億8800万円
 14年3月期 9億9500万円

 ゴーン氏は「世界でも有数の報酬専門コンサルティング会社、タワーズワトソンの分析では、グローバルな自動車会社のCEOの平均報酬額は前年比5%増の1720万ドル(約17億2000万円)だった」と述べ、自分の役員報酬は決して高くないと強調した。ゴーン氏の役員報酬は10億円を超えるとの見方が強かったが、小幅なアップにとどめ、10億円弱に抑えた。では、「決して高くない」のならば、なぜ10億円を超えなかったのか。

 日本の自動車メーカーの14年3月期の決算は円安の効果で、軒並み業績が好転し、トヨタなど史上最高益となった企業が続出した。連結営業利益で減益(4%の減益)になったのは日産だけであり、社内外からの批判を恐れ、10億円を超えることはできなかったとみられている。また、役員報酬全体の半分以上をゴーン氏が占めることに対し、他の日産役員から異議が出ないことについても疑問が残る。

BusinessJournal編集部

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